【繁殖レポート】オトシン“ネグロ” 繁殖日記②

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前回からの続き、オトシン”ネグロ”繁殖日記・後編。

▼前編:ペアリング~孵化~稚魚育成まで

久々に我が家の水槽日記。水草水槽の掃除屋・オトシン”ネグロ”の繁殖に成功しました!お魚子育て日記です。

後編の今回は、幼魚育成の続き~本水槽導入~人工飼料に餌付くまで。

◎まとめ:稚魚~幼魚育成時期のポイント
 ・「セレック Vフィルター」が最高に使える!
 ・ブラインシュリンプと併用して人工飼料に慣らす
 ・繁殖は計画的に!

■スクスク成長し続ける幼魚たち。

無事にブラインシュリンプの幼生に餌付き、サテライト(隔離ケース)の中で順調に成長を続けるオトシン幼魚たち。

孵化後3週間~1か月後くらいには、すっかり成魚と同じ姿になりました。だいたい1~1.5cmくらい。ここまで育てば、もう隔離ケースから本水槽に移しても大丈夫そうです。

■おっかなびっくり、過保護すぎる本水槽デビュー。

成長したといっても、まだ1.5㎝くらいのミニチュアサイズ。
自分より大きな魚がいればいじめられたり、餌にありつけなかったり、最悪の場合は捕食されてしまいます。もうしばらくは、単独飼育がよさそうです。

もともと別の魚を飼育していた30㎝キューブ水槽を、幼魚育成用にあてがうことにしました。

ここでひと工夫。
幼魚育成用の水槽は、しばらく掃除をせずにほったらかして、ガラス面にびっしり茶色いコケを生やしておきました。見た目的にはアレですが、幼魚たちの健やかなる健康のためです!

もっさりと水槽中に生えた茶ゴケ。
実はこの茶ゴケ(珪藻類)が、オトシンたちの主食です。(逆に、緑の固いコケや黒ヒゲゴケ、藍藻はほとんど食べないので要注意。。)

さらにこんな過保護対応も。

水面には、別水槽でモッサリと茂った水草(ウォーター・スプライト)を投入。
水草の葉に生えた茶ゴケや、水草の茂みで勝手に殖えた微生物も、幼魚たちのいいエサとなることでしょう。

ここまでアレやコレやと工夫を重ねたのには飼い主側の理由もあって、実はこのころ、水族館遠征やら帰省やらで週末を留守にしておりました。留守中に幼魚たちが餓死しないように、「ガラス面のコケ」「水草の茂みの微生物」をたっぷり用意して、魚たちに自給自足生活(?)を促していたのです。

■茶こし用フィルター「セレックVフィルター」が最高に使える!

本水槽デビューを果たした幼魚たちですが、その給餌には少し頭を悩ませました。

遊泳力のある魚ならばエサを追いかけて捕食してくれるのですが、吸いつき型の捕食をするオトシンの場合、ブラインシュリンプの幼生をただバラまく給餌方法では食べ残しが非常に多く、水質悪化の原因にもなってしまいそう。

水槽内にあれほどモッサリ生えていた茶ゴケも、2~3日もするとすっかり綺麗に食べ尽くされてしまいました。

そこでネットや専門誌の記事をあさり、見つけたのが「急須用の茶こしを使う」という方法。

半信半疑でしたが、そこで紹介されていた「セレック Vフィルター」という商品を通販でポチって導入してみました。

こんな感じ。
急須に入れるためにハット状のフチがついていて、水槽とフタの隙間に上手くフィットしました。サイズも数種類あるので、水槽サイズや用途に合わせて選べます(我が家では直径74mmのものを使用)。

そして、特筆すべきはメッシュの絶妙なサイズ!!

マクロレンズで写真に撮ってみてびっくりしました。
ブラインシュリンプの幼生が勝手には流出せず、魚がついばむと網目を抜けて口に入るという、本当に絶妙すぎるメッシュサイズ。このVフィルター開発した人と、これをアクア用品として転用させることに気付いた人を「神」と呼びたい!

(※なお、100均で買ってきた金属製の茶こしは網目が大きすぎて役に立ちませんでした)

幼魚たちも匂いで分かるのか、フィルターの外側に張りついて盛んにメッシュ越しにブラインシュリンプの幼生を吸っています。まるで幼魚用の哺乳瓶です。

この給餌方法ならば食べ残しが濾過装置に吸い込まれることもありません。塩水性のブラインシュリンプも半日くらいは淡水中で生きているので、朝起きてこのVフィルターの中にブラインシュリンプをスポイトで撒いておけば、あとは夜まで放ったらかしで大丈夫です。

自分は勤め人なので1日中幼魚の世話をしているわけにはいかず、この方法を発見して本当に助かりました。

※この「茶こし哺乳瓶」方法は、生きたブラインシュリンプではなく冷凍ブラインシュリンプにも対応できます。孵化したての時期だけは生きたブラインシュリンプを与え、その後は冷凍ブラインシュリンプに早めに切り替えても良さそうです。

■プレコフードにもしっかり餌付きました

茶こしの「哺乳瓶」でブラインシュリンプを与えつつ、平行して人工飼料にも餌付け。

成魚になっても活餌しか食べないように育つと、先々苦労しますからね、、(この手の草食魚の場合、人工飼料に餌付かないと「水槽のコケを食べ尽くした挙句に餓死する」というパターンに陥りやすいのです)

孵化後1か月くらいには、どの個体もプレコフードに集まってくるようになりました。ここまで辿りつけば、あとは成魚と同じように飼育できます。これで本当にひと安心です。

人工飼料にしっかり餌付いてくれれば、どこに出しても誰に譲っても『飼いやすい魚だよ』と自信を持っておすすめすることができます。手塩にかけた自慢の魚たちです。

■という訳で20匹ほどを『出荷』。少し思うこと。

実際に、今回繁殖したオトシン”ネグロ”たちの一部を、行きつけの熱帯魚店(親個体を買ってきたお店)に引き取ってもらいました。

ゴールデン個体も数匹混ぜて、20匹を『出荷』。

現金で買い取ってもらうわけではないですけどね。ただ、別の買い物のときにちょっとおまけしてもらったりもするので、ある意味、自分なりの常連店との上手い付き合い方という感じかもしれません。

少し話は反れますけれど、こういう風に自家繁殖させた魚を引き取ってもらうのって『飼い切れない数を無計画に殖やしてショップに押しつけてる』みたいに思われるかもしれません。

犬や猫では「アニマルホーダー」という社会問題があるので、それとどこが違うの?同じでしょ?と眉をひそめられてしまうかもなあ、と毎回思います。

実際のところは、ちょっと違うんですけどね。

▼ ショップ側が喜ぶかどうかは魚種による

まずこれ。
誰かが殖やした魚を引き取るのって、お店側にもリスクはあるのです。
「病気を持ち込まれる」「売れ残って不良在庫になってしまう」「素人が殖やした魚はクオリティが必ずしも安定しない」などなど。

お店側も、限られたスペースと水槽数で商売している訳なので。

例えばMIXのグッピーとか、いわゆる並エンゼルとか並ベタとか。
既に商業養殖が確立してて、正規の養殖業者から安く仕入れられる魚は、わざわざ一般飼育者から引き取るメリットは少なそうです。
(エンゼルフィッシュとか、殖やすの楽しいんですけどね。ただしコツさえ掴めば誰でも殖やせるのと、過密飼育だと体形が崩れやすい魚種なので、お店側からすると商品価値はあまりなさそう。繁殖に挑戦するときは計画的に。)

このへんの魚を殖やしてしまったときは「大型魚のエサにしてしまってもいいから」とひと言添えてからショップに持ち込むようにしてます。

▼ 少しでも野生個体の採集/消費が減ればいい

今回殖やしたオトシン”ネグロ”の場合、

・「水槽の掃除屋(コケ取り)」として大量に流通している
・近縁種の「並オトシンクルス」のワイルド個体が、より安く大量に消費されている

という背景もあり、「よし!殖やしてみよう!」という判断に至りました。

熱帯魚飼育って、ぶっちゃけ「環境に優しい!」「環境教育の一環」とは胸を張って言い切れない趣味だよな、、とも、常々思うのです。

日本は熱帯魚の輸入大国です。
南米や東南アジアやアフリカから、かなりの種類/個体数の魚たちが輸入されてきています。

そうやって輸入された魚たちの多くは、(我が家も含め)一般家庭の水槽で子孫を残すことなく死んでいきます。

一方でこれらの原産国の多くは経済発展の途上にあり、魚たちの棲む河川や湿地帯は、経済成長とともにどんどん減っているとも聞きます。「自宅の水槽でかわいらしく泳いでいる魚たちが、実は原産地では絶滅の危機に瀕している」という現実も、往々にしてあるようです。

そんなことを考え出すと、「せめて”コケ取り”として消費される魚たちくらい、ワイルド個体に頼らずにいたい」とも思ってしまうのです。

南米からワイルド個体が輸入される”並オトシン”が1匹300円~400円くらい、ブリード個体の”オトシンネグロ”がだいたいその倍くらい。市場理論と言ってしまえばそれまでなんだけど、なんだかそこはかとない矛盾を感じてしまうのですよね。。。
(水族館の水草水槽に入っているのも、この「ワイルドものの並オトシン」の方が圧倒的に多いんですけどね!!)

まあね、たかだか20匹か30匹の魚を殖やしたところで世界はなにも変わらないし、偉そうにドヤれることでもないし、なんなら自分だってワイルド採集物の魚もけっこう飼っています。(特に東南アジア産のドジョウ類)

それでも、外来生物問題なんかも含めて最近とみに風当たりが強まりつつある「生き物飼育」という趣味が少しでも末永く続くように、いち飼育者として少しでもできることはやりたいな、という気持ちはあり。

オトシン”ネグロ”、いい親個体に恵まれてコツさえ掴んでしまえば案外びっくりするくらい簡単に殖やせますので、「そっか、殖やしてみようかな」という人にこのブログが微力でも参考になるようなら嬉しいです。

あ、あとは昨今の円安とかを考えると、「世界中から観賞魚が日本に集まってくる」という状況もいつまで続くか分からないのでですね、国内ブリードで賄える魚種は少しでも多い方がいいんじゃないかな、とか。

幼魚の育成にかまけてるあいだに、またお腹をパンパンに抱卵させているメス親個体。
うーん、もう1回殖やしてみようかなあ。

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