【フトアゴヒゲトカゲの闘病と急死】(2)緊急入院~最期の別れ

フトアゴヒゲトカゲ「アゴちゃん」の4日間の闘病記の続きです。
未だに「もういない」ということを完全には認識できてなくて、つい様子をみようと飼っていたケージの方に目をやってしまうのですが、これからフトアゴヒゲトカゲを飼育する方、病気等で悩まれる方に少しでも参考になればと思い、ここに記録しておきます。

(前回記事)

自宅で飼っていたフトアゴヒゲトカゲ「アゴちゃん」が今日、息を引き取りました。体調の異変に気付いてからわずか4日間。あまりにも急すぎて、正直まったく気持ちの整理がついていません。

■2018年9月11日。「緊急入院」。

前日に生まれて初めての動物病院を受診し、治療を受けて帰ってきた「アゴちゃん」。夜には処方された粉薬もきちんと飲み、本格的な闘病生活スタートとなるはずでした。

(大好きな豆苗の畑を前に、ご満悦の「アゴちゃん」。2017年5月20日)

この日もぼくは仕事のため(月~金勤務のフツーのサラリーマンです)朝から出勤。前日の夜も「アゴちゃん」は比較的落ち着いているように見え、この日の朝もおとなしく眠っているようでした。

昼過ぎに、様子が知りたくなり妻へLINE。ちょうど買い物に出ているということで、帰宅したら様子を教えてもらうことになりました(後で聞いたところ、これからの通院に備えて「アゴちゃん」用のペットキャリーケースを買いに行っていたそうです。けっきょく1回しか使わなかったな…)。

それからさらに1時間後。妻からLINEが。(前記事同様、妻からの連絡は橙色で記します)

「アゴちゃんが苦しそうにふんばってる。今までにないくらい苦しそう!」

こちらは仕事中だったのでリアルタイムで返信も電話もできず、妻の判断ですぐに昨日と同じ病院へ連れていくことに。夜になって仕事から戻り、妻から詳しく話を聞くことにしました。

「昨日までより苦しそうに急にもがきはじめて、このまま死んじゃうんじゃないかと思った。パニックになったけど先生に説明できるように、動画を撮って病院に向かった」
「病院では症状が少し落ち着いたけど、動画を見せたらそのまま入院ということになった。明日(9月12日)にもう一度状況を聞きに行くことになった」
「(動画を見せたところ)発作的な症状に見える、脳神経系に異常があるかもって。」

というような話でした。

ぼくも動画を見せてもらいました(いま見返すと辛い気持ちになってしまうのでここには貼りませんが)。
前日までは“お腹が重い””ダルい”というような仕草や”なにかを求めてどこかに行こうとする”という意志を感じるような動きだったのに対して、この日のそれは不規則に手足をバタバタさせたり、手足で踏ん張れずヘビのように胴を波打たせたりと
、本当に辛そうな動きでした。

(妻にとっては本当にショックな光景だったらしく、この日は夜じゅうずっと泣いていました。「飼い主」としてぼく自身がその場に立ち会えなかったことも、情けない思いです)

容態が急変したら電話をもらうことにしていたのですが、この日は病院からの連絡はありませんでした。
少しだけ、妻と「アゴちゃん」の今後について話をしました。

「無事に帰ってきてくれると信じてる。前日の診察も治療も本当に最善を尽くしてもらっているし、アゴちゃんもきちんと薬を飲んで、生きようとしているんだと思う」
「だけど、昼間の様子からすると最悪のケースもどうしても考えてしまう」
「明日また先生に話を聞いて、もし回復の見込みがないようだったら、そのときは……」

率直に言うと「安楽死」という単語も飛び出しました。

それが“生き物を飼育する者”として正しい選択なのかどうか、今でもよく分かりません。そしてそれを獣医師の先生に委ねていいことなのか、飼い主自身が手を下すべきことなのか、今は結論が出せずにいます。(けっきょく「安楽死」という道を採ることはありませんでした)

ただ、「愛するペットがこれ以上苦しむ姿、飼い主として何もできない状況には耐えられない」というのはぼくも妻も同じ思いだったし、仕事でどうしても日中は家を空けてしまう以上、妻にその負担を強いることもぼくにはできませんでした。

「アゴちゃんはきっと病院で頑張って闘ってるから、それを信じて明日を迎えよう」
「アゴちゃんが元気で帰ってきたら、大好きなコオロギやフルーツを食べさせてやろう。気候もちょうどよくなってきたから、たっぷり日光浴もさせてやろう」
そんなことを妻と話しながら、この日は眠りにつきました。「アゴちゃん」のいない夜は久しぶりで、部屋の中にどこかぽっかりと穴が開いたような気持ちでした。

(「小松菜より豆苗が好き」。大好きな豆苗ばかり選んで食べる「アゴちゃん」。)

■2018年9月12日。「最期の別れ」。

この日もぼくは仕事のため出勤。
職場に到着する直前に、妻から着信がありました。

「動物病院から連絡があった。予定では今日のお昼に様子を見に行くつもりだったけど、できれば今すぐ来てほしいって。」
「昨日は落ち着いていたけれど、今朝になってひっくり返ってしまって、生体反応が薄いんだって。」
「先生からは“死んでしまっているかもしれない”ってことも言われた」

出勤途中だったので長話はできませんでしたが、妻からは「最期だとしたらひとりで立ち会うのは辛い」とも言われました。ぼく自身も、これ以上妻一人に負担をかけるわけにもいかないし、もともとはぼく自身のペットなので、最期は自分自身できちんと向き合いたい、そう思っていました。

話を聞く限り9割9分厳しい状況なのだろうけれど、いったいどうしてこんなことになってしまったのか、自分の飼い方が悪かったのであれば今後のためにも、それだけはしっかり聞いておきたいとも思っていました(通常は5~10年生きると言われるフトアゴヒゲトカゲですが、「アゴちゃん」はまだ2歳半でした)。

仕事を少し早く切り上げさせてもらい、夕方、妻と一緒に動物病院へ向かいました。

これまで、魚ばかり飼っていて動物病院で診察してもらうなんてこともなく、「アゴちゃん」についてもずっと妻に通院させてもらっていたので、ぼくにとっては人生で初めての動物病院です。

正直、到着するまでは本当に気分が重くて、逃げ出したいような気持ちにもなりました。
クリニックの待合室で、この水槽を見るまでは。

待合室に90cmくらいの海水魚水槽があって、なんとカクレクマノミとシリキルリスズメがそれぞれ産卵して卵を守っていました。(思わずスマホで撮影)

こんなときに自分の気持ちを少しでも救ってくれたのは、やっぱり魚たちでした。

そして、ほどなくして診察室へ呼ばれました。
(余談だけど、動物病院って患者(動物)の名前で呼ばれるんですね。
「アゴちゃん」ではなくて、もう少しカッコいい名前にしてあげればよかった。)

診察室に入ると、診察台の上に昨日買ったばかりのキャリーケースが置かれていました。その中に「アゴちゃん」がいるんだろうな、と分かりました。
そして椅子に座るよう促され、獣医師の先生の説明を聞くことになりました。

獣医師の先生は長い時間をかけて、本当に丁寧に説明をしてくれました。(以下、先生からの説明は青字で記します)

【症状について:(妻からの説明通り)】
・昨夜は少し落ち着いていたけれど、今朝になってぐったりしてしまっていました。
・生体反応もほとんどない状況です。
(これはここの病院の方針か、一般的にそうなのかは分かりませんが、爬虫類の場合は生死の判断が難しいらしく、はっきりと「死んでいる」とは言われませんでした。)

【原因について:(これも妻からの説明とだいたい同じ)】
・お腹の中のガスが溜まっていたので、当初は消化器系の異常を疑いました。
・卵詰まりではないものの、卵胞ができている。それが破れて腹膜炎を起こすこともある。
・ただし、どちらだとしても症状の進行が速すぎる。
(恒温動物である小鳥や小型哺乳類は代謝が高く、症状が進むのも速いそうですが、爬虫類は一般的に代謝が低く、こんなに急激に症状が進むことは珍しいとの説明でした)
・(妻が撮った動画から)発作のような症状に見え、内臓系ではなく脳神経系の原因かもしれないと推測しています。例えば脳内出血とか腫瘍、あるいは細菌やウイルスの感染や寄生虫など。
・ただし、今のところはっきりした原因は特定できず、これらが複合的に組み合わされた可能性もあるかもしれません。
爬虫類はもともと野生動物なので、どうしてもギリギリまで弱いところを見せまいと症状を隠してしまう(これは、ぼく自身もこれまで魚の飼育で同じようなことを何度も経験してきました)。特に「アゴちゃん」は見ている限り、性格の優しい子のようので、ギリギリまで我慢してしまったのかもしれませんね。

【今後について】
・遺体(先生は「遺体」とか「患畜」という言葉を使わず、終始「ご本人」と丁寧に呼んでいたのが印象的でした)はこのままお返しすることもできます。
・ペット霊園等も、ご紹介することは可能です。
・ただ……(少し間が空きました)、今回は急激な症例で原因も不明なので、もし許されるのであれば詳しく調べさせていただき、できるだけ原因を特定したいとも考えています。
・脳に原因があることも考えられるので、大学病院で詳しく調べさせてもらうことも考えています。1か月くらいかかってしまいますが、調べた結果はまたお伝えさせていただきます。
・ただしその場合は解剖させていただくので、「ご本人」を飼い主様にお返しすることができなくなってしまいます。
・「ご本人」をお返ししたほうが宜しければ、当院で病検することもできますが、その場合は大学病院のように詳細には調べられず、「ご本人」を綺麗な姿に戻してお返しするので、少し費用が掛かってしまいます。
・もちろんすべて飼い主様のご判断次第ですので、考えて決めていただいて構いません。

ということを、本当に丁寧に長い時間をかけて説明してもらいました。
(※「剖検に出すと費用はかからない」というのはたまたま今回の症例に限った話で、必ずそうなるという訳ではないと思います)

当然、ぼくも妻も、冷たく動かなくなってしまった「アゴちゃん」を目前に動揺とショックは受けていたのだけれど、それ以上に“爬虫類がこんなにも丁寧な扱いを受けられる”ということに少し感動すら感じていました。

ぼく自身は、ぜひとも大学病院で剖検してほしい、自分がこれから生き物を飼い続けるためにも、今後の爬虫類飼育や医療のためにもそうしてほしい、と内心思っていました。ただ、ここまで数日間辛い思いをしてきた妻の意見をいちばん尊重したい、そう思い、なにも言わず先に妻に意見を聞いてみました。

妻の意見も、ぼくと全く同意見でした。

最後に、キャリーケースから「アゴちゃん」を取り出し、最期のお別れをさせてもらいました。
「まるで寝ているような」と書ければいいんだけど、なんとなく血の気はないし、元々黒かった模様の部分はさらに黒ずんでしまっていて、やっぱり生きているときとは違っていました。
それでも、もう苦しそうな顔をしていなくて
、それだけは本当に救いでした。

妻は生きているときと同じように「アゴちゃん」を胸に抱き、頭をなでながら「がんばったね」と声をかけ、それからそっと先生にお渡ししました。
これで本当に、最期のお別れでした。

動物病院を出てから自宅に戻るまで、ぼくも妻もむしろすっきりしたような気持ちでした。それくらい丁寧な対応とできる限りの治療をしてくれた病院だったと思います。どうして死んでしまったのか未だに「原因不明」ではあるけれど、言葉を尽くして説明していただいて、納得できたような気持ちでした。

ただ、自宅に帰り、もう主のいなくなってしまった飼育ケージや、帰ってきたら食べさせようと伸び放題になっている豆苗を目にしてしまうと、やっぱりダメでした。

獣医師の先生が説明してくれたことを明日になったら忘れてしまいそうで、少しでも記憶が新鮮なうちにこうやって記録に残そうとしているのだけれど、途中でこらえきれなくなって何度か大泣きしました。

それでも、きちんと記録に残すことが、苦しくても治療を頑張った「アゴちゃん」へのせめてもの供養なのではないかと思っています。飼い主の勝手な思い込みかもしれませんが。

大学病院での剖検結果が分かったら、また続きを書かせていただきます。いまは「アゴちゃん」からの手紙を待つような気持ちで、剖検結果を待っています。

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