【イベントレポート】仙台うみの杜水族館「ヨシキリザメの自由研究」。

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■うみの杜「ヨシキリザメ」が飼育開始から2年を迎えました!!

本日、2020年7月27日。

仙台うみの杜水族館で飼育されている「ヨシキリザメ」が飼育開始から2年を迎えました!

日本国内はおろか、世界でも飼育例がほとんどないサメ。
その蒼さから「世界一美しい」とも呼ばれる美しいサメ。
一方でフカヒレの原料にもなり、我々の生活にも関わりの深いサメ。

現在、水族館での飼育記録を更新し続けているということもあり、前日7月26日には記念イベントが開催されました。

(コロナの影響もあるだろうけど)8組16人限定という超レアイベント!
参加記念品の「ヨシキリザメの歯」も貴重すぎますし、なにより飼育担当の方のレクチャーを聞けるのが嬉しい!

そして、もうひとつ面白かったのが、このイベントへの応募方法。
それがなんと「論文審査」

(※年間パスポート所有者を限定に、メールで「サメへの熱い想い」を400字程度で送り、ヨシキリザメ飼育担当の方が選抜する、というもの)

水族館で、こんなイベント申し込み方法はなかなか見ないですよね!
ぼくの素直な感想ですが、正直「素晴らしいなぁ!」と思いました。

もちろん、賛否両論があると思うんです。
特に公営の水族館や、地元密着型の水族館では「誰でも楽しんで学ぶことができる」という門戸の広さは必須です。(うみの杜は民営ですが、実質的に宮城県で唯一の大型水族館で、地元の方々の生涯学習の場としても重要な施設だと思います)

その一方で、「水族館や魚や生き物を好きな人が、きちんと楽しめる場所であってほしい」という願望もあり。
特に、これからの夏休みシーズンのような繁忙期だと「せっかく水族館に行ったのに混雑しすぎで展示を満足に見学できない」とか「マナーの悪い客層が多くて余計なストレスがたまる」なんてこと、どこの水族館でもよくあったりします。

水族館は基本的には「開かれた施設」であるべきである。
それは前提としても、やっぱり時には「熱烈なファン、マニア、本気で学びたい人々」が得をする仕組みがあればなぁ……と思っていました。

もちろん有料プログラムとかでもいいんですけど、なにもかも「お金で解決」というのも違う気がするし……。
前々からそう思っていたので、今回の「論文審査」方式はすごくいいな、と個人的には思っています。

■「論文審査」にめでたく合格、そしてイベント当日。

そんな「論文審査」方式が告知されたのは(確か)7月某日の深夜。
(この告知タイミングも、割と狙ってるよなぁ笑)

自分なりの熱意と想いが少しでも伝えられるように……!
そんな気持ちを込めて400文字ちょっとの文章を綴り……ありがたくイベント当選!!

そしてやってきたイベント当日。

レクチャーイベントは10時からだったので、9時の開館とほぼ同時に水族館に入館し、まずはイベント前に本日の主役とご対面。

飼育開始から(間もなく)2年のヨシキリザメさん。
元気にこの日を迎えてくれました!

ルックスがいかにも「普通のサメ」なので、「あー、サメだねー」なんてスルーされちゃうことも多いんですけどね……。
(すぐ横に「飼育記録更新中!」って割と大きめの看板が立ってるんですけどね)

かくいう自分も、すっかり「ここに来ればヨシキリザメがいる」ということに慣れてしまい、ときどきその貴重さを忘れそうになります。
関東圏や関西圏のサメ好き/魚好きな方々とお会いすると「仙台!てことはヨシキリザメ!いいなぁ!」と羨ましがられることがけっこうあって、そのたびに改めてその貴重さを再認識するのです。

「水族館でヨシキリザメが見られること」は、地元の誇りなんです。

シャープな体形、目の覚めるような蒼い体色……。
やっぱりすごく美しいサメです。大海原を泳ぎ回る様子を想像してしまいます。

■そしてレクチャーイベント開始。(※以下、ネタバレあり)

駆け足で館内を廻った後、イベント開催場所のレクチャールームへ。
「自由研究イベント」と銘打たれていることもあってか、参加者の半分くらいが親子連れの方でした。
(大人げなく当選を勝ち取ってしまったことを少し申し訳なく思いつつ……)
(選ばれたからには全力で!来られなかった方の分まで楽しみます!そしてきっちりブログ発信します!

やがて、ほぼ時間ちょうどにヨシキリザメの飼育担当・大谷さんが登場。

※以下、許可をいただいたので発表に使用されたスライドの写真も登場します。ネタバレご注意ください。
※公式YouTubeでも動画配信されていますので、まずはぜひこちらを先にご覧ください!

(以下、当日レクチャーを受けながらぼくが感じたことも交えてご紹介)

まず最初に「どうしてヨシキリザメを飼育するのか」から入る導入が素晴らしいと思いました。

飼育方法が確立されていない生き物の飼育展示に敢えてチャレンジするということは、つまり「死なせてしまう可能性も高いけど、野生の生物をいただいてきて飼育する」ということ。
ですから、「なぜ敢えて水族館で飼育するのか」を伝えることは大切ですよね。

(いずれはそれが、ヨシキリザメという魚の生態解明や資源保護に役立てばさらにいいな、と思います)

「水族館でいつでもヨシキリザメを観られるようにする」のがStep 1。
「ヨシキリザメを通じて三陸の海の魅力を発信する」のがStep 2。

なるほど、こんな明確な目標が設定されていたんですね~!
「Step 1」はほぼ達成しつつあるんだろうなぁ。

■まずは採集が大変……。

「海から上げるときは、水ごとすくうんです」と解説する大谷さん。
漠然と「採集も飼育も難しい生き物」くらいに認識していましたけど、実体験に基づく話は説得力が違います。

展示初期(うみの杜水族館のオープンは2015年7月)の搬入成功率は50%以下。
「飼育成功率」ではないことに注意!飼育以前に、水槽へ迎え入れることが難しい生き物なのですね。

さりげなく書いてある「うまくいかない条件」も興味深いです。
「陸送時間が40分以上」とありますけど、これでも首都圏の都市型水族館とくらべたらずっと有利な立地だよなぁ。
「身体の硬化がみられる」という話も、初めて聞くことができました。

数々の試行錯誤があって、今に至る(そして未来へつながる)のですね。
代謝を促進するために、水槽に放流する前にマッサージしてあげるという話も初耳。

※ヨシキリザメのマッサージ動画は本当に貴重だと思うので、ぜひ公式YouTubeをご覧ください!

■続いて、飼育面での試行錯誤の話。

そう、ヨシキリザメは以前は大水槽で飼育されていたのですよね。(大水槽での飼育記録って最長8日だったんだ……)
円柱水槽での飼育に切り替えた、というところも、成功のカギの1つだったようです。

2015年6月、オープン直前のうみの杜水族館……。(限定公開で見に行った)
「大水槽にヨシキリザメがいる」って聞いたから、望遠レンズを血眼にして探したんだぜ……。(すべてホシザメかドチザメだった)

マンボウ水槽でのチャレンジ開始当時。
このときのヨシキリザメは大きかった。(その後、「小さい個体の方が成功しやすい」って分かったらしい)

あ、あと、このころの水槽前はバリケードの厳重さがすごいですね(笑)。
いまは注意書きの数がだいぶ減ったのですが、これはきっと見学マナーが向上したのだと信じている。(フラッシュ撮影は今でも禁止です)

このころのヨシキリザメ水槽、底面がコケだらけだったのは、潜水掃除を控えていたからなんだなぁ……。

個人的に、いちばん興味深かったのはこの話。
うみの杜水族館に遊びに行くとよく、水槽の前でじっとヨシキリザメを観察している飼育員さんの姿を見かけるのです。こんなに細かいチェックシートになっていたとは……。

「飼育に関わるスタッフは自分だけではないので、全員が同じ基準で行動観察できるようにした」という話も面白かったです。水族館って「生き物が主役」なのは当然だけれど、その裏にはスタッフの方々のこういう工夫やチームプレイが必ずあるんだよなぁ。

それを「ヨシキリザメ“オタク”の育成」ということばで表現していたのも魅力的でした。

■飼育から分かったこと。

うんうん、ヨシキリザメって繊細なんだね、イメージ通り……。

そう思いながら聞いてたけど、こんなデータまで出して説明してくれるとは思わなかった!

「観覧者の多い時間帯のほうが、スレや方向転換が増える」のだそうです。(グラフを見る限り、大幅に増えるわけではなさそうですが)

ヨシキリザメを観るときは、できるだけ静かに観察してあげたいですね!
(ほかの生き物もですが)

食べさせすぎると体調不良に繋がるのだそうです。

そして「ヨシキリザメは、底のエサの方が上手に食べる」という話も意外でした。野生下ではかなり深い水深まで潜るという研究結果もあるそうで、やっぱりまだまだ謎の多い魚です。

ヨシキリザメの治療法もここまで体系化されているとは。
(そして、そういう飼育成果をしっかり公開するのも素晴らしいな、と思いました)

ストレス時や行動が落ち着かないときには、抗鬱・抗不安薬を投与するというのもびっくり。

■まとめ~未来を感じました

漠然と「ヨシキリザメ長期飼育の裏にはスタッフの方々の努力があるんだろうな~~」とは思っていたのですが、今回その具体的なストーリーを(失敗談も含めて)知ることができたのは本当に嬉しい経験でした。

そして、こういった成果を出し惜しみせず(飼育・観察で得られたデータも出しながら)公開してくださったということもありがたく。

いち水族館ファンの勝手な偏見ですけど、こういう飼育ノウハウってそれぞれの水族館が「企業秘密」的に非公開にしてしまうことも多いような気がしていました。そうではなくて、それぞれで得られた知見が園館の壁を越えて共有されているのだったら素敵だなぁ。

(ヨシキリザメについては、葛西臨海水族園やアクアマリンふくしま、むろと廃校水族館あたりでも飼育に挑戦しています。いずれ飼育方法がさらに確立して、この美しいサメの魅力をもっとたくさんの人が目にすることができればいいなぁ)

冒頭でも説明していただいた通り、「いつでもヨシキリザメが観られる」というのはまだStep 1。イベント中、大谷さんの「まだまだ通過点です」ということばも力強く。

あまり「見世物」的にはならないでほしいと思うけど、これからもっと展示が進化していってヨシキリザメの新たな一面を知ることができればと、とても期待しています!

マンボウとは、一時期同居していたことがありました。

大水槽で、こんな風に泳ぐヨシキリザメとか……(想像しただけで悶える)。
※写真はたぶんドチザメ。
※スナメリが大水槽にいるうちは無理か。。。

「イルカが出るかもよ」「釣りもできるよ」と言って同僚を採集調査に誘っているのだそうです(笑)。(むしろついていきたい……と思ってしまった)

■レクチャー後には、ヨシキリ水槽前へ移動。

レクチャールームでの講義後は、みんなでヨシキリザメ水槽の前へと移動。

そしてイベント参加の記念品として、大谷さんから「ヨシキリザメの歯」をいただきました!!
意外と小さい。そして魚食性の強いサメらしい、鋭い三角形の歯です。(同封された小さな紙にはヨシキリザメ豆知識が書いてあるけど、内容は秘密です!)

この日は地元TV局も取材に来ていて、イベント参加者の方にインタビューしていました。(というマスコミの様子をさらに撮影する鬼畜ブロガー)

この日の夕方の宮城県のローカルニュースでも、各局で報道されていました。
1匹のサメがここまで注目されることが、純粋に嬉しい!!!

最後に1枚。
また次に来るときまで、元気でいろよ。

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