■My favorite Aquarium.
アクアマリンふくしまが好きだ。
水族館好きで集まってワイワイしてるときなんかによく「どこの水族館がいちばん好きか」なんて話になるんだけれど、そういうときは大抵、この水族館の名前を挙げる気がする。
好きだと言っても、けっきょく年間に数回くらいしか足を運べていないのだけれど。
そして、このブログでアクアマリンふくしまについて書いたことが、実はこれまで無いのだけれど。
これは自分でも意外でした。このブログを開設した2018年1月以降でも、何回かは足を運んでいるのに。そして毎回ほぼオープンクローズで滞在して、写真もいっぱい撮っているのに……。
でもちょっと、思い当たるフシもあるんです。
■好きすぎて言葉にできないって、あるよね。
なんだか小田和正の名曲みたいなこと言ってますけど、まぁ、ぶっちゃけ、それです。
「Inspiring Aquarium」。
建物壁面に掲げられたこのコンセプトが、本当にしっくりきます。(アクアマリンふくしまのコンセプトと言えば「環境水族館宣言」が有名ですが、こちらの「Inspiring Aquarium」もすごくいいなぁと思います)
「インスパイア」ってカタカナ言葉にもなっているのでなんとなく雰囲気で分かったつもりになってたのですが、ふと本来の意味を調べてみました。
・(人)に着想/ひらめきを与える
・(人)を元気づける
・(人)を動機づける、刺激を与える
・(感情など)を引き出す、呼び起こす
うーん、まさにこれです。
着想……というほどの高尚なものをぼくが得ているかどうかは分かりませんが、とにかく展示ごとエリアごとのコンセプトが明確でメッセージ性が強いので、すべての展示を見終わるとあらゆる方面から刺激を受けて、感情がごった煮状態になっちゃうんですよねぇ。
(ちなみにもう1か所、須磨海浜水族園もコレと同じ状態になってます)
だけど、自分的激推しの水族館のことを自分のブログで一切紹介してないのも、どうなんだろう。
ウーン、これじゃダメだぁ!とちょっと考えを改めて、何回か小分けにしてみることにします。(たぶん。今回限りにならなければ。きっと。頑張る。)
■アクアマリンふくしまの「いきものを探す楽しみ」。
そんなわけで、1つ1つの展示が放つメッセージ性をいろいろな角度から受け止めて、行くたびに感動で脳みそがごった煮状態になってしまうアクアマリンふくしま。
その中で、ぼくが一番に「あぁ、やっぱりアクアマリンふくしま最高だわぁ」と思うのが、まるで野生の海辺や川岸にいるかのような各展示の造形と、その中でありのままの姿で生きる生き物たちを「探す」楽しみがあるところ。
まずは「ふくしまの川と沿岸」エリアから。
天井の高いドーム状の温室の中に入ると、水槽より先に目に飛び込んでくるのが天井に届かんばかりに伸びた樹木や生い茂る草花。水族館の中とは思えない光景で、10数年前に初めてアクアマリンふくしまを訪れたときはただただ驚愕したものです。
水族館とも植物園とも違う、その2つが融合したような空間。もしかしたら「ノアの箱舟」の中身ってこうなってるんじゃないか、と思うような、ガラス張りのドームの中の小さな生物圏。
USA・アリゾナにあるという実験施設「バイオスフィア2」(人工的に作られた閉鎖型生態系)をすら彷彿とさせる光景です。(アクアマリンふくしまの場合は厳密な意味で「閉鎖型」ではないけれど)
木々の茂みの中に点在する水槽たちを1つ1つ眺めながら順路を進んでいくと、川はやがて海へ出ます。
通路の左側は「潮目の海」の大水槽。
そしてその反対側(写真、右手前側)は、河口域や海岸域を模した水槽が並んでいます。
「黒潮水槽」のマイワシの群れ。ときどきマダラトビエイやマグロ・カツオ類が近寄ってくることもあって、本当に黒潮域の外洋の海を切り取ったような素晴らしい水槽です。
それで、ついついこのマイワシの大群や吸い込まれるような蒼色の水景に目を奪われてしまうんだけれど、逆サイドにある沿岸水槽たちにもぜひ目を向けていただきたい!!
なにかに向かって夢中でカメラを向ける人発見。こういう人見かけると、なにを見つけたのかすごく気になるよね。(モデル:妻。 笑)
そう、このコーナーはとにかく「隠れキャラを探す」ことが楽しい水槽たちなのです!
これは比較的わかりやすいかな。
磯の水槽にいる、シロウミウシ。
こちらはイソギンポ?
魚やウミウシのような「分かりやすい」生き物だけでなく、岩肌にはカイメンの仲間やヒドラ(刺胞動物)っぽいナニモノかや付着藻類などなど……。そういうのまで含めれば、数えきれないくらいの生き物が。
こちらはエゾハリイカ。10cmくらいの小さなイカです。海藻の表面に擬態している様子。
小さくても、ちゃんと10本足があるのが可愛い。
夢中でこのイカを撮影していたら、見知らぬご夫婦が興味深そうに「なにがいるの?」と尋ねてくれました。言われるまで、イカがいることに気付かなかったみたい。(いちおう魚名板はあるのですが、水槽上側のなかなか分かりづらいとこにあるのです)
こういう「気付いた人だけ楽しめればいい」とも思わせるような展示方法を「不親切」と思うか、「自然の海みたいで楽しい!」と思うか、なんだろうなぁ。
こちらは砂地の水槽にいる、ホウボウ。まだ5cmくらいのミニチュアサイズ。
こんな小ささでもしっかりホウボウらしい姿で、なんかフィギュアがチョコチョコ泳いでるみたいでかわいい。
同じく砂地の水槽に、巣穴を掘ってお住まいのシャコ。
巣穴の奥底から砂を抱えては、せっせと外に放り投げています。
シャコやマハゼの展示水槽で、人工的にU字型のトンネルをガラス面側に作って巣穴に隠れる様子を展示するやり方はよく見るけれど、アクアマリンふくしまの場合は「なるべく自然に近い砂地を用意しておくから、あとは好きなとこに巣穴を掘ってね」方式。
こちらはヒゲモジャの顔がかわいい、サビハゼ。
こちらも砂地の斜面に巣穴を掘って隠れています。ナマコに侵略されかけてるけど。
たまたま給餌タイムで飼育員さんがいたので話すことができました。水槽内の掃除のたびに巣穴を埋めてしまうんだけど、それでもまた何度も巣穴を掘るのだそうです。
自然界でもきっとそういう営みは毎日繰り返されているはずで、そういう生き物たちの姿を観察できるのがすごくいいな、と思います。
さて、もうひとつ。
このエリアで、個人的にイチオシの展示をご紹介。
アクアマリンふくしまに行くたびにコレを見て感動してます。でも、とても地味です。
こちらの、一見なんの変哲もないボラ水槽……。
よく見ると、水中がなにやら陽炎のようにモヤモヤしているのに気がつきませんか??
(スマホからご覧になってる方、よかったら指二本で画面をちょっと拡大してみてください)
ボラたちが泳いで水流が泳ぐと、ちょっと分かりやすくなります。
実はこのモヤモヤ、淡水(比重が軽い)と海水(比重が重い)が混じりあうことでできるモヤモヤ。川が海につながる河口域では、こういうふうに淡水と海水が層になっているのですが(塩分躍層)、それを実に見事に再現した水槽です。
淡水も海水もけっきょくは「水」ですので、水流をつけて無造作にかきまぜればこの塩分躍層は消えて均一な「薄めの海水(汽水)」になってしまいます。
そうしないように、まるで多層に分離したカラフルなカクテルを作るかのように丁寧に作りあげた汽水水槽。そして、それだけ工夫していながらそのことを一切解説パネル等で書かない(ある意味不親切な)姿勢も、アクアマリンふくしまらしいなぁ、と思ってしまうのです。
続いて「熱帯アジアの水辺」コーナーより。
順路をずっと進んでいくと、やがて再び植物園のような温室エリアにたどり着きます。
今度は、東南アジアの水辺(淡水域~マングローブ)を模した「熱帯アジアの水辺」のコーナー。
熱帯性淡水魚(いわゆる「熱帯魚」)の展示というのはどこの水族館でも比較的よく見ますが、「熱帯アジア」に照準を絞った展示というのはここアクアマリンふくしまと、あとは板橋区立熱帯環境植物館(グリーンドームねったいかん)が素晴らしいですね。
一定時間ごとにミストの演出が。立ちこめるミストに太陽光が射して、さながら、熱帯雨林の中を探検しているような気分になります。
植栽部分も、先ほどの「ふくしまの川と沿岸」コーナーとは異なり熱帯アジア産の木々で統一されています。
マングローブの根元に、ミナミトビハゼが!
中望遠レンズで撮っているので近くにいるように見えますが、実際には2, 3m 先にいるので、気をつけて見ていないと気付かないかもしれません。
観覧エリア側の近くにも姿を見せてくれるのですが、あまりドヤドヤと賑やかにしてしまうと驚いて水中に潜ってしまったり、マングローブの茂みの奥に隠れてしまいます。
少しだけ離れて、静かにじーっと見ていると、砂の中のなにかをモグモグしたり、背ビレを立てて縄張り争いしたり、砂の上で寝がえりを打つようにゴロンとしたりと、生き生きした姿を見せてくれます。
この生き物たちとの適度な距離感が、たまらなくいいんですよね。
同じマングローブ水槽にいる、ベニシオマネキ。
トビハゼ以上に警戒心が強くて、じーっと待っていないとなかなか出てきません。
水中部分を泳ぐ魚たち。(1枚目:コモチサヨリ。2枚目:オニボラ)
水面直下を泳ぐので、鏡のように水面に映る姿が綺麗です。この、陸上と水中との境界線的な感じが、上手く表現できないけれどとても好きです。「水辺感」とでも言うのでしょうか。
こちらは淡水水槽にいる、マレーハコガメ。
水面からちょこんと顔を出していました。水中でしっかり手足を踏ん張っているのもかわいいです。
ぼくら人間はついつい「陸上の生き物」「水中の生き物」という風に区分してしまいがちですけど、彼らにとってはその両者がクロスする「水辺」が日常を暮らす場所なんだなぁ……と実感。
夢中で魚を撮っていたところ、頭上から美しい鳥の鳴き声が。
よく目を凝らすと、木々の茂みの中に小鳥がいました。ベニスズメかな?
水族館なのでついつい水槽の中の魚たちに注目してしまいがちですが、聴覚のセンサーも切ってはいけないんだな~~。
某水族館プロデューサーの方がことあるごとに「水族館で人々は魚を見ていない」というような趣旨の発言をされていますが、それとはちょっと違う意味で、ここアクアマリンふくしまでは「魚だけを見ていてはいけない」のかもしれません。
(一方で、魚1匹1匹を主役にした「親潮アイスボックス」という展示エリアもありますが。)
水辺で野外活動をしているような気持ちになって、五感フル活用で生き物たちを探してみる。
それが、アクアマリンふくしまをより楽しむコツなんだと思います。そしてそれを狙って、アクアマリンふくしまはここまで凝った「疑似生態系」ともいえる展示をこしらえたのではないか、とも思うのです。
(実際に、海辺の自然を再現し自由に生き物たちを探すことのできる、「蛇の目ビーチ」という広大なタッチプールもあったりします。その広さ、なんと東京ドーム1/10個分! ←分かりづらいって!)
※アクアマリンふくしま、ほかにも「環境保全への熱いメッセージ」だったり「水産業と海」という切り口だったり「震災&原発問題からの復興」だったりと本当にいろんな側面で刺激的な水族館です。そのあたりも続けて紹介していければ、と思います。