■AMFの推しポイントが多すぎて1回では紹介しきれなかった件。
我がイチ推し水族館であるところの、アクアマリンふくしま(AMF)。
とにかく展示ごとのメッセージが明確で、推しポイントが多すぎてひとことでは紹介しきれないので、何回かに分けて紹介してみよう作戦、第2回です。
(前回はこちら)
うーん、全3回くらいで終わるかなぁ。完結させたいなぁ。
■アクアマリンふくしまの「博物館要素」が好き。
のっけから余談ですが、「アクアマリンふくしま」って実は愛称で、正式名称は「ふくしま海洋科学館」っていうのですよね。
その名前の通り、AMFの展示の随所に感じられる「科学館」「博物館」的要素が大好きです。
アクアマリンふくしま・本館、順路の始まりはなんと「海・生命の進化」。
(正確には、本館に入る前に「わくわく里山・縄文の里」という屋外展示とユーラシアカワウソの展示があります)
水族館に遊びに行くときって、入場してすぐが期待度MAXでテンションアゲアゲ、ということが多いんじゃないかと思います。
AMFの場合は、そんなテンションでウェーイ!と進んでいった先にこんな光景が広がっています。
天井からぶら下がる、巨大な古代魚ダンクルオステウスの模型。
そして、その下に並ぶ古代生物の化石の数々……。
右側には水槽が並んでいますが、ここも薄暗くなにやらあやしい雰囲気です。(カメラにだいぶ頑張ってもらってますが、実際にはかなり暗い空間です)
(ここは水族館ではない、博物館だ!!)
脳がそう、直感的に判断します。
大都市圏にあるような雰囲気重視のオシャレ水族館とは、明らかに異質な空間です。
(※順路を進んでいくと水塊感バツグンの大水槽あり、子どもから大人まで楽しめる体験型展示ありと、誰でも楽しめる要素も満載なのがAMFのニクいところでもあります)
■古代魚・古代生物好きにはたまらない空間。
右側にずらっと並ぶ水槽群。
系統樹にそって、各動物門の生き物たちが水槽ごとに展示されています。
写真左奥にエスカレーターとエレベーターがあって、次のコーナーに進むには必ずこれを使う必要があります。つまり、よっぽど館内ルートを熟知した人でもない限り、必ずこの超々マニアックな展示コーナーを通らなければなりません。ううっ、確信犯やっ!!
各動物門ごとに、それぞれを代表する「生きた化石」たちが展示されています。(節足動物:カブトガニ、軟体動物:オキナエビス)
それにしても、各動物門の説明が詳しい……。
これを1つ1つ読んでいくだけで、けっこうな時間を要します。
実際、アクアマリンふくしまの解説板は1つ1つ「読ませる」ものが多いです。
逆に、前回紹介した「ふくしまの川と沿岸」や「熱帯アジアの水辺」のコーナーのように、必要最小限の魚名板しか設置していない展示エリアもあり、このあたり意図的にやっているのだろうな、と想像しています。
さて、いよいよ系統樹は魚たちへ。
ギンザメの一種、スポッテド・ラットフィッシュ。
「ギンザメはサメじゃない」(類義語:「チョウザメはサメじゃない」)みたいなのって、魚好きな方なら常識なのかもしれませんが、世間一般に知れ渡っているかというとそうではないのですよね。
ここの展示をしっかりチェックすると、そういうことも自然と理解できるというわけです。
ハイギョの一種、ネオケラトドゥス(オーストラリアハイギョ)。
北米に棲む、アミア目唯一の現存種、アミア・カルヴァ。
ほかのどの魚とも似ていない独特の体形やヒレの動かし方、特に波打つような背びれの動きがなんともかわいい魚です。
そして、ある意味で究極の古代魚・シーラカンスの標本展示。
以前は別の場所に「シーラカンスの世界」という展示室があったのですが、最近レイアウト変更がありこのコーナーに統合されました。
アフリカ産のシーラカンスと東南アジア(インドネシア)産シーラカンスの両方の標本を、じっくり眺めることができます。
アクアマリンふくしまは開館当初からシーラカンスの調査・研究に熱心に取り組んでいて、生きたシーラカンスの泳ぐ様子を世界で初めて撮影成功したりしています。(個人的には、いつか生きたシーラカンスを展示するのはここAMFなのではないか、と勝手に期待しています)
これは、2017年にAMFで開催された市民シンポジウムのひと幕。
AMFが「進化」の展示にこだわり、順路の冒頭部に配置しているのには、きちんと理由があるのですね。
■「この生き物はなんのために展示されているか」がハッキリしている。
そんな「海・生命の進化」コーナーで、ほかの古代魚たちと並んで展示されているアリゲーター・ガー。
最近ではすっかり外来魚として有名になってしまい、TV番組等でも「あの怪物が見つかった!!」というような紹介ばかりされてしまうアリゲーター・ガー。
水族館でも「外来魚」という側面で紹介されがちな彼らですが、ここAMFでは一切「外来魚」という視座では取り上げられていません。
ほかの古代魚や「生きた化石」たちと同様、幾度もの生物大絶滅をくぐりぬけ永いあいだ生き延びてきた「進化の成功者」の一員として展示されています。
「おっかない外来種」という取り上げ方は簡単かもしれませんが、そうではなく飽くまで生き物としての魅力や特徴にフォーカスした展示。心から素晴らしいと思います。
同じように「なぜこの生き物を展示しているのか」というメッセージが強く伝わるのがカワウソ展示。
まず、展示エリアが広大。そして、水中には水草が茂り、たくさんの川魚(主にアユ)が泳いでいます。
前回の記事で紹介した「できる限り野生環境を忠実に再現する」というコンセプトをここでも強く感じます。
ここに暮らすのはカワウソの家族。2018年、2019年と3頭ずつのカワウソベビーが生まれ、現在は8頭の大家族です。まるで野生の水辺で暮らしているような姿が素晴らしいです。
このカワウソ展示の傍らに掲げられているのが、こちらのボード。
ご存じの通りニホンカワウソは既に絶滅し地球上から姿を消してしまったのですが、「かつてニホンカワウソが暮らしていた水辺の風景を再現し伝える」というメッセージがこの展示には込められています。
展示しているカワウソも、分類的にニホンカワウソともっとも近いユーラシアカワウソをセレクトしているそうです。単に「かわいいカワウソ」を見せるのだけではない、明確なメッセージ性を強く感じる展示です。
多かれ少なかれ、動物園/水族館というのは野生生物を「いただいてきて」展示する施設です。そして最近では野生生物保護や動物愛護といった考え方が市民権を得て、「単なる見世物小屋」ではない動物園/水族館の存在意義が強く問われる(時には不要論も叫ばれる)時代になりつつあります。
そんな中で「なんのためにその生き物を展示するのか」ということを突き詰めたアクアマリンふくしまの展示は、観覧していてとても安心感を覚えるのです。
■生き物それぞれの個性をじっくり見たい!
館内の順路後半には「親潮アイスボックス」という展示コーナーが。
冷水域・深海性の生き物を多く集めた、小水槽がずらりと並ぶ空間。
いちばん下段の水槽以外は、基本的に1水槽1種類ずつが展示されています。まさに生きた深海生物図鑑、という感じ。
(下段水槽は腹ばいにならないと観察できず、じっくり見るのがちょっと大変なのですが。。)
オオメンダコ。
飼育が難しく、「行けば必ず見ることができる」という訳ではないですが……。このときは運よく生きた姿を拝むことができました。
メバルやソイに近縁な魚、ヤナギノマイ。
名前も姿も美しい魚です。
ヤイトゲンゲ。
大きな口とつぶらな瞳がかわいい。
北の海の魚や深海魚ってなんとなく地味な印象が強いですが、こうやって1種類1種類をじっくり見るとそれぞれに美しさや可愛さがあるんだなぁ、ということを発見できるんですね。
■その他、館内随所に溢れる「博物館」要素!
温室エリアを抜けた3階部分は「オセアニック・ガリレオ(海の博物館・海の科学館)」という展示スペースになっています。
ここはその名前の通り、博物館・科学館要素が満載。
この光景は、水族館というよりまさに博物館。
非常に読み応えのある展示解説の数々。(ニホンウナギの水槽があったりと、ところどころに生体展示も散りばめられています)
こういうのを「説教くさい」と感じるかどうかは人それぞれですけれど、ここは学校ではなくて水族館なので、こういうメッセージを受け止めて共感した人が胸に刻んで持ち帰ればいいんだと思います。
それから、本館をすべて見終わった後にある別館「アクアマリンえっぐ」。
主にキッズ向けの体験エリアで、釣り体験あり・魚の調理体験ありとめちゃくちゃ楽しい体験エリアなのですが、ここも博物館チックな展示物であふれています。
ネコザメの骨格標本。
前歯はザラザラ。この前歯で、貝類などをしっかりホールドするのですね。
奥歯はゴリゴリ。この奥歯で、サザエの堅い殻も割ってしまうそうです。(だから別名「サザエワリ」)
これ、自由に手に取って触ることができるんです!キッズたちに混じり、空いてきたタイミングを見計らってネコザメの歯を心ゆくまで満喫してしまいました!大人も楽しめる体験型展示、すばらしい!
■水族館は「博物館」なのか??
今回はちょっと、アクアマリンふくしまの真面目要素ばっかり取り上げてしまいました。
こういう展示を「退屈だ」と思う人も、もしかしたらいるのかなー、と思います。
一方で、水族館に学習・教育・研究といった要素を求める人もいるのだと思います(自分もその一人です)。
『水族館は、博物館法上の“博物館相当施設”であり……』というような話は、これまた長くなりそうなので、ここでは一旦やめておきます。
個人的な見解ですが、水族館は
・博物館(博物館相当施設) でもあり
・エンターテインメント施設 でもあり
・調査、研究施設 でもあり
・デートコース でもあり
・癒しスポット
でもあるのだと思います。(1つの水族館にもいろんな側面があって、訪れた人がそれぞれにいろいろな受け止め方をすればいいんだろうと思います)
「水族館は必ず、博物館的な要素を持つべきだ」とまでは思いませんが、個人的にはある程度、「学べる」要素を備えている水族館が好きです。(ここでいう「学べる」というのは、無理やり机に縛りつけられるようなお勉強ではなくて、展示を見て・触れて能動的になにかを学び取れる、ということじゃないかと思います)
そして、この記事中でもちょっと書いた通り、これからの時代は「なんのためにその生き物を飼育・展示するのか」という説明が強く求められるんじゃないかなー、と思います。
その点をしっかり明確にしているアクアマリンふくしまは、やっぱりつくづく「激しく推せる水族館」だなー、と思うのでした。
(そして、その一方でエンタメ性のある体験型展示や癒し要素もしっかり両立されていて、そこがまた凄いのですよね……!)