Blue Sharks are BACK!! / 仙台うみの杜水族館でヨシキリザメ展示が始まりました

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■うみの杜水族館にヨシキリザメが入りました!

6月30日、仙台うみの杜水族館で「ヨシキリザメ」の展示が始まりました!

仙台うみの杜水族館を象徴する展示のひとつ、ヨシキリザメ。

国内最長飼育記録(873日)を達成した先代のヨシキリザメ(No.25 )がいなくなってから約半年。今年もまたこの初夏の時期に、ヨシキリザメたちが水族館に搬入されました!

(前回飼育個体については以下記事を書きました)

2020年12月15日。仙台うみの杜水族館で最長飼育記録を更新中だったヨシキリザメが死んだ。写真を見返しながら振り返ります。

しかも、今回は一挙に4匹が同時搬入!
すぐにでも見に行きたかったのですが平日はなかなか足を運ぶことができず……。土曜日の朝の開館を心待ちに、週末を迎えました。

ちなみに今回のヨシキリザメ搬入、「夏休みシーズン前だから?」とか「パフォーマンスイベント“SEATOPIA”が始まるから?」なんて声もありましたが、そうではなくて元々この時期が飼育用個体の採集に適しているからだそうです。
前回個体(No.25)も2018年7月に搬入されていますし、その前に当時の国内飼育記録(252日)を達成した個体(No.17)も、2016年6月に搬入されています。

他の水族館での近年の展示記録を見ると、やはり6月~7月に搬入される例が多いようです。
・むろと廃校水族館:2018年6月~
・アクアマリンふくしま:2018年7月~
・葛西臨海水族園:2020年6月~
・伊豆・三津シーパラダイス:2021年6月~

日本近海ではヨシキリザメは春~初夏に出産すると言われているので、そういった繁殖形態や回遊ルートとも関係あるのかもしれませんね。

■半年ぶりに見る「水槽を泳ぐヨシキリザメ」

7月3日、土曜日。
オープンと同時に入館して、まずはヨシキリザメ水槽へ。

いました!!
小さいけれど、このフォルムは確かにヨシキリザメ!

4匹入ったと聞いていたのですが……。何度水槽内を見回しても、3匹しか見当たりません。
残念ながら、この日の開館前に1匹が体調を崩し、展示終了となってしまったそうです。やはり、ひと筋縄ではいきませんね……。

このスマートな体形、そしてこの青い体色。
「世界一美しいサメ」とも言われるヨシキリザメ。生きて泳ぐ姿を見られる喜びがこみ上げてきます。

搬入直後だからなのか、朝イチだからなのか、或いは体調的な理由なのかは分かりませんが、こんな風に水槽の底を泳いでいることも多かったです(ほんの1時間ちょっとの観察時間ですが)。

■「飼育記録達成」の次は……?次なる挑戦のテーマを探る

今回のヨシキリザメ搬入&展示開始には、いくつかの特徴がありました。

  1. 複数個体(4匹)同時搬入
  2. 小型個体(幼魚)からの飼育開始
  3. マンボウとの同居展示

実はこれらのポイントは、昨年時点でテーマに挙がっていたこととも重複しています。
2020年7月、先代「No.25」が飼育開始2年を達成した際の解説イベントより。

(レクチャーの完全版はYouTubeチャンネルにて視聴できます)

ヨシキリザメの長期飼育記録達成まで、飼育当初から現在に至るまでの道のりや日々の飼育管理についての話や、普段は見ることのできない搬入や治療の様子の動画など!貴重なエピソード満載です!また、ヨシキリザメ飼育担当に直接質問ができる質疑応答コーナーも!!==================================...

仙台うみの杜水族館(自分にとっては「最寄り」の水族館です)に通うなかで、以前スタッフの方と少しお話をさせていただく機会があり、その際に「また同じように長期飼育に挑戦するだけではなく、新しい発見につながる挑戦にしたい」というような話を聞くことができました。
今回まさに「有言実行」となったわけで、その点がとても感慨深かったです。

これら1つ1つのポイントについて、写真とともに少しだけ考察してみたいと思います。

1.複数個体の同時飼育

今回は4個体が同時に搬入という、華々しい展示スタートとなりました。(前回2018年7月の搬入の際も、最初は3匹同時展示だった気がしますが)

まるで寄り添っているような微笑ましいシーンも、今なら見ることができます。

見た目にも賑やかな複数展示ですが、もちろん見栄えだけの問題ではないのだろうと思います。(そもそもまず複数個体を採集できるかという「運」次第なところもあるのでしょうが)

まず第一に、「ヨシキリザメの常設展示」を目指す上で、おそらく複数個体飼育は必須となるはずです。(今回は先代「No.25」が死亡してから、約半年ほどの空白期間がありました)
そしてその先にいつかは「水槽内繁殖」という未来予想図もあるのではないだろうか……!と、これは完全に外野の勝手な妄想ではありますが。

一方で、今回も6月30日に展示開始された4匹のうち1匹は既に死亡してしまったそうです。
さらに未確認情報ではありますが、SNS等を見ていると本日(7月3日)もう1匹も体調不良により展示水槽から予備水槽に移されたとの話もあり、先ほども書きましたが決して容易い挑戦ではないのだろうと思います。

「複数個体飼育の難しさ」については、後述しますが本日たまたま遭遇した給餌シーンでもその一端を感じることとなりました。

2.幼魚からの育成

今回搬入されたのは、いずれも40cm~50cmほどのまだ小さな個体。
ヨシキリザメは胎生のサメで、一説によると母ザメから生まれた直後のサイズは30cm~50cm程度とのことです。(2016年に石川県・のとじま水族館で、短期間ですが母ザメの胎内から出てきた赤ちゃんザメ29匹(!)の飼育例があるようです)

能登島鰀目(えのめ)の定置網に、およそ2mのヨシキリザメがかかりました。 網から引き揚げたところ、残...

つまり今回搬入されたサメたちも、おそらくですが生後さほど経っていない幼魚たちなのでは、と思われます。

(少し引きで撮るとその小ささを実感します。あどけない!)

ヨシキリザメ自体は最大4m程度には成長するサメです。大型個体が水槽を泳ぐシーンもいつかぜひ見てみたいのですが、幼魚ならではの姿も見逃せません。(個人的には、前回2018年の展示開始の時には仙台を離れていたので、このサイズのヨシキリザメは今回初めて見ることができました!)

幼魚ならではの、しなやかで柔軟性のある泳ぎ。

飼育に関しても、大きすぎない個体の方が搬入や飼育の成功率が上がる、という傾向があるそうです。これくらいのサイズから飼育を開始してどれだけ安定的に長期飼育できるか、大きく育てることができるか、挑戦はまだまだ続きます。

3.マンボウとの混泳展示

昨年のレクチャー内でも今後のテーマとして掲げられていた「マンボウとの混泳」。

昨年12月に「No.25」のヨシキリザメが死亡した後、同じ水槽でマンボウが飼育展示されていたこともあり、現在はマンボウとの混泳展示になっています。

マンボウをバックに泳ぐヨシキリザメ。(マンボウが大きいので見切れてますが)

「マンボウとの混泳」については、展示そのものの意義云々というより以下は単なる感想です。
どうしてもマンボウの方が大きくて知名度もあるので

「あ!マンボウだ!……あとなんかサメだ。」
みたいな声がけっこう聞こえてきたりします。ヨシキリザメって、見た目的にはつくづく「ただのサメ」なんですよねぇ(苦笑)。

けれど今回、水槽前に佇んでいたら
「あ!ヨシキリザメ!久々だねえ!!」
というような声もちらほら聞こえてきて、ヨシキリザメの知名度が明らかに上がっていることを実感できます。先代「No.25」の偉業のインパクトなのかもしれないなぁ、となんだか嬉しくなってしまいました……!

ヨシキリザメ自体は世界中の海に広く分布する魚ではありますが、「あの気仙沼名物・フカヒレの原料だよ」ということも含めてここ宮城県の「地元展示」として認知が広がると嬉しいです。

■貴重な給餌シーンに遭遇!

今回、朝から水族館に行ってヨシキリザメを眺めていたところ、なんと給餌シーンに立ち会うことができました!

搬入直後で個体によってはまだしっかり餌付いていないこともあるらしく、飼育スタッフさん総出での給餌タイム。
その光景を目にして初めて知ったこと、気付いたこと、ちょっと書いておきたいと思います。(幸運にも、給餌タイムの後に担当スタッフの方と少しお話させていただくこともできました。写真掲載についても許可をいただいています)

水槽前でヨシキリザメを観察&撮影していたところ、バックヤードの扉が開いて飼育スタッフさんが3人登場。水槽前でなにやら打合せが始まりました。
バックヤード側と無線で会話しながら「わたしはこの子、○○さんはあの子……」と役割分担を決めています。手にはバインダーとボールペン。給餌の観察記録を取るのでしょうか。

水槽前に陣取り、ヨシキリザメを見守る飼育員さん。

やがて水面から、サメたちのエサが投入されます。
この日のエサはどうやら、魚の切り身のようです。(あとでお聞きしたところ、今回はイカナゴの切り身を与えたそうです。前日は匂いの強いオキアミを与えるなど、嗜好性や栄養面などを考えいろいろ試行錯誤されているそうです)

恐らく、いちばん小さな個体。
この個体が最もエサ食いがよく、水槽の底に落ちたエサを拾ってしっかり食べていました。アゴ先のロレンチーニ器官(感覚器)で味を確かめているように見えます。

パクパクと立て続けに数切れを口に。
観察する飼育員さんが、何切れ食べたかをチェックし、トランシーバーでバックヤードへ報告していました。

ぼくはこの光景を見ながら「あぁ!しっかり食べてる!よかったなぁ」と素人丸出しで喜んでいました。(と同時に、ヨシキリザメの給餌シーンを写真に撮れた自己満足に浸っていました)

するとその直後、水面からタモ網が入ってきて、水底に残ったエサを全て回収していきました。そしてその後、バックヤードから担当スタッフのOさんが登場。なぜかちょっと渋い顔。

ひと通り給餌作業が終わった後で声を掛けさせていただき、少しお話することができました。

・1個体はよく食べてる(ぼくが写真を撮った個体)
・ただし食べ過ぎも良くない
・残りの2個体はあまり口にできていないが、このままエサを残しておくとよく食べる1個体が過食になってしまうので回収せざるを得ない
・本当は給餌棒を使って1匹1匹に適正な量を与えたいけれど、まだ慣れていないので給餌棒を入れるとおびえてしまう

なるほど……!
このあたりも複数個体飼育の難しさなのだと、初めて知りました。漠然と「複数個体飼育の難しさ」と聞いて、個体同士の喧嘩みたいなことだけ想像していました。

そしてそれを防ぐために飼育スタッフさん総出で観察し、エサの種類・量・与え方etc. に工夫をこらす。そういった細やかな観察や試行錯誤のうえにヨシキリザメ展示が成り立っているのだな、ということを、改めて感じることができました。

魚好き・生き物好きなぼくにとって水族館は「生き物を観察できる場」です。
そしてそれと同時に、飼育スタッフの方々が生き物たちと向き合う姿や、「この生き物はこうやって展示したい・知ってもらいたい!」という思いを感じられるのが大好きなんです。

そんなことを改めて実感した光景でした。ありがとうございました。

■また地元でヨシキリザメを見ることができる喜び

前回の「873日」という飼育記録達成の余波で、今回もついつい長期飼育成功を期待してしまいます。そしてそれを裏付けるだけの経験値があるのは、現状うみの杜水族館だけと言っていいと思います。
けれど華々しい長期飼育記録も、1日1日の積み重ねなのだなぁ、と改めて感じたこの日の訪問でした。

これからもヨシキリザメたちの成長と仙台うみの杜水族館の挑戦を、陰ながら見続けていきたいと思います。(地元館なので「定期観察」しやすいのが本当にありがたいです)

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