昨年9月、2年半飼育していたフトアゴヒゲトカゲの「アゴちゃん」が亡くなってからほぼ1年が経ちました。
突然の異変から、エキゾチック・アニマルを診てくれる動物病院へ連れて行くまで。
入院~急死まで。そして、獣医の先生による原因の推測。
■続報が遅くなってしまいました。
当ブログを開設してから約1年半、累計のアクセス数が最も多いのが実はこの「アゴちゃん闘病記」の2つの記事なのです。
検索から飛んでくる方が多いのか、或いは気付かぬうちにSNS上でバズってでもいるのか、その理由はよく分からないのですが……。ともあれ、少しでも多くの方の目に止まっていただけるのであれば、多少なりとも「アゴちゃん」の墓前に報告できるような気がして、とてもありがたく思っています。
(当ブログはいちおう「水族館と魚とカメラ」がメインなので、それらの記事が伸びないことは内心ちょっと複雑でもあるのですが……苦笑)
一方で一年前にこの闘病記を書き上げたときに、
大学病院での剖検結果が分かったら、また続きを書かせていただきます。いまは「アゴちゃん」からの手紙を待つような気持ちで、剖検結果を待っています。
と書いたままになっていて、その後の続報を一向に書くことができずにいました。
もしかすると、この闘病記の続報を知りたくて何度も何度も当ブログにアクセスしてくださっている方もいるのかもしれなくて、ずっと申し訳なく思っていたのですが……。続きを書くためには先に書いた2つのブログを読み返さなければならず、そのたびに悲しみがフラッシュバックしてしまうので、正直ずっとこの話から逃げていました。
(昨年の秋~冬にかけて、写真展を開催したり小笠原旅行に行ったりとバタバタしていた、という理由もあるのですが……)
あれから1年がたち、生活環境も変わりいくらか冷静にこの件と向き合い、分析できるようにもなりましたので、その後の顛末を続報させていただければと思います。
■大学病院での剖検結果。
実際のところ、剖検の結果自体は「アゴちゃん」が亡くなってから1か月後くらいには知らされていました。以下、動物病院でいただいた報告書の抜粋です。(手書きの字は、獣医の先生の話を聞きながらぼくが書いたメモ書き。)
「動物名:アゴ」。(病院の診察券にも「**(苗字) アゴ」って書かれてました)。もっとカッコいい名前つけてあげとけばよかった。
まずは、循環器&呼吸器系等の組織所見。
「動脈内の細菌塊」は二次的なもので、その他も死後変化または二次的なものだろうとのことでしたが、大動脈の血管の壁が石灰化していたとのこと。最初に病院に持ち込んだ際の血液検査でも血中カルシウム濃度がかなり高めと言われており、そのこととも符合します。
続いて消化器系の所見。
顕著だったのは肝臓への脂肪の蓄積。後述の総合診断で詳しく書かれていますが、いわゆる脂肪肝に近い状態だったそうです。
その他の項目については、ほぼ特筆事項なし。
メス個体ということで当初気になっていた「卵詰まり」についても、解剖した結果まだ抱卵には至っていなかったとのことでした。
最後に、総合所見。
顕著だったのは動脈の石灰沈着と、肝臓の脂肪変性(重度)。いわゆる「動脈硬化」と「脂肪肝」の状態にあり、脂質代謝異常(人間で言えば「高脂血症」)が疑われる、との説明でした。
……アゴちゃん、血液ドロドロで脂肪肝だったのか……。
■今後に活かすならば。自分なりの分析と反省点。
端的に言ってしまえば「成人病」状態だったアゴちゃん。
人間の場合は「日ごろの不摂生がたたったんだ」と自己責任にしてしまえますが、アゴちゃんのような愛玩動物の場合、それは飼い主の責任です。
診断時に獣医の先生とも日ごろの飼育環境について話をし、「飼育環境・飼育方法自体は悪くない」とは言われていたものの、自分なりに気になった点を分析してみました。
「脂肪肝」状態ですから、一番に気になるのは食事のことです。
我が家でのアゴちゃんへの食事は、おおむね以下のような感じでした。
・野菜(小松菜 or 豆苗):ほぼ毎日(食べきる分だけ)
・人工飼料(某ショップオリジナル):ほぼ毎日(食べきる分だけ)
・昆虫(コオロギ):数日(3~4日)おき。M~Lサイズのコオロギを、1回5匹程度。
コオロギはショップから買ってきた日のみ活コオロギ、残りはカルシウム剤をまぶし冷凍し、必要な分だけ解凍して与えていました。
その他に、根菜(ニンジン、カボチャ等)や果実を、ときどき少しだけ与えていました。
■改善ポイント
獣医の先生いわく、人工飼料には高タンパクなものもあり常食させるかどうかは賛否両論、とのことでした。また、「アゴちゃん」を購入したお店にも訃報を報告に行ったところ「可愛がって飼育する人ほどエサをあげすぎて、逆に早死にさせがち」とも言われました。
獣医の先生からは「フトアゴは脂肪肝になる個体がけっこう多い傾向がある」との話もお聞きしました。レオパ(ヒョウモントカゲモドキ)などのように尾部に栄養を貯めこむ種類とは違い、肝臓に栄養を蓄積しやすいのかもしれませんし、遺伝的に脂質異常を起こしやすい個体がいるのかもしれません。
食事については、もっと「粗食」でもよかったのかも、と思っています。野菜中心で、人工フードや昆虫は週に1,2回程度、とか。大好物の昆虫を追いかける様子が可愛くて、ついつい多めにあげてしまいがちなのですが……。
我が家では幅75cmの熱帯魚用水槽を使用し、バスキング用の擬岩シェルターを設置していました。照明はUV(紫外線)ランプとバスキングランプを日中は照射し、ときどき窓越しに日光浴をさせていました。
■改善ポイント
運動不足が気になっていて、人が部屋にいる間はなるべくリビングで遊ばせていたのですが、それでも野生での暮らしと比べれば運動不足気味なのかな、とも思います。
次にまた飼育することがあれば、できるだけ高さのあるケージに流木を入れたりして、立体的な動きができる環境を用意してあげたいな、と思います。
大分の「うみたまご」でのフトアゴ展示。観葉植物や大きめの流木でレイアウトされ、木登りしたり日光浴したりしているフトアゴたちの姿が印象的でした。かなり立体的な動きもするのですね。
動物園や水族館での飼育スタイルを見学するのも、とても参考になりますね。
「肝臓の異常」ということで、食生活と運動不足以外に可能性のある要因として想定したのは遺伝的な体質の問題と、ある種の薬品類の影響。
遺伝的な要因については、これはもう仕方ないと割り切るしかないのですが……。
CB(人工繁殖)個体の場合は自然淘汰が働きにくく、生まれつき体質的な問題を抱えた個体を迎えてしまうこともあるのだと思います。(とはいえ、爬虫類・両生類の場合はワイルド個体の採集圧の影響を考えると「飼うならばCB個体」というのが個人的な基本方針なのですが。)
獣医の先生も「フトアゴには肝臓異常がけっこう多い」と言っていたので、そういう特徴を持った生き物だと思って飼育する(飽食させすぎないとか)ことかな、と思っています。
肝臓異常ということで、もうひとつ「薬品の影響」というのも考えました。我が家ではなにか特別な薬品やサプリ類を投与していた訳ではないですが、芳香剤だとか消臭剤だとか、気付かないところで人工的な薬品類を曝露させていた、ということもあるかもしれません(なるべく生き物のいない部屋で使用するよう、気をつけていたつもりですが)。
このあたり、魚と違って人間と同じ空気をダイレクトに呼吸する生き物なので、気の使い方も少し違うんだろうな、と思います。
これは飼育方法とは少し違いますが、一年前のこの件でぼくは初めて動物病院を受診しました。前の記事にも書いた通り、結果的に死んでしまったとはいえ、爬虫類がここまできちんとした診察・治療を受けられるということには本当に驚きました。(魚の場合は、自己診断でなんとかするのがほとんどですから……。)
もし、信頼できる(爬虫類を診察してくれる)動物病院が近くにあれば、健康なうちからたまに検診に連れて行くのも良いのかもしれません。
今回「アゴちゃん」の異常に気付いてからわずか4日であの世に旅立ったように、爬虫類は基本的に「体調不良をギリギリまで隠す」生き物です。フトアゴの場合はレントゲン検査や血液検査である程度のことも分かるようですし、アダルトサイズになったら一度検診に連れて行って、オスかメスか(メスならば体内に卵を持っていないか)だけでも知っておくと、いざというときちょっと安心かもです。
犬や猫の治療方法がある程度確立しているのって、臨床数が多くていろいろなデータが蓄積されているからだと思うんです。爬虫類のなかでは比較的メジャーなフトアゴですが、やっぱりまだまだこれから研究が進むところが多いと思うので、我が子のデータが少しでもケーススタディとして役に立てばな、と思います。
(保険が効かないので、診察代は安くないですけど……。今回の一連の件で、もう1匹フトアゴ購入できるくらい。)
診察対象に「爬虫類」を明記している動物病院って都内でもまだまだ少なくて、いま住んでいる仙台のような地方都市だとなおさらなのですが。
■いつかまた「2代目アゴちゃん」を迎える日のために。
いまはまだ、「もう一度フトアゴを飼おう」というところまで夫婦ともども至っていないのですが、それでもフトアゴヒゲトカゲは本当に素晴らしい生き物だと思います。淡水魚(熱帯魚)を中心にまぁまぁいろいろな生き物を飼ってきましたが、そのなかでもトップクラスに、一緒に暮らしていて楽しいペットだと断言できます。(間違いなく「家族の一員」でした)
一方で、次にまたフトアゴを飼うのならば今回の経験はきちんと踏まえて、思い当たる改善点があればしっかり飼育環境を整えなおしてから再挑戦したいし、そうするのが飼い主としての責任だな、とも思います。
「いつか誰かの役に立てばいいな」という気持ちも少しはありますが、それ以上に自分自身のために、一連のことをブログに残させてもらいました。ここまで読んでくださった方、お付き合いいただき本当にありがとうございます。
コメント
こんばんは、ブログからアゴちゃんをとても可愛がっておられたのが伝わりました。参考になるかわからないですが、うちは三歳半のふと顎に5日に一度しか餌を与えていません。水分はあたえてもいいと思います。毎日のようにお腹いっぱい食べさせても良い成長期は生後三ヶ月前後の個体の購入から縦の長さがほぼ変わらなくなる約一年で終わりと思います。またほかのブログによると、野菜であってもあげすぎは脂肪肝になるようです。私のふと顎も初めて体重をはかったときは太めでした。環境のせいか拒食させてしまったこともあります。爬虫類の飼育はなにが正解かわからず難しいことがたくさんありますよね、でもこんなに考えてあげているなら次の子を迎えることになってもきっと大丈夫だと思います。
まゆなさま
コメントいただき、また貴重な飼育データありがとうございます。やはり食べさせすぎが原因のひとつなのかな、と推測しています。
魚やらカエルやらほかの生物もいるので、しばらくは次の個体を迎える予定はないのですが、また飼育するときはよりよい環境で飼育できれば、と思っています。