<前回記事はこちら>
■クスコ空港到着。そしてまさかの「白タク疑惑」事件。。
成田~米国ヒューストン~リマという長い長い空の旅を経てペルーに到着し、リマ在住の日本人・T先輩にひと晩のお世話になった我々。リマから国内便でアンデスの玄関口・クスコ空港まで辿り着きました。ここからはいよいよ、南米初心者3人組での自力の旅となります!
(というのが「前回までのあらすじ」です)
3,000m級の山々に囲まれたクスコ空港に到着。風景に見惚れるのもそこそこに、出迎えの車を探します。
我々の目的地はここクスコから約60㎞先の田舎町・オリャンタイタンボ。実質ペルー初日の我々がこの距離を自力で移動できる自信などまるでなく、出国前にホテルを予約する際に「追加料金払うから、必ずクスコ空港まで迎えに来てね!絶対だよ!」ということを念押ししておりました。(メールの返信も貰っていた)
ところが……。
「えーと、ホテルXXX、ホテルXXX……」
「あれぇ、いないっすねぇ、、、」
「本当だねぇ。。。。」
飛行機を降りて到着ゲート前に並んでいる出迎えのプラカードを1つ1つ探しても、それらしき人物はまったく見つからず。
「もしかしたら空港の外で車で待ってるのかも……?」と空港ロビーや外のロータリーを眺めるも、それらしき車は見当たりません。というか、こんなところまで来る東洋人もそう何人もいないでしょうから、気付けばお互いにそれと分かりそうなものです。
空港到着から、ここまでおよそ15分。
同じ飛行機で到着した人々は、それぞれに出迎えを見つけ、或いはタクシーを捕まえてどんどん空港を去っていきます。徐々に人が減る空港ロビー。それと比例するように高まる不安感。
やがて、空港ロビーからほとんど出迎えの人がいなくなりました。そして同時に「ホテルからの出迎えは来ていない」ということを、改めて確信しました。
目的地・オリャンタイタンボまでは約60㎞。もちろん自力で歩ける距離ではありません。となると方法としては
① ホテルに電話して送迎を頼む
② タクシーで移動する
③ コレクティーボ(乗合バス)で移動する
④ 諦める のいずれか。
根性のないぼくとしては早々に④「諦める」を選びかけましたが、さすがに異国の地で同行女子2人を前にそんなことは言えません。3人で素早く、善後策を協議しました。(この協議中もとても緊張しました。なにしろ傍から見れば「路頭に迷ったアホな日本人観光客3人組」、格好のカモにしか見えません。なるべく人目につかないよう、空港の隅っこでゴショゴショ話し合いました)
短い協議の結果、とにかくまずタクシーを探すことに。
(①ホテルへの送迎:待ってたら2時間くらいかかるので一旦保留 ③コレクティーボ:主に現地の人向けの交通手段なので安全面が不安。そして乗り場がクスコ中心部なのでそこまでタクシー移動しなければいけない ④…こんなとこで諦めるな)
海外(特に南米やアフリカ)を旅慣れた方であれば、この時点でかなり心配になっている(或いは「なにやってんだバカ!」と言いたくなっている)のではないでしょうか。なにしろ、我々がペルーに旅立つほんの少し前には、ペルーの隣国・エクアドルでこんな悲しい事件がありましたから……。
我々もこの事件のことは知っていて、そしてどのガイドブックにも「南米ではとにかくタクシー強盗に気をつけろ!」と書いてありましたので「白タク(無認可のタクシー)だけは絶対に乗らない」ということは出発前から決めていました。
※補足:南米のタクシー事情、この記事が短くまとまってて分かりやすいです。基本的にメーターは無くて運賃は交渉次第だったり(これは認可ありのタクシーも同じ)、無認可のいわゆる「白タク」も違法というわけではなかったり、とにかく日本とは常識が違いすぎるんですね。
そこで「まずタクシーを探してみて、怪しいのしかいなかったらホテルに電話して送迎を呼ぼう」ということにして、最初に空港内のタクシーカウンターへ……誰もいない??!!
まさかの無人です。まぁ南米の地方空港なんて、発着時以外はそんなものでしょうか……。
気を取り直して(というかかなりドキドキしながら)タクシー乗り場へ。
既にほとんどの乗客が移動し終わったからでしょう。客待ちのタクシーは2台くらいしかいません。もう一度空港内に戻り、短めの作戦会議。
「あれに乗るしかないかな」
「ですね、、でも万が一、白タクだったら……」
そこで3人とも言葉をつぐみました。(やばいよね)と言いかけていたのは全員一緒だったと思います。
「とにかく一旦、交渉してみよう。それで少しでも危なそうだったらやめよう」
そう言って、3人の中でいちばん語学力があるKさん(英語圏へは留学経験あり、スペイン語も少し喋れる)が再びタクシー乗り場へ。女性の1人旅だと思われると良くないので、ぼくも一緒についていきます。Aさんは荷物番をしつつ、空港内のタクシーカウンターに係員が戻って来るのを待ち構えています。
2台並んだうちの、なるべく綺麗なほうの車に声をかけます。黒塗りのトヨタ製セダンで、日本でもよく見かけるような、見た限り小ぎれいなタクシーです。
以下はKさんの隣でただの用心棒(もしくはでくの坊)として立っていたぼくの適当なヒアリング(ほぼ身ぶり手ぶりを見て判断)。
幸い、スペイン語混じりながらほぼほぼ英語で話ができるようです。
「オリャンタイタンボまで行きたいんだけど、乗れる?」
「ああいいよ……ちょっと遠いな、値段は70ドルだ」
「わかった、あっちに同行者がいるからちょっと待ってて。ちなみにあなたたち、正式な(認可を受けた)タクシー??」
「もちろんだよ、ここ(空港ロータリー)は認可タクシーしか入れないんだ。なんなら許可証を見せるよ」
「わかった、ありがとう。ちょっと待ってて」
※空港の敷地内には、認可を受けて駐車料金を払ったタクシーしか入れない、らしい。逆に少しでも安く移動したい人は、空港の敷地の外でタクシーを捕まえます(但し白タクが多いらしい)
空港内のAさんの元に戻り、再び素早く作戦会議。
ちなみに運転手から告げられた70ドルは、「地球の歩き方」に書いてあった相場価格のほぼ倍の金額。
「70ドルだって。日本円だと8,000円くらいか」
「相場よりけっこう高いね。。でも仕方ないかなぁ。ケチって後で揉めたら怖いし」
「そうですね、少なくとも怪しい車ではなかったと思います(約束はできないけど)」
※60kmで8,000円なので日本の相場からすれば「安い」のですが、現地の相場からすると「高い」。この感覚の差がまた厄介なところ。
3度目の作戦会議終了。
ここまで来たら3人とも腹をくくりました。このタクシーを信じて乗り込むしかありません。
■すみません、「白タク疑惑編」もうちょっと続きます!
3人での作戦会議を終え、3人でタクシー乗り場へ。料金の70ドルを先に渡し、荷物を積んでもらいます。(高額なものを持っていると思われたくなかったので、一眼レフは大きなバックパックの奥にこっそりしまいました)
「あぁ、ちょっと待ってくれ。○▼※△☆▲※◎★●!?」(聞き取れず)
え、なんて言ってるの??と、思わずKさんの顔を見るぼくとAさん(語学力よわよわコンビ)。
Kさん「ん、、、ちょっとよく聞き取れなかったけど、なんか『俺たちはクスコの市街地専門だから、あとで別の車にチェンジするからね』みたいなこと言ってる……?」
(※このKさんのヒアリングはかなり正確だったことが後で判明しました。Kさんすげー)
な、なんだそれ???
かなり不穏な空気が流れました。けれどもう荷物はタクシーのトランクの中、70ドルも支払い済み。たいした反論もできず、そのままタクシーに乗り込みます。AさんとKさんは後部座席、自分は助手席へ。(最悪の事態も考えてしまい、ザックの上ポケットに入った十徳ナイフをお守りのように、ポケットの上から握りしめていました)
そうしてタクシーは空港を出発。
さすが世界のトヨタ車、乗り心地は快適です(しかしそれどころではない)。
車の中は無言。緊張感で張り詰めています。
初めて見るクスコの街並みが、車窓をどんどん流れていきます。
やがて、10分ほど走ったところでタクシーは街外れのさびれた路地裏へ。
「さぁ、ここで降りろ」
「??!!!!」
「え、ちょっと待って、どういうこと?」と英語で聞き返すKさん。
「言っただろ、俺たちはここからは進めないんだ。別の車を呼んであるから乗り換えてくれ」
このときは正直(もしや、終わったな……)と思いました。
(俺は撃ち殺されて、AさんとKさんは男たちにさらわれてどこかへ売り飛ばされるのかもしれない……)と、半分くらい本気でそういう最悪の結末が頭をよぎりました。
とりあえず言われるがままにタクシーを降ります。
トランクの荷物はドライバー氏が下ろしてくれました。そして傍らを見ると、これまで乗ってきたトヨタ製セダンとはかなり見劣りする、どこにも「TAXI」って書いてない、あちこち擦り傷のある感じの……つまりまぁまぁポンコツのワゴン車が1台。
「さぁ、こっちに乗るんだ。荷物は俺が積んどいてやる」
訳が分からないままそのポンコツカーに乗り込みます。運転手は気弱そうな若い青年です。
荷物を積み終わり、我々が車に乗り込んだところで、トヨタ車のドライバーがポンコツカーの運転手となにか話しています。そして数枚のドル札を手渡しました。
ようやく事情が読めてきました。
最初のドライバーは正規のタクシー業者としてこの仕事を請け負い、しかしオリャンタイタンボは遠すぎるためにこの青年ドライバーに下請けに出したのです。幾ら渡したのかは分かりませんが、2人の喋る空気感(一方がかなり高圧的)からすると相当ピンハネしているのではと思われます。まぁ要するに、これから乗るのは白タクです。我々があれだけ恐れていた白タクです。。。
そうしてポンコツ号は走り出しました。先ほどのトヨタ製セダンと比べると、だいぶ乗り心地がワイルドです、、、
おおよそカラクリは想像できましたし、こんどのドライバーは気弱で人の良さそうな青年です。けれどまだまだ油断は禁物、車内には引き続き緊張感が張り詰めていました。(なにしろ、我々はまだペルー2日目の南米初心者です)
そうこうするうちに車は都市部を抜け、周囲は見渡すかぎり草原に。山間部を抜ける広い2車線道路が、くねくねと地平線まで続いています。どうやらここから先はほとんど一本道、オリャンタイタンボへ向かう道のようです。
強盗するなら、わざわざこんなに遠くまで車を走らせたりしないよね……。
あーよかった、どうやら無事にオリャンタイタンボに辿り着ける(かもしれない)。
少しずつそんな確信が芽生えてきて、後部座席の2人と日本語で話しながら徐々にゆるむ車内の空気。外の景色を眺める余裕も少しずつ生まれてきました。これが間近で見るアンデスの山かぁ、綺麗だなぁ。(実際、本当に綺麗な山岳風景でした。写真を撮る余裕なんてなかったけど)
ところが、青年ドライバー氏の様子がなんだかおかしい。
というか、一心不乱にアクセルを踏み続けています。そういえば相当なスピードが出ていますし、さっきから車窓を流れる景色がどんどん速くなっています。
助手席からそっとスピードメーターを覗き見してみました……目盛りは「100」のちょっと手前くらい。あぁ時速100kmも出てないのかぁ……その割にはなんだかずいぶん速いなぁ……って、ここペルー!キロメートルじゃなくてマイル表記!
ってことは……時速150km近く出てるってこと??!!
念のため、だだっ広い道ですがハイウェイではありません。片側1車線の普通の道路です。草原をときどき牛が歩いています。
「ヘ、ヘイ兄ちゃん、プリーズ, モア, スロゥリィ……」
「???」
「すぴーど!だうん!!!」
「???」
どうやらその青年ドライバー氏は英語が一切喋れなかったようです。そしてぼくが何かを話しかけると、一生懸命聞こうとしてくれているのか、わざわざこっちを向いてくれます。
いや、前を見て走ってくれ、、、
仕方ない、言葉での説得は無理と察し、別の手段を考えます。そうだ、飛行機(リマ-クスコのLAN航空)で貰ったお菓子があったな……。
「お兄ちゃん、疲れたでしょ、よかったらこれ食べてよ!!」(もはやヤケクソの日本語)
そう言いながらチョコレートを手渡します。
「???
オー、(こっちを向きながら)グラシアス。」(ありがとう)
いや、だから前見て走れってば!!!
そうして白タク強盗疑惑とはまた別の恐怖におののきながら走ること約1時間、車はなんとか無事にオリャンタイタンボに辿り着きました。ちなみにずっとこんな運転だったので、後部座席の2人はしっかり車酔いと戦っていたようです……。
オリャンタイタンボの中心部。とてものどかなところでした。
青年ドライバー氏に「ここまで無事に運転してきてくれたお礼」を丁重に伝え、荷物を担いでホテルのフロントへ。チェックイン手続きをしながら「なぜ空港まで迎えに来なかったんだ!!」と文句を言いかけましたが、そんな元気すらありませんでした、、、(苦笑)
もちろん送迎料金は取り消してもらいましたけど。
白タク疑惑の緊張感と暴走タクシーの恐怖と車酔いで、3人ともちょっとグロッキー。部屋に荷物を置いて、しばしの休憩タイムです。
「先輩たちにいちおう言っときますけど、もしあのとき本当にタクシー強盗だったら『俺が犠牲になって2人を逃がすんだ』くらいは思ってたんですからね……」
「あー、はいはい、ありがとね!」「えらいえらい!」
(……絶対、信じてないやつだコレ。。。笑)
※冗談を交えながら書いてますけど、南米でのタクシー強盗は本当に多いようなので、くれぐれも気をつけてください。。。(いま冷静になって思えば、送迎が来ていなかった時点で「ホテルに電話して送迎を呼ぶ」がいちばん安全だったな……とちょっと反省しています)
■オリャンタイタンボを探検。これたぶんすごくいい町!
それぞれの部屋でしばし休み、なんとか元気を取り戻したところで夕食を兼ねてホテル周辺を散策。
オリャンタイタンボは小さな田舎町ですが、マチュピチュへの玄関口となっていることもあり、旅人に優しい雰囲気が随所に感じられます。歩いていてとても落ち着くところでした。
夕方の街角。
町のあちこちを、民族衣装を着た地元の人々が歩いています。(民芸品を行商している人も多いようでした)
ホテル近くの適当に見つけたレストランで夕食。市街中心部にはローカルなレストランやバーが何軒か軒を連ねています。
移動のトラブル続きでそんなに食欲もなく、軽めのプレートメニューで十分でした。ライスにポテト、焼いたバナナ、などなど。ペルーの山間部は、ジャガイモ料理が豊富です。
ホテルの部屋はこんな感じでとてもシンプル。(こちらは男子部屋、というかぼくの1人部屋)
冷え込む時期だったけど、毛布がとてもあたたかい。さすが毛糸織物の有名な国。そして壁に飾られた壁画がかわいいです。
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