2018.08.25_東京タワー水族館~『イルカすぎる淡水魚』?!ドルフィン・モルミルス

■今回の主役は、この魚!

「ドルフィン・モルミルス」(学名:Mormyrus sp.)。
“モルミルス”というのは、アフリカに分布する古代魚の仲間のこと。めちゃくちゃマイナーな一群だけど、観賞用としてそこそこ有名なのは象の鼻のように長く伸びた吻が特徴的な「エレファント・ノーズ」あたりでしょうか。

この「ドルフィン・モルミルス」は200種ほどいるモルミルスの仲間でも特に大型の魚(最大50cmくらい)。写真の通り、突き出した口先や流線型のボディがどこかイルカっぽいのでこの呼称がついたそうです。

■イルカっぽいのは見た目だけ…じゃない!!

今年に入って早くも4回目の東京タワー水族館。
今回は飼育スタッフさんとのちょっとした会話がきっかけで、これまであまりじっくり見ていなかった(失礼!)アフリカコーナーのモルミルス水槽にへばりついてました。
(いや、でも正直ほんとそれくらいマイナーな魚たちなのです…)

そこでふと目にしたのが、ドルフィン・モルミルスのまさかの行動!!

え、、、
これって完全に、ボールで遊んでる…??!

誇張ではなく、ほんとうにわが目を疑いました。
3枚目の写真なんか、きちんとおでこでボールをリフティングしてますよね……!
あまりにびっくりして一瞬、カメラを構えることも忘れ、なんとか撮ったのがこのブレブレの3枚の写真……。
そうこうするうちにドヤドヤと団体のお客様がやってきて、モルくん(あまりにキャラ立ちした魚だったので勝手に命名)はボール遊びをやめてしまいました。
(そう、モルミルスって物音に敏感で、シャイなんです。)

■ソボクナギモン。そもそも、魚って「遊ぶ」のか。

別の水槽の撮影に移動してからも、衝撃的なシーンを見た興奮はさめやらず。というか、長年水族館通いを趣味にしてきたけれど、その中でもトップクラスの衝撃だったかもしれません。

そもそも魚って「遊び」という行動をするのか。

イシダイあたりはボールを突つくショーをしたりするけれど、それは「ボールを所定の位置に運ぶとエサをもらえる」という条件付けされた行動。
ハリセンボンなんかは水面から飼育者めがけて水を吹きかけるというけれど(ぼくもやられたことがある)、それは「エサをねだる」故の行動ではないかと思われます。

今回のドルフィン・モルミルスを見ていると、
・条件付けされた行動ではない(そもそも近くに飼育員がいたわけではない)
・エサをねだる行動でもない(ボール遊びを誰かに見せるわけではなく、30分前に大好物のアカムシをたっぷりと与えられている)
・異性へのアピール等でもたぶんない(仕切られた隣に同種の個体がいるけれど、まったく無関心。おそらく見えてもいない)

ということで、これはなにも目的のない、純粋な「遊び行動」なのではないでしょうか。

ぼくは動物行動学の専門家ではなく、本で読んだか大学講義レベルの知識しかないけれど、従来は「高尚な知性を持つ人間だけが“遊び”という知的な行動を行う」なんて考えられていた時代があったはずです(人間が“進化の最上級形”みたいに見なされていた時代があったのです。今は違うけれど)。

その後「サルはほっとくと一人遊びする」「イルカも遊ぶらしい」「実はカラスでも……」なんて観察・研究結果が出てきて「哺乳類と一部の鳥類は“遊び”を行う」ということになっているんじゃないかと思うけど、果たして「魚が遊ぶ」という先行研究はあるのだろうか。

いずれにせよ、行動生物学的にも、とても興味深い事例なのではないかと思います!

(少なくとも「直立するレッサーパンダ」とか「サッカーの優勝国を予想するタコ」なんてのよりよっぽど面白い。コレ見るためだけに入場料1,080円払ってもいいレベル。
東京タワー水族館の中の人、もっと宣伝すべきですよコレ……。)

■あまりに衝撃的だったので、なんとかもう一度撮りたい…!

衝撃シーンを目の当たりにした興奮の一方で、マトモな写真がほとんど撮れなかったことへの後悔は高まるばかり。まして、閉館の噂すら出ている東京タワー水族館。今日を逃したら、この行動を人生で二度と観察できないかもしれません。
死ぬ間際に「ドルフィン・モルミルスのボール遊びシーン、全部ピンボケじゃったのう」なんて思いだしながら死ぬのは嫌です。

(なんとか、もう一度あのボール遊びを見せてくれないか)と、祈るような気持ちでモルミルスの水槽前にたたずむこと約1時間……。

ついに、再び「ボール遊び」を披露してくれました!!

うん、こんどは大丈夫!動きが早いし水槽も暗いからまだちょっとピント甘いけど、大丈夫大丈夫!よーしよーし、そのまま続けて!と、カメラマンにでもなった気分でモルミルス君の名演技を称えつつシャッターを切りまくりました。

撮り終わったころ、ちょうど顔見知りの飼育スタッフさんが近くを通りかかったので、ちょっと興奮ぎみに「こ、こ、こんなん撮れたんですけどっ!」と思わずカメラのモニター画面を披露。

「おおすごい!よくこのシーン撮れましたねぇ!」

(え、てことは“ボール遊び”自体は珍しくないのか??!)

「んー、こっちの子(同じ種類が2匹いる)はたまーにやってるみたいですねぇ。」

えーーー!
けっこう昔から、何回も通っているけれどまったく知らなかった!
ていうか、本当もっとアピールしたほうがいいっすよコレ!
「淡水ミニイルカ」とかのキャッチフレーズで売り出したほうがいいっすよコレ!
集客大事!!

(まぁ、シャイな魚なので観客が大挙して押し寄せたら披露してくれなそうだけど)

■これ以外のモルミルスたちも、要チェック!!!

ドルフィン・モルミルスが泳ぐのは、こんな水槽。4段構造になった水槽のいちばん下段にいます。ちょっと見づらくて見落としがちですが、ぜひご注目を!
(仕切られているのでそれほど広くはないですが、4段構造のおかげで実水量は相当ありそうです。オーバーフロー濾過でしっかり水質管理されていました)

上段には、いろんな種類のモルミルスが!
土管がまるで「モルミルス・マンション」になってます。

モルミルス界でいちばんメジャーな「エレファント・ノーズ」。
モルミルスの仲間は本当に痩せやすくて、ペットショップで飼ってきても長生きしないことも多いんだけど、ここ東京タワー水族館の個体は、どの魚もプリップリに肥えた美個体!
(その秘訣を聞くと「毎日2回、たっぷり大好物のアカムシをあげてるんです!」と、ちょっと照れながらも誇らしげな顔で教えてくれました。本当に魚が大好きな飼育員さんたちです)

(特にエサやりタイムになると、隠れていたモルミルスたちが一斉にキビキビと泳ぎだす光景は、本当に一見の価値ありです!)

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