今春オープンの「スマートアクアリウム静岡」が予想以上に楽しかった!

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今年4月、静岡駅前に新しい水族館「スマートアクアリウム静岡」がオープンしました!

静岡県といえば、国内でも有数の水族館激戦区。
特に伊豆エリアを中心に、少なく数えても5ヶ所以上、細かく数えれば10ヶ所近くがひとつの県内に散在しています。

そんな ”水族館王国” にあって、「駅前」「都市型」の「スタイリッシュな水族館」という謳い文句。静岡県内の既存の水族館はどこも海沿いに立地した施設ですので、これはちょっと新機軸です。

先に結論から言うと

「『映え系』の皮をかぶった、実は知的好奇心刺激スポット!」

というのが正直な感想でした!

まぁ、昨年訪問した神戸の「átoa」も個人的にはかなり(予想外に)満喫しましたしね。
※átoaとスマートアクアリウム静岡、どちらも同じ株式会社アクアメントが運営しています。

神戸に2021年10月末オープンの都市型水族館「átoa」!ひとあし早く、プレオープンイベントに行ってきました!

というわけで以下、訪問レポです。

■まずは静岡へ。

6月初旬。
別件の水族館遠征とも合わせ、新幹線を乗り継いで静岡駅へ。
夕食は「さわやか」でげんこつハンバーグを、という目論見はもろくも狂い、現地に着いたのはそこそこ遅い時間。

静岡駅を出てまず目に飛び込んできたのがこちら「松坂屋 静岡店」。
じつはこのデパートの7階フロアに「スマートアクアリウム静岡」が立地しています。

この日は場所だけ確認して、早々に近場のホテルへチェックイン。
※この後、東海大学海洋科学博物館 ⇒ スマートアクアリウム静岡 ⇒ あわしまマリンパーク という2日間の水族館ハシゴ旅となりました。

翌日夕刻、改めましての初訪問!
比較的早い時間に閉館しがちな地方園館にあって、20時までという営業時間がありがたいですね。(東海大博物館を日中ガッツリ満喫してから、余裕でハシゴできました)
(あと「さわやか」のげんこつハンバーグも途中で美味しくいただきました)

おお、すごい、本当にデパートの中だ……。
駅の地下通路から松坂屋デパートに入り、そこからエレベーターに乗って7階へ。

エントランス。
スタイリッシュでスマートな意匠です。

チケット購入。
ニシキテグリ&サラサハタがモチーフです。(東海大博物館の入り口の「のぼり」もニシキテグリデザインでして、静岡市内 両館を挙げての「テグリ推し」にちょっと笑いました)

■いざ入館!

チケット改札をくぐり、いざ館内へ!

まず最初に出迎えてくれるのが、こちらの水槽です。

静岡市内の景勝地「三保の松原」を模したと思われる、水深浅めの半水面水槽。

そしてここを泳ぐのが、なんとマアジ。
(と同時に、átoaと同様「すべての水槽にちゃんと魚名板あるよ!」ということにも、ここでふれておきます)

ぱっと見は淡水魚水槽のようなレイアウトで、渓流魚とかが似合いそう。
そこを海水魚のマアジが泳ぐということに違和感を覚えそうにもなりましたが、でもよくよく考えると、静岡の海岸線ってこんな風に「断崖絶壁に松の木が生えて、その下がすぐ海」みたいな光景が多いんですよね~。(特に伊豆)
(※これ、翌日あわしまマリンパークを散策しててふと気付いたのです)

続いてこちらの水槽。

うわ~~、めっちゃ「映え」!近未来感!
水槽も、なんならCGかと思うくらいスタイリッシュに収まってる!

と圧倒されつつも、これもまた「átoa」と共通する特徴として、水槽内の照明は自然な色合いで、決して生き物の観察/観賞を妨げないのですよね。
これは「アクアメント系列」の都市型水族館に共通する演出手法なのかもしれません。

と、ここで、フロアマップを発見。

おぉ……けっこう奥行きがあるな。
全5エリアのうち、今はまだ最初の『眺める』エリアです。

入館したのが18時過ぎ、閉館時間は20時。時間配分が心配になり、一旦先を急ぎます。

■2.『繋がる』エリア。

2番目の『繋がる』エリアに足を踏み入れた瞬間、ちょっと息を吞みました。

広がっていたのは、こんな空間。

スクエア型の水槽を両脇に配し、本の見開きを模した大きな解説パネルが広がります。
水槽よりも解説パネルが大きい、大胆な空間デザイン!

解説パネルに書かれている内容も、実はなかなかに専門的です。
(1枚目:アマゾン川の「黒い川/白い川」
2枚目:アフリカの湖産シクリッド/アマゾン川のナマズたち
3枚目:古代魚~肺魚とポリプテルス)

情報量もかなり多いです。
かといってめちゃくちゃ高度な内容ではなく、楽しみながら学べる内容です。ここの解説パネル、全部しっかり読んだらかなり博識になれると思います。

これをあえて水槽より大きく「大人の背丈ほどもある壁一面の解説パネル」にして、「水槽周りは暗く/解説パネルには照明を当てる」という演出がとても好きです。

水槽がそれほど大きくない、というのにも、それなりの意図を感じました。
というのも、泳いでいるのはこんな小さな魚たち。

南米産の小型シクリッド、アピストグラマ・アガシジィ。
水草で美しくレイアウトされた水槽ではなく、現地の環境を再現したとろりと茶色い水(ブラックウォーター)で飼育されていました。いい雰囲気!

少し話は反れますが、この「アマゾンの黒い川と白い川」というテーマ、実はかつて神戸/須磨海浜水族園の「アマゾン館」にそのまんまのテーマで展示されていたのですよね。(当時のスマスイの管理会社が、スマートアクアリウムとかátoaの母体の㈱アクアメントです)

パール・グーラミィ。
流木を立体的に組んだレイアウトの中を、自由自在に泳いでいました。まだ若い個体ですが、これから成長して婚姻色を出したりしたら見応えがありそうです!

こういう小さい(数センチ~10数センチ程度の)魚たちって、あまり大きな水槽に入れてしまうと観察しづらいのですよね。
”世界の大河”的な雰囲気を見せるのではなく、あくまで「魚たちの特徴/行動を見せる」という展示テーマを考えると、こういう風に小さめの水槽だと見やすくてありがたいです。
(小さいといっても50㎝四方くらいのスクエア水槽なので、一般家庭でこれらの魚を飼うには十分なサイズの水槽です)

※一部のシクリッドとかブラックゴーストあたりは成長とともに縄張りを主張するので、この水槽サイズだと少し手狭になるかな??なんて余計なことも思ったのですが、それも含め今後の変遷が楽しみです。

正直言うと、エントランスのいくつかの水槽を見た段階では「あぁ~、映えだね~~」なんて思ってややスルーしてしまったのですが。
この2つめの『繋がる』エリアの展示を見て(ん!ここはただの『映え水族館』じゃないぞ!)ということを体感しました。
(そして少し順路を戻って、スルーした水槽を再チェックしに行きました 笑)

■3.『みつける』エリア。

マニア心をくすぐる『繋がる』エリア。

そこを抜けると、お次はこんな空間へ。

3つ目の展示エリア、『みつける(Discovery)』エリアです。

カフェ風な装飾に、オープンな水槽がいくつか。くつろげる展示エリアってことかなぁ。

そう思って反対側の壁面を見ると、こんな感じ。

部屋の一面の壁が、すべて本棚です!(真ん中に大型モニターが設置されていますが)

でもこれってどうせ、いわゆる、博物館や研究室的な雰囲気を出すための装飾でしょ、「スタイリッシュな映え空間」の演出の一環かな……。

なーんてことを思いながら本棚に近づいて、そして『書籍はお手にとってご利用いただけます』という注意書きに目が留まります。ええー!!(歓喜)

書籍はテーマごとに並んでいて、児童書だけではなく専門書までかなり充実しています。
最近刊行された話題の本もあれば、昔から読まれている定番本もあり、はっきり言ってむしろ大人向けなラインナップ。

よくよく見れば、このエリアの水槽周りにはそれぞれテーブル&チェアが備えられています。かなり居心地が良さそうです。

「美しくレイアウトされた水槽を眺めながら、魚や海や自然に関する本を読んでゆったり過ごす」というかなり理想的な休日時間を、ここでなら過ごせそうです。
(はっきり言って1日ずっといられそうだけど、飲食禁止・再入場禁止なのでそこだけツラい 笑)

今回は短い時間の訪問だったけれど、もし近くに住んでいたら、休日ごとにここで読書タイムを満喫してしまいそうです。
本当にいいなぁ。個人的に、館内でいちばん心に刺さったのはここのエリアです。

そしてその横の小部屋は、少しテイストの違うこんな空間。

白を基調にした研究室風の小部屋。
部屋中央のドーム型水槽がかろうじて水族館要素を主張していますが(笑)、壁面にはぐるりと各種標本や理化学機器が。特に動物の骨格標本が多いです。

これもまた単なる装飾なのかなぁと思ったら、一部の標本は実際に手に持って眺められるようになっているようです。

そして、こんな体感型の展示もありました。

透明なガラス張りの標本ケースに収められた骨格標本たち。

パッと見るとただそれだけなのですが、傍らにホワイトボード用のマーカーペンが用意されています。もう一度よくよく展示を見ると、どうやらこのガラス面にペンで自由に書き込んでいいようなのです。
※写真は「骨格標本からその動物の姿を想像して描いてみよう」というテーマ。

空間のスタイリッシュさについ惑わされそうになりますが、実は1つ1つの展示がこんな風にしっかり学べるよう工夫されていることに気付きます。

新旧問わず、水族館に行くと標本類や書籍を並べて「博物館/研究所っぽい」雰囲気を醸し出している空間ってよく目にするのですが。そのなかで、実際にその書籍や標本を手に取って読む/眺めることができる園館って、実はけっこう少ないように思います。(コロナ対策云々は別として。)

魚類の透明骨格標本あたりは見た目も綺麗で、アレをただズラッと並べるだけで解説書きとかなくても「なんとなくスタイリッシュかつ知的な雰囲気」を、雰囲気だけは醸成できちゃう、みたいなところもあって。

そういうのに比べたら、よっぽどこっちの方が知的好奇心を刺激されるじゃん、全然「『映え』一辺倒」の水族館なんかじゃないじゃん、とすら、思ってしまったのでした。

■4.『装う』エリア。

引きつづき、順路を先に進みます。

入り口の館名プレートに反射する、なにやらサイケデリックな彩り。

でーん。

床面と壁面がニシキテグリ柄!!!

もしもここがRPGのダンジョンだったら、間違いなく巨大ニシキテグリのモンスターがラスボスだと思います。(特に2枚目奥に描かれた真っ赤な目が怖い 笑)

と、ついついそのぶっとんだ内装に目が行ってしまうのですが、水槽的には実はここがいちばん数が多く、見ごたえのあるエリアかもしれません。

(ちなみにこのエリアの入り口、床にニシキテグリが主役のムービーが投影されています。「テグリのダンジョン」感を満喫したい方はお見逃しなく 笑)

『装う』というエリアテーマのとおり、魚たちの模様や色彩のおもしろさやその意味についてフォーカスしたエリア。
展示されている魚たちも、色彩が美しかったり模様がおもしろかったりするものが多いです。(海水魚/淡水魚の両方とも展示されています)

サラサゴンベ。
更紗の名のとおり美しい模様と、ゴンベの仲間の特徴である背びれ先端のフサフサまでしっかり観察できます。

そして撮ってみて分かったこと。とにかく写真が撮りやすい。
※この写真だけ撮影データを書き込んでみました。
ISO280って、水族館のお魚撮影でそうそう使う設定じゃないです(笑)

水槽が明るくて(それぞれの水槽の魚種に合わせて、照明の明暗はかなり違いますが)、そして先ほども書きましたが「水槽がデカすぎない」。
撮りやすいということはつまり見やすいということで、つくづく、生き物をしっかり見せたい水族館なんだろうな、と思いました。

※帰り道、同行した家族におそるおそるこの水族館の感想を聞いたら「うん、魚が見やすいし撮りやすくて好き。」というド直球な感想が返ってきました(笑)

トサヒメコダイ。
実は初めて見た魚でした。(2017年に新種記載された魚だそうです)

土佐と名前はつくものの、目の前の駿河湾にも分布する魚のようです。
あまり「地元感」は出してないものの、さりげなく ”地魚” も多めの水族館で、そういうところもよきです。(静岡県、どこも”地魚” 感のある水族館ばかりなのですが 笑)

そしてこのエリアのメインキャラともいえるニシキテグリ。
オープン直後だからか、まだちょっと小さめの個体でした。すくすく育て~~。

■5.『和む』エリア。

いよいよ最終エリア。

ここ最近オープン/リニューアルした水族館にはたいてい配置されている、「和」「わびさび」を基調とした空間。(インバウンド需要向けなんでしょうかね)

空間の雰囲気もさることながら、水槽もしっかり作りこまれています。

地元の淡水魚をテーマにしたと思われる3水槽。
(奥から、ウナギ/オイカワ・カワムツ/サワガニ)

ウナギ。
浜松/浜名湖を擁するウナギの産地、静岡県。地元の魚として取りあげられるのも納得です。魚名板にはウナギ養殖や近年の資源量減少についても触れられていました。

こちらはグッピー水槽。
オスだけを選別して入れているようです。(水槽内でむやみに殖えすぎないためかと。)

水盆状の水槽で、スイレンの仲間が植えられていて「グッピーを水面側から観賞する」というあまりない視点で見せてくれる水槽です。

■エピローグ~正統派なメッセージ~

そんなこんなで、20時の閉館時間まで約2時間弱の滞在となりました。

実際には館内を多少行ったり来たりしたのですが、それでもカメラ持って撮影を楽しみながらだとギリギリちょうどいいか少し足りないくらいの滞在時間。
さっと見るなら1時間~1時間半、しっかり見る&撮る方なら2時間半~3時間コースというところでしょうか。

最後の最後、出口手前のメッセージがとてもよくて、ちょっと読みふけってしまいました。

「命ある生き物を展示することの意味」への言及。

そして「ぜひ、他の水族館や自然フィールドにも足を運んでみてください」という一文が印象に残りました。
特に「他の水族館にも行ってみて」というメッセージは、なかなか目にしないですよね。すごい。

ちょっとだけ雑感。

この水族館を「最近流行りの『映え系』都市型アクアリウム」とくくってしまうのは、なんだかちょっともったいないな

それが、観覧後の率直な感想でした。

※正直、訪問前は(は?静岡駅前のデパートに水族館??三保にあんな立派な水族館あるのに??)くらいに思っていたのですが(笑)。
※と同時に、今回は「東海大学海洋科学博物館」「あわしまマリンパーク」という個人的に大好きな水族館とのハシゴとなり、そんな中でも遜色なく「楽しかった!」と思えたのは新鮮な驚きでした。(もちろん規模や展示の密度はぜんぜん違うのですが)

よく言われがちな「癒し」や「映え」といった要素にとどまらず、生き物の姿や生態、人間との関わり方についてしっかり学べる、知的好奇心を満たしてくれる水族館だと思います。
(光や映像の演出は、既存のいくつかの水族館と比べたらむしろ少ないくらい。)

もちろん、館内はすっきりスタイリッシュで、内装も凝っていて、照明もLEDらしくパキッと鮮明なんですけどね。(そりゃあ、令和の世に新しくできた水族館だから、大なり小なりそうなりますよね)

もう少しだけ、余計なことを言ってしまうと。

これから先の水族館って、
「海獣展示はなかなかハードルが高い」
「予算的に、大規模施設/水槽も導入しづらい」
「一方で収益性/公益性はより厳しく求められる」
みたいなことって、多分ありそうで。

そう考えると、こういうタイプのいわゆる「都市型水族館」ってきっと、今後はさらに増えてくるのではと思います。

それらをすべて
「どこもかしこも『映え系』じゃん」
「小さくて似たような魚ばっかりじゃん」
と十把ひと絡げにしてしまうのか、それともそれぞれの施設の細かい違いを楽しむか。

そのあたりは施設側だけじゃなく、見る側の意識次第なのかもしれませんね。

(そしてなればこそ!
「あぁ魚だね」「こっちも魚だね」で終わらせるのではなく!
今こそ「水族館のお魚展示」にもっともっと注目しようではないか!!!なぁんて。 笑)

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写真素材のピクスタ

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コメント

  1. 水族館好き より:

    はじめまして!私も水族館撮影が趣味です。
    D750を使っています。参考までに、

    水族館撮影でD500に使っているレンズを、もしよろしければ教えてください!

    • 管理人 より:

      コメントいただきありがとうございます!

      レンズは何本かをメインで使っていて、最近は広角と単焦点マクロレンズの2本は必ず持ち歩いています。

      ご参考になるか分かりませんが、最近使っているレンズについて近日中にブログ記事で紹介したいと思います。もしよろしければ少しお待ちください!

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