6月・7月と出張やら家庭の用事やらで東京に行く機会が何度かあって、久々に東京の水族館を巡ってきました。
もちろん、平日の日中は定時過ぎまでホテルの部屋やら新幹線の車内やらできちんと仕事をしておりまして、ノートPCの電源を落としてふと時計を見ると19時過ぎ。
「あ~、都内ならこの時間でもまだ水族館に行けるのかぁ。」ということに気付いてしまいました(笑)。サマーシーズンなので、19時半とかに入館してもそこそこゆっくりできるのですね。都会ってスゴい!
仙台に戻ってきて3カ月、久々の東京水族館巡りでなんとなく感じたことを、ちょっと語ってみたいと思います。
■Night-1:アクアパーク品川
某月某日。
この日は品川で人と会う予定があったので、そのままひとりで品川駅前の「アクアパーク品川」へ。
プロジェクション・マッピングや演出の凝ったイルカショーが有名な水族館だけれど、最奥の「アクアジャングル」は割と静かに楽しむことができます。
……って書こうと思ったら、ここもばっちり映像の演出がされているのだね。水槽の中の生き物に集中していたので、写真見て初めて気付きました。
青系の照明で演出された水中感のあるトンネル水槽。そこを悠々と泳ぎ回る、大型のサメ・エイの仲間たち。ノコギリエイだとかナンヨウマンタだとか、ほかの水族館ではあまり見られないサメ・エイたちをふんだんに見ることができる水族館でもあるのです。
中層をふわふわと浮遊するようにホバリングするタマカイ。存在感のある大型魚たちが手の届きそうなところを届いていて、なんだか魚たちと向き合っているような気分になる水族館です。1m~2mくらいの”ちょうどいい”サイズの魚たちが多いのですよねー。
さりげなく、博物館チックな展示も。透明骨格標本が青系の照明に照らされてクールに陳列されていて、博物館というよりはアートギャラリー的なイメージかなぁ。
写真をズラッと並べてみて改めて再確認したんだけど、アクアパーク品川って全体に照明が「青い」んですよねー。
これだけ偏った色合いの照明だと、カメラの設定をどうやっても魚たちの自然な体色をとらえることは難しくて、ここはこういう光の演出を楽しむ場所なのだと割り切ることにしています。
■Night-2:すみだ水族館
某月某日。
この日は、泊まっていたホテルからもほど近い「すみだ水族館」へ。
相変わらず美しい、「自然水景」コーナーのネイチャー・アクアリウム(水草水槽)。
故・天野社長が亡くなってもう4年経ちますが、今でもADAさんによって綺麗に維持されています。このコーナーだけでもずっと見ていられるんだよなぁ。
水景の美しさももちろんですが、個々の魚たちが美しい色を出して活き活きと泳いでいる姿が、見ていて本当に幸せになるんですよねぇ。
小水槽が並ぶ「アクア・ギャラリー」。夏休みとはいえ平日の夜は空いていて、魚たちの個性とじっくり向き合うことができました。
江戸金魚たちのコーナーは、夏らしくお祭りっぽい雰囲気。
この日は友人と来ていたので、隣接するカフェで水族館オリジナルカクテル買って立ち飲みしながら、閉館ギリギリまでまったりさせてもらいました。
このフロアにある図書スペース、いつも親子連れで混んでいて入ったことなかったんだけど、生物の写真集とか図鑑とか面白い本がたくさんあるんですね。すみだには何度も行っていたけど、初めて気づきました。
ペンギンプールを見下ろすキッズ・スペース、ペンギンのぬいぐるみが群れているってのも知らなかったなぁ(笑)。
▼ひとりで行くもよし、そして「デートで行くべき水族館」No.1!(当社調べ)
すみだ水族館の神髄はこの「アフター・ファイブに難しいこと考えずまったりできる空間」じゃないかなぁ、と思います。
特に展示後半は広々としたフロアにソファやベンチがふんだんに配置されていて、そして「順路がはっきり決まってない」というのも実はポイントなのだと思います。ペンギンを間近で眺めるもよし、夜店のように賑やかに演出された金魚たちを見て童心に返るもよし、大水槽を見上げて魚たちの迫力に浸るもよし。
(ウミキノコのポリプを眺めつづける、という楽しみ方も、きっとアリ、のはず……)
平日でも21時まで営業しているので、仕事がちょっと早く終わった日にひとりでふらっと立ち寄ってくつろげる、というのは、都会暮らしならではの贅沢なひととき。(年間パスポート持っていれば、短時間でもふらっと寄り道しやすくてなお良し!だと思います)
そして、閉館時間になって水族館を出ればライトアップされたスカイツリーがそびえています。23時くらいまでは「ソラマチ」内のレストランも営業しているので、水族館を出た後にちょっと贅沢な外食をすることだって可能です。
都心からはちょっと外れた立地ながら、2つの駅が「ソラマチ」に直結していて、アクセス性も最高。
これは完全に余談ですが、ふだん「魚好き」「水族館好き」を自称していると、まったく恋愛感情を抜きにして「こんど水族館いきましょうよー!」というお誘いを受けることが時々あります(「映画に行こう」「ドライブに行こう」などと誘われることはまずないので、そこは察してください)。
友人も含めて異性と水族館に行くことを拡大解釈で「水族館デート」と称することが許されるならば、ぼくが過去に最も「水族館デート」に利用したのは、恐らくすみだ水族館です。
チャラすぎず洗練された水槽群、ゆったりとした館内レイアウトという水族館自体のコンセプトもさながら、水族館を出てからもしばらくのあいだ「非日常感」が持続するという立地的な強みも、すみだが実にデート向きの水族館だなぁ、と思う要素のひとつです。
■Night-3:サンシャイン水族館
某月某日。
この日は、これまた予定にはなかったものの急遽、サンシャイン水族館へ。
仙台へ戻る東北新幹線「はやぶさ」の最終列車は、大宮駅を22時に出発。そこから逆算すると……おお、21時の閉館時間ギリギリまでサンシャイン水族館にいられるではないか。という計算です。
言わずとしれた(?)「水塊」展示のご本尊的水槽、「サンシャイン・ラグーン」。
ずっと水底近くでじっとしていたサラサハタが、急に体をくねらせて水槽中央へ。そんな魚たちの躍動感が際立つのが、「水塊」ってやつの真の魅力じゃないかと勝手に思っています。
こちらはヨスジフエダイ(だよね?)。
群れて泳ぐ魚も、水槽にぐっと寄ることで「個」を観察できる。逆に引きで眺めることで、群泳美を楽しむことだってもちろんできる。
大きすぎず小さすぎず、ちょうどよく設計された水槽サイズなのだなぁと思います。
上階にあがると、今度は淡水性の熱帯魚たちが。
すみだ水族館の「自然水景」とはまた少し趣の異なる、現地の小川を覗き込んでいるような気持ちになる水槽たち。赤系の水草が映える自然な色合いの照明も好みです。
南米産、東南アジア産、アフリカ産と大陸ごとに水槽が別になっていて、厳密にチェックした訳ではないけれど植えられている水草も産地を揃えているような。こういうさりげないこだわりにグッと来たりします。
▼そして今回どうしてもお目にかかりたかったのが、こちらの珍魚!
ゾウギンザメ。
2019年3月に突如として展示公開された、日本でたぶんここでしか見ることのできない珍しい深海魚。展示開始当初は「すぐに死んでしまうのでは?」と心配されていたけれど、半年以上たった今でも元気に泳いでいました。
飼育開始後、しばらくしてなんと産卵したとのことで、隣の小水槽で産まれた卵が展示されていました。有精卵なのかな??孵化するといいなぁ。
▼「いきものトーク」も開催中!
入館後にラグーン水槽の前でくつろいでいると、すぐそばのスペースで水族館スタッフさんによるトークイベント「いきものトーク」が始まりました。これまで残念ながらなかなかイベント時間に水族館に行けることがなくて、今回初めて聴くことができたのですが、(ほぼ)毎日いろいろなテーマの話を聴くことができるそうで、これは近くに住んでいたら、毎日でも通ってしまいたくなるなぁ……。
この日のテーマは設備担当スタッフさんによる、水族館で使う海水の話。サンシャイン水族館で使う海水は、黒潮流域の八丈島から船で運ばれてくるのだとか。高層ビルの中にあるという立地ならではの揚水の工夫だとか、興味深い話をたくさん聞くことができました。
■「今日は、どこの水族館に行こう?」
アクアパーク品川、すみだ、サンシャイン。
どこも「都会っぽくてオシャレだねー!」でくくってしまいそうになるけれど、こうやって並べると案外と違いを感じるなー、と思います。(感じない??)
仕事が普段より少し早く終わって、ちょっと時間の空いた東京の夜。「今日はどこの水族館に行こう」なんて悩めるのは、ほんと、最高に贅沢だよなーーー。
- 美しい水草の茂みを活き活きと泳ぐ魚たちに癒されたいから、すみだ水族館。
- 自然のラグーンの海中にいるような疑似体験をしたいから、サンシャイン。
- 光の演出の中で輝く”ちょっとよそいき”な魚たちの姿を見たいから、アクアパーク品川
或いは、
- 気のおけない友人と水槽眺めながら落ち着いて過ごしたいから、すみだ水族館。
- マニア仲間と魚たち1種類1種類について語り合いたいから、サンシャイン。
- 憧れのあの人と都会の夜の雰囲気に酔いしれたいから、アクアパーク品川。
みたいなこと。都内で言えば、ほかにも葛西もしながわも板橋ねったいかんも足立区生物園も井の頭/水生物館もありますし。
■「選択肢がある」っていうことの尊さ。
環境教育施設、エンタメ施設、研究施設、デートスポット、生き物とのふれあいの場、非日常の癒しの空間、野生生物の保護施設……。
水族館にはいろんな側面があって、どれか一つが正解じゃないと思っています。全ての要素をバランスよく取り込むことは現実的には難しいし、公営の水族館と民営の水族館で立ち位置や求められる役割も違っていたりするし、みんな違ってみんないい。
「水族館に行こう!」と思うとほぼ一択か二択になってしまう地方都市に暮らしていると、この「選択肢がある」ということの尊さをひしひしと実感します。
最近は、「アートアクアリウム」とか、イオンタウン内のカフェ型水族館だったりとか、映像型の展示だったりとか、これまでにない形態の水族館/水槽展示施設もいろいろと生まれています。「魚/生物の魅せ方の新しいスタイル」を提唱するという意味ではそれも興味深いし、実際にこの目で見てもいないのに否定してはいけないのかな、と思います。
※ただ、「そこまで言うなら常設展示で勝負しろや!!」みたいなことはちょっと思う。常設の水族館はどこも、繁忙期も閑散期も、ブームの時もブームが去った時も展示を維持する努力を日々続けているのだから。
「水族館なんてどこも同じでしょ?」なんて言わないで、
それから「既存の水族館観」みたいなものにもとらわれすぎないで、
日本の水族館の多様性と進化を、これからもこの目と心で感じ取って楽しんでいけたらな、と思います。(なんか無理やり纏めてみるけど。)