「可愛い」と「美味しそう」のはざま~シキシマハナダイを食べてみた

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4月某日。

某水族館員K氏から、「珍しい魚を食いませんか??」とLINEでメッセージが。

なにそれ?!食べる食べる!!

という訳で、互いの仕事後に都内某所の秘密基地に集合。
(ちなみに、水族館で飼ってた魚を食う話じゃないですよ)

■保冷バッグから出てきたのは・・・!

先に到着した私は、ビールを冷やし、白飯を炊き……。
そうこうするうちに、K氏がドアフォンを鳴らし、秘密基地に入ってきた。

……君は、これからフットサルにでも行くのかい??とでも言いたくなるような軽装で。

ちょっとちょっと、「珍しい魚」とやらは、いったいどこに??
するとK氏、背中に背負ったバックパックから保冷バッグを取り出し……。

「これっす!!」

……なんていうかこう、包装の仕方が、ね。食材というよりは、サンプル……。
まぁ仕方ない、K氏も私も、某おサカナ系学部出身なのだ。

■どう見ても、「可愛い>美味しそう」。

この魚の名前は「シキシマハナダイ」。(学名:Callanthias japonicus

属名の「Callanthias」とはギリシャ語で「美しい魚」に由来するそうで、実際、本当に惚れ惚れするくらい美しい魚だ。

(K氏と2人、その美しい魚体に、うっとり惚れ惚れ。
右下の出刃包丁が、なんとも生々しいですが……汗)

なんでも、K氏の友人が伊豆方面に釣りに行き、そのおこぼれにあずかった、とのこと。

実際、このシキシマハナダイは、やや深めの岩礁域に住んでいてマダイやイサキ釣りの外道でときどき釣れるらしい。

見た目があまりに派手なので、「キンギョ」とか呼んで釣れても捨ててしまう人が多いのだとか。

うーむ、確かに、まな板の上に乗せても「これから食われる」って感じが皆無……。
なんていうか「THE・観賞用」って感じ。どことなく儚げで、なんだかイケないことをしているような気に……。

でも!この海の恵み、ありがたくいただきます!!

■見惚れすぎると鮮度が落ちるので!捌きます!

板前役としてK氏が出刃を握り、私はその様子をカメラ片手に見守ります。

といっても、そこまで料理の腕に自信のない2人。とりあえず無難に、三枚に卸して刺身でいただくことに。

まずは頭を落とし……中骨に沿って出刃を入れ……。
K氏「うっわ!めっちゃ身が柔らけぇ!!」

どうやら、割と水気の多い肉質のよう。アマダイみたいな感じかな……?

3枚に卸し、皮を引いた姿がコチラ。
K氏「うーん、体型が側扁してるんで、身が薄くてけっこう難しいっすねぇ!」

いやいや、2人で食べるには十分十分。
というかサラッと「側扁」とか魚類学用語が混ざるっすねぇ(笑)

この身をブツ切りにして……豪快に盛り付けます!(この際、見た目は……勘弁してください 笑)

(うーむ、刺身にしてもどことなく上品な風情……)

■ついでにもう1種類!

こちらは食用魚として馴染みの深い、イサキ。(学名:Parapristipoma trilineatum

比較対象というわけではないですが、こちらも同じようにお刺身に。

■いざ、実食!!

2種類の刺身を並べ、白飯をよそい(2人とも大食漢なんです)
ついでに冷えたビールの栓を抜き……いざ、実食!


……
………
ふぅ。旨かった。

皿の減り具合から、察してください。
重要食用魚のイサキと比べても、遜色ない、というかこの日に食べ比べた感じでは、シキシマハナダイのほうが、美味ーい!

捌いたときの印象どおり、やや水っぽい白身ではあるものの、まったくクセがなくて、一方で旨みはあって、食感はコリコリというよりネットリと濃厚な感じ。
(食感は、アミノ酸の分解具合にもよるので、鮮度とか締め方で変わるのでは、と思うけれど。)

あ、もともと貧しい舌なので、慣れない食レポはボロが出る前にやめておきますね(笑)

■「派手な魚は不味い」という先入観。

すっかり、シキシマハナダイの味に満足した我々。

ビール飲みながら「こんなに美味しいなら、もっと釣ってこよう!」なんて話してました。

ただ、水産上重要な魚種ではないので、狙って釣るのは難しいのかもしれないなぁ。
もしいつか釣れたときには、捨てないで大事に持って帰ろうっと。

ところで、我々はどうして「派手な魚=美味しそうじゃない」と思い込んでしまうのか。
「派手な見た目=毒々しい=なんか毒がありそう」ということならば、これは一種の「ベイツ型擬態」なのではないか。
(ベイツ型擬態:ハチそっくりのカミキリムシ、みたいに、無毒な生物が有毒種の姿に似せて、あたかも「自分は危険な生物ですよー」とふるまうこと。)

(「ハチっぽいカミキリムシ」の写真が、コレしか…)

ただ、シキシマハナダイの赤い体色は、彼らの住む水深100mくらいの深さでは、逆に保護色になっているはず。
(赤い波長の光は水中ではすぐ減衰して、水深数十mではほとんど存在しない。赤い魚は深海ではグレーに見える)

本来の住処である深海では目立たない赤い姿が、我々人間には派手に見えて食欲を減退させて、結果的に捕食圧を回避している??なーんて。
(まぁ、釣り人が捨てたところで高い確率でカモメが食ったりするんだけど 苦笑)

■最後に、生きたシキシマハナダイの姿も。

せっかく美しいシキシマハナダイ。
生きた姿もお見せしたい……と思ったら、なんと!過去に撮った写真の中に、1枚も存在しない!

「しながわ水族館に展示されているはず」という、大変ありがたい情報をいただいたので、早速、現地に行って撮ってまいりました!

あぁ、やっぱり素晴らしく美しい魚だ……。
(しかし同時に、これまで感じることのなかった「美味しそう……」という感情も芽生えてしまうのであった)

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