年末年始の小笠原旅行で訪れた、父島にある2カ所の水族館的施設。
すっかり遅くなってしまいましたが、まずは「小笠原海洋センター」からご紹介しましょう!
(この旅行中、12/30と1/2の2回訪問しましたが、訪問記は1つに纏めます)
■小笠原海洋センターに行くには。
<アクセス>
・東京/竹芝桟橋から「おがさわら丸」で父島/二見港まで約24時間。
・父島/二見港から徒歩30分、自転車で10分。
天気が良ければ、二見港からレンタサイクルかレンタルバイクで島内散策がてら足を運ぶのにちょうどいい距離です。村営バスでも、運転手さんに言えば最寄りの場所で途中下車させてもらえるそうです。まぁ、まずは父島へたどり着くまでがなかなか大変なのですが……。
入り口はこんな感じ。レンガ調でなかなかオシャレ。乗ってきたレンタサイクルを建物の前に置かせてもらい、入館します。
入館料は無料。この施設は認定NPO法人「エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)」によって運営されていますので、見学して「いいね!」と思ったらボランティアTシャツ(速乾素材なので、島遊びにほんと便利!ステマじゃなくてね!)買って帰るか、幾らかでも寄付をしていくかすると良いと思われます。
ちなみに海洋センターの目の前は「製氷海岸」というシュノーケリングにうってつけのビーチ。我々も1日ここで泳ぎましたが、街から近いのに広大なサンゴ群落が広がっていて魚影も濃く、素晴らしい場所でした。余裕があれば、シュノーケルセット持って海洋センターと製氷海岸セットで遊びに行くのも楽しいです(近くの赤灯台下では釣りもできます)。
小笠原海洋センター(通称:カメセンター)と、運営団体「エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)」の紹介。ここ父島では主にアオウミガメとザトウクジラの生態調査を行っています。ボランティアの受け入れもしておりまして、実はぼくも学生時代に1か月間、調査ボランティアとしてお世話になったことがあるのです。
(※10数年ぶりの小笠原行きでして、当時学んだことをやや忘れかけてしまい、今回改めて(当時よりマジメに)ウミガメについて勉強させていただきましたが、もしこのブログに間違ったことを書いていたらそっとご指摘ください。。。 >センタースタッフの皆さまへ。)
「そもそもなんで、小笠原でウミガメなの??」というよくある疑問への解説。小笠原諸島はアオウミガメにとって産卵地でもあるのですが、実は小笠原ではアオウミガメは重要な水産資源なのです。(現在は、年間135頭の漁獲上限を設定。島内のあちこちの飲食店でも、郷土料理の「カメ煮」や「カメ刺し」を食べることができますし、カメ漁シーズンには漁港で水揚げされたウミガメを目にすることもあります)
イルカやペンギンあたりと並び、水族館ではアイドル的人気を集めがちなウミガメですが、「単純に可愛いから」だけではなく水産資源として「食べつつ増やす」という視点は、けっこう新鮮に感じる人も多いのではないかと思います。個人的には、とても健全な生き物との関わり方だと思います。カメ刺し美味いし。
■そう言いながらも、ウミガメ可愛い!
屋内展示はパネル解説や標本の陳列がほとんどですが、屋外の見学コースに出ると怒涛のウミガメ・フルコース!!
敷地内には大小いくつものコンクリート製の水槽が並んでいます。そして、飼育されているのは(ほぼ)100%ウミガメ!
その中でもいちばん多いのが、ここ父島を産卵場所としているアオウミガメ(Chelonia mydas)。甲羅は赤いけど、名前はアオウミガメ。なぜならば肉(脂身)が緑色だから。
実はここ海洋センターでウミガメを飼育展示しているのは単純に「見せる」ことが目的ではなく、「ヘッドスターティング(短期育成放流)」の一環なのです。
<ヘッドスターティングの目的、ざっとこんな感じ>
・市街地に近い大村海岸では光害の懸念(稚ガメは明るい方向に向かっていく習性があり、街のほうが明るいと海ではなく陸を目指してしまう)があるため、センター敷地内の孵化場に移植して孵化させる。
・人工孵化させた稚ガメの一部を半年~1年間人工飼育し、外敵に捕食されにくいサイズに育ててから放流する。
・標識をつけて放流することで、その後の再捕調査が可能になる。
施設内にある人工孵化場。上にすだれがかけられているのは、日差しを遮って砂の温度を調整するためでしょうか。
決して父島のあちこちの浜に産卵された卵すべてを人工孵化させる訳でなく、浜から移植するのは光害の懸念がある場合だけ。そしてこの孵化場で孵化した稚ガメも、基本的にはすぐに夜間放流されるそうです。ここで大きく育てられて放流されるのは、あくまでごくごく一部ということですね。
通年だいたい200~300頭くらいのアオウミガメが飼育されているそうです。確かに、見渡す限りカメ・カメ・カメ。
父島での産卵期は初夏とのことで、育った個体から順次放流されていきます。地元の小学校の教育プログラムにもなっていたり、観光客向けの放流体験イベントが開催されたりしています。ちなみに本土の水族館に預けられる子もときどきいて、(少なくとも)葛西臨海水族園とすみだ水族館で展示されているアオウミガメは海洋センター出身だったはずです。
餌を食べるアオウミガメ。ここ海洋センターでは、主に養殖魚用のペレット飼料が給餌されていました。
ウミガメの隔離病棟。カメ同士で噛みあって傷ついたり成長が遅い個体は、このメッシュネットの中で育てられています。
■識別標識の新技術「リビングタグ」!
展示されているウミガメを見ていると、ときどき甲羅に白いマークのある個体を見かけます。実はこれは、リビングタグという識別標識。お腹側の甲羅(白)と背中側の甲羅(黒)を切り取って入れ替えるのだそうです。
従来はプラスチックや金属製のタグを(ピアスのように)前後どこかの鰭につけていたのですが脱落してしまう問題があり、それに代わる方法として試されているそうです。ただし、これは個体識別ではなくあくまで放流年を見分けるための標識とのこと。
■アオウミガメ以外のウミガメも!そして白変個体!
ここまでずっとアオウミガメの紹介でしたが、センター内には計3種類のウミガメ(アオ、アカ、タイマイ)と、淡水ガメ(クサガメとミシシッピーアカミミガメ)が飼育されています。
(屋内展示では、ウミガメ現生種全種の解説も。)
アカウミガメの「なっちゃん」。海洋センターでいちばん大きなウミガメです。アオウミガメより大きな頭とガッチリした顎で、甲殻類をバリバリ食べます。(訪問中、別のお客さんがふざけて触ろうとしてましたが、ツアーガイドさんに割とガチで注意されてました。いやほんと、噛まれたら指くらい持ってかれますよ、、、。)
水槽掃除中につき、上陸状態のなっちゃん。くったりしてます(笑)
こちらはタイマイ。アカウミガメとは逆に、シュッとしたスタイリッシュな小顔が特徴。べっ甲細工の原料になるカメで、確かに甲羅の色つやも綺麗です。
餌のキャベツを食べるタイマイ。
実は施設内では、「ウミガメのおやつ」が売られています。大人のカメにはキャベツ、子どものカメには魚のぶつ切り。ともに数量限定ですので、あげたい方はお早めに!
こちらはアオウミガメの白変個体。館内のプールで3頭飼われています。人工孵化された中から生まれたとのこと。
名前は「からあげ」(と「まさきち」と「チビ」)。
白変個体は3頭とも甲羅に歪みがあったり甲羅の板数が正常と異なっているそうですが、飼育下では元気そうに泳いでいました。野生では目立ってしまって天敵から捕食されやすかったりするんでしょうが、運良く(?)人工孵化場で生まれた強運を武器に、これからも元気で長生きしてほしいですね。(心の声:ウミガメの白変個体なんてレアだし。)
館内に割と無造作に展示されたニタリクジラの骨格標本。海洋センターではザトウクジラの調査もしているのですが、展示自体は(生体展示していることもあり)クジラよりウミガメのほうがやや充実しているかな、と思います。ザトウの個体識別体験とか、あったらめちゃくちゃ面白いと思うんだけどなー。メンタル疲れるけど。
残念ながら「ウミガメしかいない」ということもあり「水族館」とは呼べないのかもしれませんが、単純にウミガメたち見ているだけでも楽しいですし実はかなり奥深く勉強できる施設でもあり、小笠原に行った際にはぜひ忘れずに訪問してほしいスポットです。(そして夜は街でウミガメ食べてみて欲しいです)
子ガメの放流イベントもオススメですし、より深く知ってみたいという方向けに「ウミガメ教室」という体験レクチャーを開催しているそうですので、こちらもぜひご参加を!(ぼくらが行った時もちょうど開催日でした。飛び入り参加はできませんでしたが……)
PS.
あー、いつかまた、ここでボラしたいなー(心の声)。。。