■台風のなか、本州最北の水族館へ!
青森・浅虫水族館へ行ってきました!
折しも、猛烈な台風19号が本州を直撃した10月の3連休。東北・関東・東海の多くの水族館が臨時閉館するなかで、本州最北の水族館は意外なほどの通常営業でした。東北新幹線ですら午後から運休しているのに、いったいどこからお客さん来るんだろう、という感じ。(自分はちょうど北海道へ渡る別件があったので、台風の進路から逃げる形となり良かったのですが)
浅虫水族館については、先日「完全養殖クロマグロ稚魚の展示」の件でちょっと好き勝手書いてしまい(内容的には賛同のご意見をいただいたものの)、そもそも現地に足を運んでもないのにアレコレ言うのはフェアではないよなぁと心苦しく、近々の再訪を密かに誓っていたのでした。
※クロマグロ展示は、9月29日に最後の1匹が92日齢で死亡し展示終了していました。展示水槽だけでも見たかったなー。(現在はカマイルカの展示に戻っているそうです)
■水族館に入る前に……まずは名物レストランで腹ごしらえ。
新幹線 ⇒ レンタカーと乗り継ぎ、浅虫温泉に到着したのはお昼前。浅虫水族館からほど近い「鶴亀屋食堂」には必ず寄って名物のマグロ丼を食べようと決めていたので水族館に入る前に昼食を済ませ、入館したのはほぼジャスト正午くらい。
(「鶴亀屋食堂」のマグロ丼。季節によって仕入れるマグロが変わるようで、この日は宮城県・塩釜産のメバチ「ひがしもの」が供されていました。分厚い赤身が15切れも乗って、これで「小」サイズ。)
■5時間もいりゃあ書きたいネタはたくさんある。今回はまず大水槽の話から!
帰路(青森⇒函館)の新幹線は18時台。外はどうせ台風で悪天候だし、だったらこの日はギリギリまで水族館に居座ってゆったり過ごしてやろうと腹をくくり、けっきょく滞在時間は5時間強。
あ、余談ですが浅虫水族館、実は2Fの奥の方に無料のコインロッカーがあるんです(あとで百円玉が戻ってくるやつ)。
邪魔になる荷物や上着、あまり使わないレンズ・三脚なんかはここにしまっておけるので、個人的にはとても助かりました!館内にはベンチやテーブルもあちこちに設置されているので、じっくり腰を据えて楽しむのにはうってつけの水族館です。
それだけ長時間ずっと館内にいると、必然、1つ1つの水槽を何度も何度も眺めることになります。そして、ここ浅虫水族館の大水槽が、見れば見るほどに新しい発見のあるなんとも味わい深い展示だったのでした!
■第一印象:「なんだか地味なトンネル水槽……」(失礼。。)
こちらがその、トンネル大水槽。「むつ湾の海」がテーマになっています。
ぱっと見て目に飛び込んでくるのは、ドチザメ、マアジ、クロソイなどなど、このあたりの海ではおなじみの魚たち。
こちらはトンネル部分。トンネル長さは15mほどあるそうです。規模感だとアクアパーク品川のトンネル水槽と同じくらいかな。
ところで、いつも見慣れたトンネル水槽と比べると、なんとなく違和感を感じませんか??
並べてみると分かるかと思いますが、アクアパーク品川のトンネル水槽と違い、浅虫水族館ではトンネル部分にけっこう太い金属の支柱が何本も入っているのです。
なるほど、それがないからアクアパーク品川のトンネル水槽はスッキリして見えるのか~。
もうひとつ参考までに、こちらは登別マリンパークニクスのトンネル水槽。支柱は入っていますが、浅虫のと比べるとだいぶ細めです。こうやって並べると、トンネル水槽を作る技術も日進月歩で進歩しているのだな~~、と感じますね。最近はアクリルの接合だけでトンネル水槽が作れちゃう、というのもすごい!
トンネル水槽を泳ぐ魚たち。
こちらは、マアジとメバルの混成群。(メバリング・ロッドでワームを投げ込みたくなる光景だ……)
こちらはマサバの群れ。水面直下をグルグル泳ぎ回ってます。船釣りでアジとかメバルを狙っていると上層でサバが釣れちゃうことがよくあるのですが、なるほど、水槽内でも遊泳層が違うのですねー。(サバ、食べれば美味しいんだけど、掛かると暴れて仕掛けがからまるので厄介なんですよね~~)
※あとで中村元さんの「全国水族館ガイド125」をチェックしたところ、実は浅虫のこのトンネル水槽は「日本で2番目に作られたトンネル水槽」なんだそうです。歴史を感じちゃうのも当然だったのか……。
■よくよく見れば……おもしろい仕掛け満載の大水槽展示。
ちょっとレトロなトンネル水槽に、食卓でもおなじみの「地元の魚」たち。
ややもすれば、パッと見は地味な印象も受けてしまうのですが、時間をかけてゆっくり水槽を見ていると色々なことに気付きます。
海中投棄されたプラスチックゴミ……じゃないです。
海の中で干物を干している……わけでもないです。
1枚目のタマネギ袋は「採苗器」、2枚目のカゴは「パールネット」。
大水槽のなかで、ホタテガイの養殖の過程を展示していたのでした!
よく見ると水面にはブイが浮いていて、しっかりロープも張り巡らされています。
養殖いけすを漁礁にするかのように、その周りを泳ぎ回るマアジやメバルやマダイ。その下の海底にどっしりと鎮座するクロソイたち。
色とりどりの熱帯魚が乱舞したり大きなサメ・エイが悠々と頭上を泳ぐ、或いはイルカが自由自在に泳ぎ回る下を海中散歩できる。そういうのもトンネル水槽の醍醐味だと思います。
一方で、大水槽をフルに使ってリアルな「地元の海」を再現する、普段は陸上から眺めている身近な海の中の様子を体感できるというのも、これは素晴らしいコンセプトだなぁと思ったのでした。。
※なお、この大水槽が現在のスタイルに改修されたのは2015年12月とのこと。ぼくが前に訪問したのは2012年だったので、ひと世代前の大水槽を見ていたのですね……。
水槽の改造の様子が分かるのも面白い!
■ホタテガイだけじゃない!「東北の養殖業」が学べちゃう大水槽!
大水槽に吊るされているのは、ホタテガイだけではありません。
こちらは、マボヤ。
ホヤの展示というと最近では仙台うみの杜水族館の「見上げホヤ」が有名ですし、アクアマリンふくしまの親潮大水槽にもホヤが吊るされているのですが、こと”解説の充実度”という点で言うと浅虫水族館のホヤ展示に軍配が上がりそうです。
トンネル水槽の手すり部分に設置された、ホヤの養殖に関する解説板。
ホヤって収穫するまでに3年もかかるんだなぁ。知らなかった。
水槽を覗くと、ホヤを吊るしているロープの上にこんなブイが。大水槽内でも、きちんと段階ごとに分けてホヤを展示しているのです!(さっき書いた「トンネル水槽のつなぎ目の支柱」がホヤの発育段階ごとに大水槽内をエリア分けする感じになっていて、結果的に見やすいという 笑)
こちらは、1年目のホヤ。ホヤの赤ちゃんなんて、きちんと見るのは初めて!!
さらには、アカガイやなんと「フジツボの養殖」なんていうレア展示まで!!ミネフジツボ、高級食材だったんだ……。
■水族館で『美味しそう』って言ってもいいの??
雰囲気だけでなく、内容も充実した浅虫水槽の大水槽展示。
大水槽の前には、ホタテガイの養殖について詳しく解説したこんな特大ボードも設置されています。
(以下は友人K君が過去にバズったネタだということを先に白状しておきます。
まとめサイトにも掲載されてたんだな……)
これホント素敵ですよね~~。
「水族館で生き物を展示することの意味」「生物多様性を守る意義」ということを、感覚的にも分かりやすく説明しているなーと思います。
それともうひとつ、浅虫水族館のこの解説板にやたら説得力があるのは、大水槽の魚たちがどれもみな抜群に「美味しそう!」だからだと思うんです。
見てください、この黄金色のアジ!!
こんなサイズのアジ、釣りに行きたいわ~~~。(アジはなめろうで食べるのが好きです)
一連の展示解説には、食品サンプルを使ったこんなのも。
ホタテはシンプルに、七輪に貝殻ごと乗っけて焼くのが好きだなー。
水族館って、もちろん「綺麗!」「かわいい!」っていう感想もアリなんですけど、「美味しそう」も大事な要素だと思うんですよね。そこからさらに、水産資源保護だとか海洋保護の話をしっかり伝えるのも大事なことだと思うんです。(一方で、政策面ではウナギにしろマグロにしろサバにしろ水産資源管理がイマイチ上手くいってない現実もあるとは思うのですが。。。)
「水産推し」な浅虫水族館の大水槽展示。都会のオシャレな水族館だといまいちリアリティのないメッセージかも知れないけど、目の前に漁業の盛んな海が広がり養殖業に馴染みのある立地だからこそ伝えられるメッセージだなぁ、と感じました。
■イベント日だけのお楽しみ?!まったく印象の変わる、夜の大水槽!
この日はたまたま10月の土曜日ということで、通常17時までの営業時間が19時まで延長され「ハロウィンナイト」が実施されていました!
帰りの新幹線の時間は迫るもののちょっとだけでも雰囲気を感じたいと思い、離脱前に館内をひと回り。
大水槽の照明が落とされ、青色の世界に!
トンネル部分には、イルミネーションの装飾が!
昼間と同じポーズで寝ているクロソイたちも、照明が変わるとずいぶん雰囲気が変わります。
イルミネーションが施されたトンネル水槽前。
白く浮かび上がるニュウドウイカの標本が、ちょっとホラーでもありますが(笑)。
そしてこちらがトンネル水槽!!
昼間とは打って変わってオシャレ空間になってました!!このギャップがたまりませんね。(水槽内に吊るされたホヤは……ジャック・オー・ランタンみたい??? 笑)