3月末~4月にかけて、引越しやらなんやらですっかりブログ更新が滞ってました。そんなときでもTwitter上ではマメに発言してしまうのですから、SNSって不思議ですよね……。
そんな訳で、Twitterに垂れ流したネタから、ひとつ。
■水族館で見かける、こんなパネル。
「魚名板」とか「解説板」とかいろんな呼び方がありますね。最近では液晶パネルを使ったデジタルタイプも多いです。中には、スマホアプリと連動して音声で解説が聞ける、なんていうハイテク水族館も。
ところが、この「魚名板」が一切ない、なんて水族館も実はあったりするのです。これが、いわゆる「魚好き」「水族館マニア」にはおおむね、評判が悪い(笑)。(※当社調べ)。
■水族館に、「学術的要素」は必要か??
「魚名板がない」水族館は、たいていが大都市圏の、デートコースになりやすいような水族館だったりします。いわゆる「雰囲気重視」ってやつです。
(※写真はイメージであり、特定の施設を示すものではありません 笑)
ここでよく話題になるのが、水族館は「教育施設」なのか、それとも「娯楽施設」なのか、という話。
個人的には、どっちの側面も兼ね備えていて当然だし、水族館の楽しみ方なんて人それぞれでいいじゃん、と思ってますけどね。
ただ、個人的には「魚のことを知ろうとすれば、水族館が今よりちょっと面白くなるゾ」と思ってます。(「こうあるべき」じゃなくて、あくまで「個人のオススメ」って話です)
だからやっぱり、水族館には「お勉強要素」が多少あるほうがいいと思うんだよな~~。
■「魚を知る」ということ。
自分自身も「魚のことを、もっともっと知りたい」。それと同じくらい、「いろんな人に、魚のことをもっともっと知って欲しい。そう思ってます。
じゃあ「魚を知る」って、いったいどんなこと??
■こんな出来事がありました
【和名:イロカエルアンコウ】
【学名:Antennarius pictus 】
今はもう閉館してしまった、東北地方のとある水族館で、イロカエルアンコウを眺めていたときのこと。
① 親子連れがやってきました。
お子さん「お父さん、この魚なーに??」
お父さん「えーと…これは…(魚名板を見る)
イ・ロ・カ・エ・ル……色を変える魚みたいだな」
お子さん「そうなんだー!カメレオンみたーい!」
こうして、お父さんはドヤ顔で、お子さんを連れて次の水槽へ。
② チャラい感じのカップルがやってきました。
彼女さん「やだー、この魚ヘンなのー」
彼氏さん「うっわ、ブサイクだな、デカい口!」
彼女さん「あれー、見て見てー、なんか歩いてるんだけどー!」
彼氏さん「ほんとだー面白いねー」
こうして2人はイチャつきながら、次の水槽へ。
■果たしてどちらが「魚を知る」ことができたのか。
僕は②のカップルさんのほうが、「イロカエルアンコウ」という魚のことを、より知ることができたんじゃないか、と思うのです。
……魚名板なんか、見てなかったけど。
たぶん「イロカエルアンコウ」という名前は、知らずに帰ってしまったけど。
「魚の名前を知る」ということが、必ずしも「魚のことを知る」ということにはならないのだなー。目から鱗が落ちるような思いで今でも覚えている、印象的な出来事でした。
人間、「名前を知る」ことで、なんとなく分かったような気になってしまうものなのですね……。
■ちなみにネタばらしをすると……。
「イロカエルアンコウ」、漢字で書くと「色・蛙鮟鱇」。①のお父さんは「色変える・鮟鱇」と勘違いをしていた訳ですね。
さらにもう少しつけくわえると、この魚のもともとの和名は「イロイザリウオ」。2007年までは、この名前で呼ばれていました。
「イザリウオ」という、海底を歩くように移動する魚たち。その中で、黄色や赤や黒と色彩変異が豊富なので、本種を「イロ・イザリウオ」と名付けたわけです。(※なお、カメレオンのように色を変える訳ではない)
しかしながら、語源になった「いざる」という動詞は「足が不自由な人が座ったまま膝をついて移動する」という意味で、差別用語なんじゃないか。そんな理由で、2007年に「イザリウオ」ではなく「カエルアンコウ」に、改名されることとなったのです。そして「イロイザリウオ」も「イロカエルアンコウ」に。
■イロカエルアンコウの、正しい魚名板(笑)
この改行の仕方なら、「色変える・鮟鱇」にはならなさそう!
沼津港深海水族館、エラい!!!