久々に、我が家の魚の話。
「オトシン”ネグロ”」(学名:Hisonotus leucofrenatus )という魚の繁殖に成功しました。
繁殖自体はまったく難しい魚ではなく、既に商業ブリードも確立されている魚ではあるのですが、いざ自分で殖やしてみるといろいろと面白い発見もあり。
個人的な記録も兼ね、ここに記しておきます。(前編/後編の二部構成でお届けします:今回は前編)
◎まとめ:産卵~稚魚育成のポイント
・親になる個体をしっかり成熟させる
・産卵は数日に分けておこなわれる
・初期餌料はブラインシュリンプ
■幸運にも良い親個体を入手。ペアリング3日後に産卵!
今回「繁殖に挑戦してみよう」と思ったきっかけは、行きつけのアクアショップで状態のいいメス親を運よく入手できたこと。
詳細は長くなるので省きますが、訳あって網を借りて、ショップの水槽から自分で魚を掬っていたのでした。すぐにでも卵を産みそうな状態のメス個体を発見して、即購入、お持ち帰り。
・左:ショップで購入したメス個体。
明らかに抱卵していると分かるプックプクのお腹。これ見たら「殖やしてみたい……!」と思うのがアクアリストの本能でしょう。
・右:もともと我が家にいた、オスと思われる個体。メス個体より2回りほど小柄で細身。
メス個体をお迎えしたのが今年の8月12日。
さっそく30cmキューブ水槽を繁殖用にセットし、以前から飼っていた別個体と同居飼育を開始しました。
そのわずか3日後の8月15日。
こ、これ、卵だよな……。
よく見ると、水槽内の水草(ミクロソリウム)の葉にも点々と卵が。
半透明の乳白色をしています。粒の大きさはカズノコくらい。
この写真では卵を守っているようにも見えますが実は偶然の産物で、実際にはそんなことはなさそうでした。(比較的近縁のロリカリアやプレコの仲間では、親が卵を守る種類が多いそうです)
卵は水草やガラスの表面にしっかりと付着しています。ネットで調べたところ、無理に隔離しない方がいいとの記述を見つけたので、孵化するまでそのまま様子を見ることに。
■孵化~初期育成まで。
ネットで調べたいくつかの繁殖レポートによると「産卵後3日くらいで孵化する」という記事が多かったので油断していたのですが、、
最初に卵を発見した日の翌日(8月16日)、、、
孵化してやがるぜ……。
お腹にしっかりとヨークサック(栄養の詰まった袋)を抱えています。
初期餌料はブラインシュリンプ(アルテミア幼生)でOKとの情報を得たので、さっそくブラインシュリンプを孵化させます。孵化までは約24時間。それまでヨークサックの栄養で生き延びておくれ……。
ブラインシュリンプ幼生の孵化にあたっては、今回は「皿式」という方法を試してみました。
上の写真のように、浅いバットに塩水を張り、ブラインシュリンプの耐久卵を少量入れて一晩放置するだけ。めっちゃお手軽です。(詳しくは「ブラインシュリンプ 皿式」とかでググってください)
以前はペットボトルを加工して専用の孵化装置を作り、エアレーションを施すという手間をかけていました。それと比べると格段に楽です。(ただし少量だけ孵化させる場合に限る)
さて翌日(8月17日)。
稚魚たちは少し大きくなった気がします。そして、お腹のヨークサックが無くなっています。このまま初期餌料を食べなければ餓死してしまいます。昨日ブラインシュリンプ湧かしといてよかった!ナイス判断、俺!!
ここから先の育成には稚魚を隔離したほうがいいと判断し、サテライト(隔離ケース)を設置。(写真左側、水槽壁面に掛けられている透明ケースがサテライトです)
水槽内にワラワラ湧いている稚魚たちを、スポイトで吸い取って隔離ケースに移動させます。稚魚を傷つけないように、スポイトの先がなるべく大きいものを使用。(大きい方のスポイトを使いました)
オトシンの稚魚は生まれた直後から口が吸盤状になっているらしく、ガラス面や水草にしっかり吸いついています。スポイトで吸い取るのも少しコツがいりました。
サテライトに集められた稚魚たち。ざっと数えて40匹くらいでしょうか。
ちなみにオトシン”ネグロ”は卵を一気に産むのではなく数日間小分けに産卵し続けるようです。毎晩夕食後、スポイト片手にコツコツ稚魚を集める日々がしばらく続きました。(そのため、サテライトの中は出生日の違う個体が混在しています)
孵化したての稚魚は小さく、排水部のスリットを抜けて元の水槽に戻ってしまうので、スポンジを詰めてカバー。
こうして隔離した稚魚たちに、初期餌料としてブラインシュリンプの幼生を与えてみます。
給餌後の写真。
お腹が黄色くふくらんでいます。しっかり摂餌できているようです。初期摂餌という最初のハードルは超えたようで、まずはひと安心。
■すくすく育っていく稚魚たち。
ここからしばらくは、朝晩2回、稚魚たちにしっかり給餌していきます。
どうやらオトシン”ネグロ”の場合、夜間にもしっかり摂餌しているようでした。飼い主側の生活リズム的にこれはかなり助かりました。朝起きてすぐに1回目の給餌、夜寝る前に2回目の給餌。これがしばらくの間、ルーティーンになりました。
上2枚とも:孵化後およそ1週間後くらい。体つきが徐々にしっかりしてきた。
残念ながら1日数匹ずつくらい、何らかの原因で死んでしまう個体がいましたが、それでも全体的には育成は順調。
上2枚:孵化後約3週間ほど(9月11日撮影)。
大きさは1cm前後くらいでしょうか。だいぶ成魚と同じ体形になってきました。孵化直後の弱々しい稚魚と比べると格段にしっかりした体つき。感慨無量です。
■嬉しい発見:ゴールデン個体が混じってる??
稚魚を育成しながら、割と早い段階で気付いたことがありました。
そして、稚魚が成長していく過程で、それは確信に変わっていきました。
幼魚たちの中に、ゴールデン個体(黄変個体)と思われる個体が混じっているのです。
上がゴールデンと思われる個体。下はノーマル体色。並んで見比べると体色の違いは明らか。
こちらは背面から撮影。
30~40匹ほどの幼魚の中に、5、6匹はゴールデン個体がいるようでした。
目が赤くはないので、いわゆる「アルビノ」ではないようです。
魚種によっては、こういう「ゴールデン」個体でも成長とともに結局はノーマル体色に戻ってしまうこともあるのですが、オトシン”ネグロ”の場合はどうなることでしょう。
(長くなったので、後編に続きます)