■今年の4月に、こんな記事を書きました。
2020年4月。
新型コロナウイルスの感染が拡大し緊急事態宣言が発令されたあの頃、こんな記事を書きました。
まだ半年ちょっとしか経ってないわけですけれど、あの頃は本当にもうなんとも言えない閉塞感や不安感に包まれていて。
ぼくにとってとても大事で大好きな「水族館」という場所が、もしかしたら1つ2つ、いやもっと、姿を消してしまうのではないだろうか。リアルにそれくらい切実に思っていました。
そんな2020年が終わろうとしているこの師走。
今のところ日本国内では、主だった動物園/水族館がコロナ禍で倒産したり閉館したという話は出ていません。これは純粋に、本当に嬉しい。
それでもやや規模の小さな動物展示施設、水槽展示施設のいくつかが閉鎖を決めていたりして、このコロナ禍が長期化することはとても不安でもあります。(比較的有名なところでは、横浜市にあるオービィ横浜などでしょうか)
個人的にいちばん衝撃だったのは、海外ですがカナダ・バンクーバー水族館の無期限閉館。カナダ最大・世界的にも有名な水族館の想定外のニュースでした。
研究者や飼育スタッフは残留し海洋生物の保護活動は継続する、というあたりがいかにもな感じ。また必ず営業再開してほしいものです。
■水族館への寄付制度、もういちどまとめてみる
前回(2020年4月)調べたときはびっくりするほど少なかった、水族館への個人寄付制度やクラウドファンディング。
その後、じわじわと導入する園館が増えてきたような気がします。
そして季節は冬。コロナなどなくても例年、来館者数が減りがちな冬。
コロナ「第3波」の襲来もあり、今年は水族館経営的にはさらに厳しい冬になるのかなぁ……。
ちょっと気になる(応援したい)プロジェクトも目にしたので、いまいちど調べ直してみました。(もし抜けや漏れや新たに始まったプロジェクトがあれば、ぜひ教えてください!)
※原則、各水族館がオフィシャルに募集している寄付制度やクラウドファンディングのプロジェクトに限定してピックアップしています。
■新たに始まった募金/クラファンプロジェクト
☆ヨコハマおもしろ水族館「生き物たちからのヘルプ」
期間:2020年11月9日~2020年12月22日
目標金額:¥2,900,000
横浜・中華街のどまんなかにある「ヨコハマおもしろ水族館」がクラウドファンディングを開始しました。
なぜか「All or Nothing」方式という、目標金額に到達しないと全額チャラになってしまう(支援者に返金される)システムを採用。
12/8現在、残り14日間で達成率59%。ちょっとハラハラしながら見守っています。
リターン品はグッズ系・体験系とバラエティ豊富。
個人的に惹かれたのは「夜の水族館ペアチケット」と「水槽プロデュース権」ですね。あの館内で水槽をプロデュースできたら、とても楽しそう!
おもしろ水族館、数年前に訪問しましたが非常にユニークかつ、ふざけすぎている訳ではなく生き物たちを楽しみながら観察できる水族館です。ぜひとも目標金額、達成してほしい!
☆うみたまご・クラウドファンディング
期間:2020年11月21日~2021年1月31日
目標金額:¥6,000,000
大分・うみたまごも今年11月にクラファンを開始!
こちらは「All-in」方式(目標金額が未達でもその分の金額が支援される)。
そして12/8現在、すでに目標金額を達成済み!(達成率124%)
(ほぼ同時期にクラファンをスタートしている「ヨコハマおもしろ水族館」との差は一体……?)
大手クラファンサイトではなく、地元・大分発のクラファンサイト「sandwich」でのプロジェクトというのも面白いですね。
リターン品もユニークで、「サメの歯」「ペリカンの羽」など水族館ならではのグッズが充実。
そんな中で個人的に惹かれたのは「ペンギン足跡Tシャツ」と「夜の水族館貸切」。
特に夜間貸切は魅力的……。1口ひゃくまんえんだけど……最大100名まで参加可能だし……。
近場の水族館だったら、友人知人集めて申し込んでしまったかもしれない!
※なので、東北~関東あたりの水族館さん……ぜひ同じことやってください!!(がんばって友達100人集める!)
☆おたる水族館「いきもの育成基金」
北海道有数の大規模水族館・おたる水族館。
あまり話題になっていなかったのですが、今年7月から「いきもの育成基金」という寄付制度をスタートさせていました。
個人的にはとても注目しています。
おたる水族館、全国的にファンの多い水族館なのではないかと思うので。
アクセスの悪い地方水族館こそ、こういう寄付制度を充実してくれると嬉しいのですよね。
おたる水族館に限らず、水族館って地方の園館ほどエッジが効いていて個性的で大好きな水族館ばかりなのですが、こんな世情だとなかなか直接足を運ぶことができないので。
(おたる水族館は3セク運営ですが)公営園館の場合は公共性の問題や「地域に足を運んでもらってナンボ」みたいな事情なんかもあって、もしかすると寄付制度を導入することにハードルもあるのかもしれません。
けれど、遠方のファン心理としては是非あちこちの園館で導入してほしいと願っていますよー!
※なお、「公式サイトの記事からリンク先のPDFファイルに飛び、さらにそこに書いてある銀行口座に振込」というシステムが少し煩雑だな、とは思います。
☆桂浜水族館「ハマスイ募金」
高知・桂浜水族館も募金制度をスタート。
こちらも全国的にファンが多そうな「ハマスイ」。
SNSや公式キャラ「おとどちゃん」のインパクトが強すぎてぶっとんだ印象のある桂浜水族館ですが、リンク先に飛ぶと意外なほどマジメな募金制度の案内が。
リターン品等はないですが、寄付金控除等の税制優遇を受けることができます。そのあたりの説明もしっかりHP上に書かれていて有難いです。
ちなみにハマスイ、現在「コツメカワウソの命名権」も募集しています!(12/13まで)
こちらはなんと入札方式。いったいいくらで落札されるのだろう……。(こちらも税制優遇を受けられるそうです)
※そしてハマスイといえば「欲しいものリスト」。
頻繁に更新されては、あっという間に空っぽになるという正のスパイラルを繰り返してます。強い。
■前回も紹介した寄付制度/サポーター制度
ここからは、前回の記事でも紹介した水族館の寄付制度/サポーター制度を再度ご紹介。
☆葛西臨海水族園「サポーター制度」
金額:大人1口¥10,000(子ども、学生設定あり)
有効期間:申込から1年間
葛西臨海水族園のサポーター制度。都立の動物園/水族館は同じシステムを導入しています。
サポーター制度も充実していて、入園券×2枚、グッズショップの割引、限定イベント招待、などなど。電話/Eメールで遠方からでも申し込めます。
支援金の用途を展示エリアごとに指定できるのも楽しいです!
昨年は「ピーコック・ラス」という魚の展示に活用されたようです。こういう情報公開をしているのも良いですね(毎年度、収支報告も実施されています)。
東京ズーネットHPに最新記事を掲載しました!
【擬海草の活用法~サポーター支援についてのご報告~】
皆様よりご支援いただいた寄付金を利用し、「世界の海」エリア「地中海」水槽に擬海草を設置しました。気になる魚たちの反応は?
記事はこちらから⇒https://t.co/SbSq2kzJdS#おうちでかさりん pic.twitter.com/qq3dBgxKKK— 葛西臨海水族園[公式] (@KasaiSuizokuen) December 6, 2020
☆新江ノ島水族館「えのすいecoサポーター」
金額:大人1口¥10,000(初年は¥12,000。キッズ/ジュニア設定あり)
有効期間:申込から1年間
こちらも前回紹介した、えのすいのサポーター制度。
年パス特典(1年間入場フリー、同伴者割引、ショップ割引)に加えて友人に渡せる入場券3枚がついてくる、充実のサポーター特典。正直、年パスを買うよりこっちの方がオトク度が高いです。
難点は現地に行かないと申し込めないこと。行きたくても行けないんだぁぁぁ。。。
☆姫路市立水族館「水族館サポーター」
・金額:個人サポーター:一口2,500円
水槽サポーター:一口30,000円 ~ 50,000円
・期間:申し込みから1年間
兵庫県・姫路市の姫路市立水族館(ヒメスイ)。
通常料金は大人¥520、年間パスポートは無し。
そのため「個人サポーター」が実質的な年パス制度と言えそうです。(サポーター特典:1年間入場フリー)
そしてそれ以上にユニークなのが「水槽サポーター」制度。
水槽1つ1つのいわば「スポンサー」となれる制度です。(水槽を好きなようにプロデュースできるわけではありません)
ただしこちらも、直接現地に行かないと申し込めないところが遠方のファンにとってはやや難点か……。(運営規模を考えると仕方なさそうですが)
ヒメスイ、地元密着型でゆったり楽しめる水族館です。コロナ収まったらまたぜひ訪問したい。
☆花園教会水族館/Amazon欲しいものリスト
京都市内にある、(ほぼ)個人運営・入場無料の小さな水族館「花園教会水族館」。
その名前の通り、プロテスタントの教会が運営している水族館です。
「Amazon欲しいものリスト」による物品寄付、あるいは振込による寄付制度を導入しています。コロナ禍の序盤には館内の換気工事のためのクラウドファンディングも実施していました。
■【参考】終了したクラウドファンディング/サポーター制度
このほか、既に終了したプロジェクトもいくつかご紹介。
やはり春先の緊急事態宣言に伴う長期休館、夏場の人数制限による収入減を受けて寄付制度やクラウドファンディングを導入する園館が目立った印象です。
☆名古屋港水族館 クラウドファンディング
期間:2020年7月10日~2020年9月10日(終了しました)
目標金額:¥5,000,000(達成率:285%)
今回のコロナ禍、おそらく他園館に先がけてクラウドファンディングを導入した名古屋港水族館。(ほかにも来館者向けに、ガチャマシーンを活用した「ガチャ de 寄付」を実施したりしていました)
最初は日本有数の大型水族館が?!と衝撃を受けたのですが、よく考えれば海獣類や大型魚類をたくさん飼育する大型園館ほど大変な状況だったのかもしれません。
リターン品は入場チケットや年パスではなく、グッズ系のアイテムで統一されていました。あとは「生き物の鳴き声つきメール」なんていうのもあったり。このあたりは他の園館のクラファンにも影響を与えたのではないかと思います。
達成率285%(約1,400万円)ってのがすごい。
開始3日で当初の目標金額(5百万円)を達成したそうです。思えば今年の7月ごろって、まだ先行きがなかなか見えなくて、みんな何かしらの形で応援の気持ちを伝えたかったんだろうなぁ。
☆新江ノ島水族館「えのすいファンディング」
期間:2020年9月1日~2020年10月31日(終了しました)
目標金額:¥10,000,000(達成率:120%)
名古屋港水族館に次いでクラファンに踏み切ったえのすい。
こちらも全国有数の大型園館、そして目標金額:1,000万円という規模のクラファンに正直驚きました。
リターン品の設定も、MAX:100万円という設定があったりして(そしてそれを選んでいる人が1名いて震えた)。
結果、見事に達成率120%。約1,200万円。
名古屋港と合わせると2,600万円もの寄付が水族館に届いたわけですよ!
水族館ファンのパワーってすごいなぁ、と、自分もその1ファンながら感動しました。
ささやかながら少しだけ寄付させていただいて、入場券もらったからなぁ。早くえのすい行きたい。
☆四国水族館「サポーターズパスポート」
期間:2020年4月24日~(4日間で完売)
金額:¥22,000(限定2,000名)
こちらはクラファンではなく、今年新たにオープンした四国水族館のオープン限定サポーター制度。
「年パスだけど1人22,000円」という強気な価格設定と、それがほぼ瞬殺レベルで完売したことで話題になりました。合計4,400万円。この件も、水族館ファンの強さを思い知らされたよ……。
実は自分も購入していまして、いつの日か四国へ行かねば……と思っています。(初回来館日から1年間有効)
オープン後、訪問した人々からはいろいろな感想が聞こえてきた「しこすい」ですが、やっぱりまずは一度訪問したいですね。
■個人的にはまだまだ広がってほしい「寄付制度」。
後半はやや「今年の振り返り」みたいにもなりましたが、冬の時期を迎え新たな展開も見えつつある水族館の寄付/クラファン事情。
個人的には、寄付なんて懐事情に多少余裕のある人が、無理のない範囲でやればいいのだと思ってます。自分もいくらかは参加しましたが、やっぱり生活を削ってまで無い袖は振れないですし。(そしてリターン品目当てというのも、本来の寄付の趣旨からは外れると思います)
国内に100か所以上の水族館がある中でこういった取り組みをしている園館はほんの1~2割程度。
その背景としては、もしかすると「水族館は来てもらってナンボ」という思想が根強いのではないかと思いますし、それは確かにその通りかもしれません。
ただ正直(いち水族館ファンの意見ですが)、水族館遠征って水族館に落とす金銭よりも交通費の方が多かったりして、なんだかそこに複雑な思いを抱いてしまったりするのです。
(飛行機で遠征したつもりになれば遠方の園館のクラファンに数万円つっこんでもいいのでは、という気分になったりする。特に酒を飲んでるときは危険。)
航空会社や鉄道会社も苦境だと思うのでそこもまた複雑ではありますが……自分はやっぱり、大好きな水族館を遠方からでもダイレクトに応援できる仕組みがあると、嬉しいなぁ。
あとは動画配信だったり、遠隔でも参加できるバーチャルガイドツアーだったり。
(正直、プロジェクションマッピングとかバーチャル展示よりずっと、そういうデジタル活用のほうが本質的だと思います)
まだまだコロナ禍も先が見えない状況ですし……。
特に地方の水族館に於かれましては、これからもぜひサポーター制度やクラウドファンディングを検討していただけますと、いち水族館ファンとしては大変ありがたく嬉しい限りです。