自宅で飼っていたフトアゴヒゲトカゲ「アゴちゃん」が今日、息を引き取りました。
飼育を開始した2016年3月から、約2年半。
体調の異変に気付いてからわずか4日間。
あまりにも急すぎて(先ほど動物病院から戻ってきたばかりです)、正直まったく気持ちの整理がついていません。自分以上に「アゴちゃん」を溺愛していた妻とさっき思いきり泣いたけれど、それでもまだ涙があふれてきます。
ただ、動物病院で獣医さんからかけていただいた言葉、それから今後のためにも、ジェットコースターのようだったこの4日間を記録に残しておきたいと思います。
体調の異変を訴える「アゴちゃん」を前に、WEB上でなんとか参考になる情報はないか探しました。爬虫類をペットにする人が増えてきたとはいえ、見つかった情報はあまりにも少なく、一方で数少ないフトアゴヒゲトカゲの闘病記にとても励まされました。
このブログもいつか誰かの役に立つことがあれば、せめてもの幸いです。
(元気だったころの「アゴちゃん」。2018年4月9日。)
■2018年9月9日。「異変」。
(情けないながら闘病期間中のほとんどを旅行と仕事で外出していたこともあり、この闘病記のほとんどは妻の観察と看病によるものです。以下、妻による観察等は橙色で記します)
最初の異変は9月9日。日曜日の夜のこと。
この日、ぼくは土日で旅行に行っていて、東京に戻る新幹線の車中。大宮を過ぎてもうすぐ東京、というタイミングで、妻からのLINEがありました。
「はやく戻ってきて。アゴちゃんの様子がおかしい。死んでしまうかも。」(妻)
ぼくが「アゴちゃん」と最後に遊んだのは金曜の夜。そのときはエサもしっかり食べ、元気に走り回っていたと思います。日中面倒をみている妻からも、特に異変は聞いていませんでした。
事態が飲み込めず、少しでも早く帰れるならと東京駅からタクシーへ。とにかく症状が知りたいと思い、LINEを返信しました。すぐに妻から返信。
「食欲がなくて、好物の豆苗もコオロギも食べなくて、苦しそうにしてて突然暴れだす」
「苦しそうにいきみながら、お腹をずって歩いてる」
という内容とともに、動画が(未だに見ると当時を思い出して自分自身ショックを受けてしまうので、動画は貼りませんが)。
タクシーの中で“フトアゴヒゲトカゲ 病気”などとスマホで検索。
まったく素人なので正確な診断などできませんが(なんとなく卵詰まりが怪しいのかな)などと考えながら急いで帰宅しました(実際には卵詰まりではありませんでした)。
(飼育ケージ。このシェルターの上がお気に入りでした。当日ではなく、元気だったころの写真です。)
帰宅すると、「アゴちゃん」はケージの中。いつも昼寝をしているロックシェルターにもたれかかるようにして、少し苦しそうに胸で息をしていました。それでも、目はしっかりと見開いていて、こちらの動きを追いかけるように視線を動かしてくれました。
「今は少し落ち着いてるけど、ときどき苦しそうに暴れるの。」と妻。
時間は日曜日の夜22時。常識的に考えて、動物病院が開いている時間帯ではありません。
それでも、何とか助けてやりたい。妻と話し合いながら、インターネットで都内の動物病院を調べました。
結果、エキゾチック・アニマル(小動物、小鳥、爬虫類など「犬猫」ではないペット)を専門に診てくれる動物病院は深夜には営業しておらず、移動自体も「アゴちゃん」にとってストレスになるのかもしれない、だから救急病院には連れて行かずひと晩様子を見よう。
(この時点でいちばん疑っていた「卵詰まり」は急激に重篤な症状になることもあるらしく、本当は一刻も早く診察に連れて行きたかったのですが。)
この日はそういうことにして、爬虫類専門で診てくれる動物病院を何か所か調べ、心配な気持ちで眠りにつきました。
ケージからときどきガサゴソと「アゴちゃん」の動き回る音が聞こえ、そのたびに目を覚ましてしまいました。
■2018年9月10日。「通院」。
翌朝。
いつも月曜日の朝というのはなかなか起き上がりたくないのですが、この朝は目が覚めるとすぐに「アゴちゃん」のケージを恐る恐る覗き込みました。
(眠る「アゴちゃん」。これも元気なころの写真です。2018年5月14日。)
上の写真と同じように、「アゴちゃん」は目をつぶってスヤスヤと眠っていました。呼吸のたびに胸がふくらむのが見えます。ひと晩がんばって、生きてくれていたようです。
ぼくは仕事があるので後ろ髪を引かれる思いで出社。前日に調べていた動物病院に妻が電話をかけ、なんとか午前中に診察してくれる病院が見つかりました。
診察結果(妻からの報告です)。
・「アゴちゃん」は雌。(外観からそうだろうなとは思っていたのですが、きちんと調べたことはなかったのです)
・フトアゴとしてはやや大柄?ただし肥満ではない。(この日の測定で体重約620g。もともと、飼育書やインターネットで見るよりやや重めなことは認識していて、肥満ではないかと少し気にしていました)
・レントゲンを撮ったところ、卵は詰まっていない。ただ、卵胞(卵のもと)ができている。
・胃と腸にガスが溜まっている。食欲がないのはおそらくこのせい。
・息は苦しそうだけれど、呼吸器に問題はない。
・血液検査の結果、栄養はきちんと摂れている。カルシウム濃度が高めだけれど、これは体が卵を生む準備をしているためではないか。痛風でもない。
・ただし、炎症を示す数値が異常に高く(指数を振り切るレベル)、体内のどこかで炎症が起こって苦しそうにしているのではないか。
・消化管にガスが溜まっているから、消化器系の炎症?
というような診断で、ひとまず水分補給を兼ねて炎症を抑える薬を点滴してもらっている、ということでした。
レントゲン検査に血液検査、それに点滴。人間が風邪をひいて病院に行くよりずっと手厚い診療を受けたことに、ぼくは正直とても驚きました。これまで魚ばかり飼育していて、動物病院のお世話になったことがなかったので。
その後、「アゴちゃん」の点滴が終わり再び妻からLINEが。
「点滴が終わって、少し落ち着いたみたい。先生とお話しして、入院させることもできるみたいだけど、今日はいったん連れて帰って様子を見ようと思う」
炎症を抑えるという飲み薬と投薬用のシリンジ(針のない注射器)を処方してもらい、この日は「アゴちゃん」は我が家に帰ってきました。
このまま自宅療養で様子を見て、容態が安定するようであれば次の通院は9月14日の金曜日ということになりました(ちょうど連休を挟むので、その間に検査も兼ねて入院させる計画)。
(初めての動物病院から帰ってきた「アゴちゃん」。2018年9月10日、夜19時)
なんとか残業を片付けて仕事を終え、急いで帰宅。帰る途中で「アゴちゃん」の好物のオレンジを買って帰りました。
上の写真のように、「アゴちゃん」は待っていてくれました!
写真だと元気そうに見えるのですが、実際にはまだ呼吸も荒く、ときどき苦しそうな様子も見せました。検査結果の通り、お腹にガスが溜まっていて苦しいのか、ときどき「しゃっくり」か「げっぷ」のような仕草をしていました。
それでも、病院での診察の様子や獣医師さんからの話を妻から説明してもらい、予想以上にきちんとした治療を受けて帰ってきたことで、正直少し安心したような気持になりました。
買ってきたオレンジを見せたのですが、目でチラッと追うだけで食べてくれません。本当は、処方された飲み薬を大好物のオレンジにまぶして投薬するつもりだったのですが。
仕方なくオレンジの汁を搾り、そのジュースで粉薬を溶いて、シリンジで飲ませることにしました。「アゴちゃん」は少し嫌がったけれど、いつも世話をしている妻がシリンジを口に含ませると、安心したのか諦めたのか、2口で薬を全部飲んでくれました。
(結果的に、これが「アゴちゃん」の最後の食事となってしまうのですが。)
薬を飲んでまた少し様子が落ち着いたようだったので、この日はそのまま消灯。「アゴちゃん」も前夜ほど暴れることもなく、静かに眠れたようでした。
(続く)