(前日の日記はこちら)
小笠原・年越し旅行4日目(現地3日目)。前日は山歩き&シーカヤック&シュノーケリングで体力の限界まで遊び尽くし、さらに大晦日の夜はカウントダウン花火を見てから初詣。
さすがに疲れてしまったので、元旦は少しのんびり静かに過ごそうということで、更なる離島を目指すことに。
■いざ、母島!22年ぶりの「ははじま丸」。
ということで、この日は朝から母島に日帰りで遊びに行くことにしました。
母島へは、父島・二見港から南へ約50km、「ははじま丸」に乗り約2時間。
東京からだとおが丸24時間+二見港で1時間待機+ははじま丸2時間、最低でも27時間かかるまさに秘境です。父島以上に固有種の数が多く、父島では絶滅してしまった生物も母島では見ることができたりします。
この日のははじま丸は朝7時半出港とのことで、早起きして荷造りし宿の人が用意してくれたお弁当を持ち、二見港へ。(※母島には商店も飲食店も少ないので、日帰りの場合は朝食+昼食くらい持参したほうがよいです)
あ、早起きしたおかげでホテルの部屋から初日の出を拝むことができました。
ははじま丸乗り場で、乗船券を購入し乗客人名票を記入。この日の乗船者数はざっと見る限り30人くらいだったでしょうか。800人乗せてきた満員の「おがさわら丸」と比べると、本当にローカルな感じです。
乗船前に靴底を洗浄。
これは、外来種の植物や動物、特にカタツムリたちの天敵である肉食プラナリア「ニューギニア・ヤリガタリクウズムシ」の侵略を防ぐため。
父島では固有種のカタツムリに壊滅的な被害を与え絶滅の危機に追い込んでいる「ニューギニア・ヤリガタリクウズムシ」ですが、母島へは今のところ侵入していないそうです(おなじく固有種のカタツムリを捕食する外来種「ヤマヒタチオビ」(肉食カタツムリ)は既に侵入してしまっています)。
船へのタラップ手前にはこのマット。まさに正真正銘の「水際作戦」です。
父島を出港。一隻のウォッチング船が見送ってくれました。
■乗船中は、自主的ホエール・ウオッチング。
この日の天気は晴れ曇り。洋上で、雲の切れ目から差し込む日差しを見ることができました。元旦からなんだか縁起がいいなぁ。
母島周辺ではザトウクジラを多く目撃することができるそうで、ははじま丸(通称:「ホエール・ライナー」)も甲板に双眼鏡を備え付けていたり船首側にも展望通路があったりと、クジラや海鳥の目視にはうってつけの構造になっています。行きは波もそれほど荒くなく、ぼくは左舷側、妻は右舷側に陣取りクジラ探し。
そうこうするうちに、母島が間近に見えてきました。
そして、もうすぐ母島・沖港へ入港というところで、ついにザトウが出ました!
「テール・スラッピング」という、尾びれで水面を叩く仕草を何度も披露。一説によると威嚇のための行動とも言われているそうです。船にびっくりしたのか、あるいは別の個体でも近くにいたのか。
思いがけないザトウクジラとの遭遇に興奮したまま、沖港へ入港です。
人口約500人の母島。沖港の周辺にだけ、こじんまりとした集落があります。
湾内に、きれいなビーチを発見。石次郎海岸というそうで、沖港からも徒歩で行けるのだとか。あとで行ってみよう。
それにしてもいい天気。日差しのせいか、父島より少しだけあったかく感じました。
ははじま丸を下船し、まずはさっき見つけた「石次郎海岸」へ。集落から延びるゆるい坂道を海沿いに歩いていきます。
小笠原ではあちこちで見かけるイソヒヨドリ。警戒心がなくて、近寄ってもなかなか逃げません。かわいい正面顔も披露してくれました。
石次郎海岸へは、ジャングルの中の遊歩道を5分ほど下っていきます。遊歩道へ数歩入ると、そこは小鳥たちの楽園でした!
オガサワラメジロ。小笠原諸島にはスズメがいなくて、街中で見かける小鳥もほとんどが本種です。母島の固有種のハハジマメグロも一緒に茂みの中を飛び回っていたけれど、残念ながらメグロのほうは撮影できず。。
ジャングルの中の遊歩道を海岸へ向けて下っていると、急に視界が開けて海が見えてきました!
この日はシュノーケル・セットを持ってこなかったので、海には入らず砂浜でしばらくのんびり、プライベートビーチ気分を満喫。
帰り道には、オガサワラトカゲも見ることが出来ました。
■「日本一早い海開き」へ!
続いて、集落の北側にある「脇浜なぎさ公園」へ。
元旦のこの日は、小笠原では海開き(一年じゅう泳げますからね)!ここ母島は、有人島としては日本で一番南東に位置していますので「日本一早い初日の出」も売り文句にしています。
ちなみに母島の海開き、メインイベントはほぼ「ギョサン飛ばし大会」です。内地では駅伝やラグビーで熱い戦いが繰り広げられる新春、ここ小笠原・母島でも熱い戦いが!
優勝賞品、なんと1万5千円相当の商品券!「ギョサン飛ばし」というゆるーい企画の割には、絶妙にリアルさのあるガチな商品です。
■ところで「ギョサン」って何??
ところで「ギョサンって何だよ?」と言われそうなので少しだけ説明すると、小笠原の漁協が発祥と言われる通称「漁協サンダル」、略してギョサン。ラバー製のいわゆる「便所サンダル」なんですが、造りがしっかりしているのと漁港の濡れた足元でも滑らないように工夫されていて、現地では圧倒的シェアを誇る履物です。
ビーチサンダルと違って重量感があるので、しっかり飛ばすとけっこうな飛距離が出ます。
「サンダルを飛ばす」というだけの行為に真剣になる人々。
飛んでったギョサンは、測定員がきっちり飛距離を測定。一見ゆるそうな競技なのに審判のジャッジがかなり厳密で、いい飛距離が出たと思ったら足元のラインを少しだけ超えていてファウルだったり、着地点がファウルゾーンだったり。
単純な競技のくせに実はけっこう難しいみたいで、真上にはるか高く飛んでしまったり、爪先に引っかかって後方に飛ばす人もいたりして笑いが起こります。
空飛ぶギョサン。
■そしていよいよ初泳ぎ!
「ギョサン飛ばし大会」が白熱しすぎて、正午予定だった海開きが30分ほど遅れることに。果てしなくゆるいです(笑)。
といっても、亜熱帯の気候に慣れた島民の方々にとって1月の海はやっぱり冷たいらしく、
意外とテンション低めに海に入っていくのが少し面白かったです。「やめろー!」とか言いながら友人に手足をつかまれて海に放り込まれる若者とか(笑)。
せっかくなので、ぼくも少し泳ぎました。これで無事「初泳ぎ証明書」GETです!(この浜にはネムリブカが見られるそうです。今回は見かけませんでしたが)
■魚までも警戒心がない!
海開きイベントの合間に、隣接する防波堤から海を覗いたところ、びっくりする魚影が!
ホウセキキントキあたりのキントキダイの若魚でしょうか。釣り堀かってくらい群れてます。これは正体を突き止めなければ!というわけで、持ってきたコンパクトロッドにワームをつけて投入。
あっけなく釣れました。
やはりホウセキキントキでしょうか(あるいは、ゴマヒレキントキ?)。島民と思われる少年が「あ、アカメだ。」とひとこと。地方名ではそう呼ぶんですね~。
群れにはキントキ以外にもイスズミの子どもやオジサンっぽい魚影が混じっていたのですが、残念ながらそれらは釣れず。
■わずか4時間半の滞在……。名残惜しい!
帰りのははじま丸は14時出港。名残惜しいですが、イベント会場を離れ沖港に戻ります。
帰りの乗船券を購入して、少しだけ時間があったので集落を散策。
22年前、初めて小笠原に来た時には母島に2泊したのですが、そのとき宿泊した「民宿つき」を発見。
14時。定刻通りにははじま丸出港。
こじんまりとしながらも活気とあたたかさの溢れるこの島を離れるのは本当に名残惜しいですが、宿泊場所も確保できていませんし、仕方ありません。(小笠原は、全域でキャンプ・野宿禁止です)
母島を離れ内地に向かう方でもいるのでしょうか。港のコンクリにペットボトルの水で、メッセージとハートマークが書かれました。
さようなら母島。
さようなら石次郎海岸。次はあったかい時期に、シュノーケルセット持ってまた来るからね~~。
■帰りは……揺れる揺れる(酔)
母島・沖港は父島・二見港と違い、港を出るとすぐ外洋です。船が堤防を過ぎるとすぐ、外海の大きなうねりが押し寄せます。
それでも、行きにクジラを見ることができた欲目もあり、帰路もカメラを携え甲板へ。おかげで、写真には撮れなかったもののザトウクジラをまた1頭見ることができました。
その後は、船首で砕けた波しぶきと格闘しながら(カメラの簡易防雨ケースが本当に役立った)、船と並行してついてくるカツオドリを観察。
長い翼をグライダーのように伸ばして、気流に乗って器用に飛び回ります。
どうして船についてくるのかなぁと思いながら見ていたところ、急に水面に急降下して魚を捕まえていました。どうやら、船に驚いてジャンプする魚を狙っているようです。なるほど。
徐々に波は激しくなり、甲板にも霧雨のように(時には土砂降りのように)波のしぶきが飛んできます。さすがに身(とカメラ)の危険を感じ、船室に避難。
船室の椅子に座り、少し波をかぶったレンズを拭いていたら、ガッツリ船酔いに襲われました。船酔いにはまぁまぁ強いほうだと思ってたんだけどなぁ。船に酔うのは久しぶりでした。仕方なく、そのまま目を閉じて父島まで瞑想。必死に瞑想。どうにか耐えました。
(この日も含め、このところずっと北風が吹いていたため、北からのうねりが強い海況で、母島から北上する帰路のほうが大きく揺れたようです)
■海に沈む夕焼けを見に。
船酔いと格闘しつつ(最終的には、眠ってなんとかやり過ごしました)、どうにか父島に到着。波静かな二見湾に入ってしまえばこっちのもんです。
甲板からの夕焼けが綺麗でした。
綺麗な前ボケ!(レンズが波をかぶったら、すぐ拭きましょうね。。。)
下船しても、まだ体が揺れている感覚がします(陸揺れ)。
それでも、これまでのところこの日の夕焼けがいちばん綺麗だったので、まだ船酔い気味の体に無理を言って夕陽スポット「ウェザー・ステーション」まで徒歩で登ってみることにしました。(大村から、徒歩で20~30分くらいかかります。斜度10%以上の急坂が続くので、けっこうハードです)
残念ながら日没には間に合いませんでしたが、美しい朱色に染まる太平洋!
(翌日へ続く)