(前日の日記はこちら)
小笠原・年越し旅行3日目(現地2日目)。7日間の旅程でも、実質的に前後1日半ずつは船での移動日なので、丸1日フルに使えるのは3日間だけ。貴重すぎる1日です。そして実は大晦日、まったく実感ないけど(笑)。
■小笠原の楽しみ方~ガイドツアーのススメ~
今回の旅行を計画するにあたり、3日間の現地滞在日のうちできれば初日は、ガイドツアーを予め申し込んで参加しようと考えていました。
小笠原は、沖縄や海外のリゾート地と比べると滞在する観光客の数も少なく、レジャー施設(リゾート施設やゴルフ場、大型観光施設などなど)も全くといっていいほどありません。(個人的には、その「何もなさ」が小笠原の良さでしょうし、逆にそういったリゾート要素を強く求めたいなら小笠原を選ぶべきではない、とも思います)
一方で、小笠原のレジャーは海や山をフィールドにしたガイドツアーがとても充実しています。海ツアーは主にホエール・ウオッチングやドルフィンスイム、ダイビングなど。船(レジャーボート)に乗って楽しむツアーが多いですね。
山ツアーはトレッキング、星空ウオッチング、戦跡ツアーなどなど。
これらの中から何を選ぶか、これは計画段階で、かなり悩みました。そして時期的にも、年間通して最も来島者数の多い年末年始(みんな、そこしか長期休みが取れないから)。悩んでいる間にも、どんどん満員御礼のツアーが増えていってしまいそうです。
悩んだ末にぼくらが予約したのが、父島・シャンティーボビーズさんの「ハーフ&ハーフツアー」でした。午前中はジャングルトレック、午後はシーカヤックという水陸両用のオトクなツアーです。公式HPの「皆様の体験と思い出が小笠原の自然を保護・育成していく活動へと繋がります。」というひと言も決め手でした。
■海も山も!小笠原の魅力と現実をフルに体感!
小笠原で一番人気(だと思う)の定番ツアーは、レジャーボートに乗ってホエールウォッチング&南島上陸&シュノーケリング、ってやつ。過去の小笠原滞在(主に3月)でも、ぼくは何度かこのタイプのツアーに参加していましたし、とても満足度も高いアクティビティでした。
けれど、今回は1月。気温次第ではシュノーケリングどころではありません。それに、船に不慣れな妻もいます。そのあたりを考慮して「今回は船(レジャーボート)ではなく、シーカヤックにしよう!」ということにしました。
一方で、小笠原の自然を知るうえで、陸上生態系の話は避けて通れません。実は海の中の生物より、陸上生物の中にはるかに多くの固有種が存在するのです。
正直、ぼくはこれまで4回の小笠原行きのほとんどを「海遊び」に費やしてきました。だって魚が好きなんだもん。
しかしながら今回は妻の「わたしは山のツアーにも行ってみたい。」というひと言で、この「ハーフ&ハーフツアー」への参加があっさりと決まりました。
■そして当日!まず午前中は山ツアーへ!
前置きが長くなりましたが、いよいよ当日!ホテルで朝食を済ませ、まずはウエットスーツを借りに街中の「小笠原観光」さんへ。前日にレンタサイクルを借りたのと同じお店です。
山と海、両方に行くツアーなので、必然的に持ち物も増えてしまいます。借りたウエットスーツにシュノーケルセット、水中カメラ、それに山歩き用の運動靴に一眼レフ&望遠レンズ。まるで探検隊のような大荷物が出来上がりました。ちなみに服装も、水着&Tシャツの上に防寒用のライトダウンジャケット、その上に雨合羽という不思議なかっこうに……。
朝9時。まだ小雨のパラつく天気のなか、シャンティーボビーズさんのワゴン車がホテル前までお迎えにやってきます。ホテルのある街中(大村地区)から車で約15分、父島南部の小港地区へ向かいます。
山の中のバンガローで最初にツアーの説明をしていただき、そのまま再び車に乗って父島の山間部へ。まずは最高峰・中央山に登るそうです。
そういえばツアーの説明をしていただいているあいだ、上空を固有種の猛禽類・オガサワラノスリが滑空していきました。外来種を除けば大型の肉食動物のいない小笠原では、生態系の頂点に君臨しているそうです。
まずは登山道の入り口で、小笠原の自然についてレクチャー。「固有種と在来種と外来種」なんていう話をきちんと聞くのって、大事ですよね。特にTV番組なんかで「外来種=悪!」みたいな味付けが最近多いし。
大事なのは「どうして”外来種=悪”なのか?」って背景を、きちんと理解することだと思うんです。
なーんてことを考えていると、あっという間に(10分くらい?)で山頂へ。父島の北側から南側までぐるっと見渡せて、遠くには母島の島影も見ることができました。
山頂は開けていて、ここでおにぎりなんか食べたら美味しそうなんですが、東の方角に雨雲発見ということでさっさと下山することに。
次は同じ尾根沿いにある、初寝浦展望台へ。車でまた10分くらいです。展望台入り口に車を止めてそこから遊歩道へ入ると……ごっつい廃墟が!
父島の山岳部には太平洋戦争時代、旧日本軍の要塞があり、この場所は軍の通信施設だったらしい、とのこと。爆撃にも耐えられる分厚いコンクリート壁は、戦後70年を過ぎた今でもその姿を留めていました。
建物内を、入り口から。崩落の危険もあるので長居は無用。
そこから亜熱帯の森の中を歩き、初寝浦展望台へ。
父島東側の砂浜、初寝浦が遥か眼下に見えます。
島の東海岸は断崖絶壁が続いているのですが、ここだけ例外的に砂浜だそうです。アオウミガメの産卵地にもなっているのだとか。
ところで、なんだか見たことある景色だなぁと現地で密かにデジャヴにとらわれていて、戻ってから調べたら13年前に来てました。当時のほうが天気は良かったみたいだけど、景観は変わっていないなぁ。
おまけ:初寝浦展望台の入り口にある「首無し二宮尊徳」。初めて見るとけっこうビビります。
■「アカガシラカラスバト・サンクチュアリ」、とても面白い!ガイドツアーでよかった!
足慣らしも兼ねて(?)山からの展望を楽しんだ後は、父島の東部に広がる「アカガシラカラスバト・サンクチュアリ」へ。「アカガシラカラスバト」(通称:あかぽっぽ)を中心に固有種のたくさん生息する「乾性低木林」を保全するために設けられた特別保護地区です。
最初に、この特別保護区の意味と外来種の問題について分かりやすくレクチャー。このサンクチュアリは2003年に設定され、保護地区全域(上の写真地図、赤い点線部)をすべてこの網状のフェンスで囲っているそうです。
アカガシラカラスバトにとって一番の脅威であるノネコが侵入できないよう、地面すれすれまで本当に厳重に覆われています。
(ちなみに、昨日の日記でも紹介した通り、小笠原では捕獲したノネコを殺処分せずに本土へ送り、獣医師協力の元で馴化・去勢し里親へ譲渡しています。アカガシラカラスバトの生息数も、2008年:推定40~60頭という水準から、400羽程度にまで回復しているとのこと。)
ガイドさんに続いて、サンクチュアリ内へ。観光客は必ずガイド同行(資格を持ったガイド1名あたり10名まで)、島民の方も事前レクチャーを受けないと入場できないそうです。
入り口すぐに、見慣れない「種子除去装置」なるものが。
サンクチュアリ内に外来種(動物・植物)の侵入を防ぐため、ここで靴底をブラシでこすり、服についている植物の種子や小動物も粘着テープ(コロコロ)で除去。(ぼくがコロコロをかけたら、小さなクモが1匹取れました。なるほど、そういうことか)
さらに、靴底にスプレーを噴射。
このスプレーの中は木酢液(お酢の場合もあり)で、これを噴射することで外来種の肉食プラナリア「ニューギニア・ヤリガタリクウズムシ」を殺すそうです。
(聞き慣れない生き物ですが、小笠原諸島に生息する固有種のカタツムリをものすごい勢いで食べ絶滅に追いやっているのだそうです。小笠原には植物の移送にまぎれて持ち込まれたと言われています。ちなみに海外では同じく外来種のアフリカマイマイ駆除のために人為的に持ち込まれたケースもあるらしく「外来種対策の救世主のはずがより深刻な事態を引き起こす」という厄介な事態になっています)
このプラナリア、父島ではもはや駆除不可能にも近い状況で、唯一出来る対策がこの「新たに持ち込まない」ということ。母島へはまだ侵入が確認されていないそうで、ははじま丸の乗船・下船時に同じく靴底洗浄をするなど、ギリギリの水際作戦が続いています。
※このツアーで教えてもらった小笠原の外来種問題の現状、そしてぼくが感じたことは、長くなってしまいますのでまた別の機会に記したいと思います。
森の中は、写真のような木々(ほぼ在来種)が生い茂っています。真ん中左、特徴的な網目模様の木が「マルハチ」という大型シダの仲間。
森はほぼ一定の高さ(5~8m)を維持し、その森の中がアカガシラカラスバトの住処だそうです(木々より高く飛ぶと天敵のオガサワラノスリに襲われる。一方、地上には永いこと天敵がいなかったため、地上を歩いてエサを食べる習性がある ⇒ ノネコに狙われやすい)。
こちらは遊歩道内の木道。これは歩きやすさ向上のためではなく(歩いてみると分かるけど、むしろ無いほうが歩きやすい)、以下の理由で設置しているそうです。
・人間が歩くことで土が掘り起こされる(⇒赤土が雨で海へ流れ、サンゴを殺す)ことの抑制
・森の中に侵入した外来種の樹木(主にリュウキュウマツ)の伐採材の有効活用
実際にリュウキュウマツを伐採しているところ。丸太の断面を見てもらえば分かる通り、周囲の樹木(在来種)と比べてめちゃくちゃ太いです。そのまま根元から切り倒すと周囲の樹木も巻き込んで倒れてしまうため、伐採する木に登って上のほうから輪切りにして1つ1つ降ろしてくるのだとか。相当な重労働ですし、この丸太を下界まで運ぶのは確かに大変そうです。だから木道に利用しているのですね。
往復30分ほど歩いて、結局アカガシラカラスバトは見られなかったのですが、それでも十分に面白く勉強になる体験でした。(ちょうど繁殖期に入っていて、人が立ち入れるエリアにも制限がありました)
ちなみに1週間ほど前にはけっこう目撃例があったそうで、この日も我々より先行して歩いていたパーティは2羽目撃したとのことでした。見られる見られないは運次第ですが、充実した説明のおかげで、見られなくても満足度は高かったと思います。(植物以外では、オガサワラメジロ、オガサワラノスリ、オガサワラアメンボを見ることができました)
12月24日深夜にはサンタクロースが目撃されているようで……「外来種」という深刻な話題の中でもこういう遊び心、いいなぁと思います。
■昼食後は、シーカヤック体験!
「アカガシラカラスバト・サンクチュアリ」の散策を終えて、ここで一旦、午前の「山ツアー」は終了。車でバンガローに戻り、昼食(各自、お弁当持参)を食べ、海に行く支度を整え、いよいよ午後の部がスタートです。
再び車に乗せてもらい、バンガローから近い小港海岸へ。ここは島内路線バスの終点にもなっていて、訪れる人も比較的少ない静かなビーチです。
こちらが今回使わせてもらうカヤック。FRP製のオープンデッキ・タイプです。
カヤックのスタート地点は、この河川。小港海岸へ注ぎ込む八ツ瀬川です。水中を眺めていると、ボラっぽい魚が泳ぎ去っていきました(正確な種類不明)。
まずは陸上で、カヤックの漕ぎ方をレクチャーしてもらいます。
小さいお子さんも、一生懸命パドリングの練習。
続いてガイドさんの模範演技。波のない河口とはいえ、スイスイと自由自在に動きます。気持ちよさそう!
少し川で練習した後は、カヤックを砂浜へ運び(この作業が地味に辛い。海の上だとスイスイ動くのに。。。)、いよいよ大海原へ!
この日は少し波が高く、あまり遠出はできないとのことで小港海岸からすぐ隣のコペペ海岸を目指すことになりました。
多少波はあるものの、空は徐々に晴れてきました。(※二人艇なので前を漕ぐ妻に漕艇を任せ、こっそりサボって写真撮影に興じるの図)
途中、海の上からもサンゴの色が見える海域があったので、水中カメラ(TG-5)を突っ込んで海中を撮影。すげぇ!サンゴだらけ!ヒレシャコガイの青い外套膜も見えます。
そのまま頑張って漕いで、だいたい30分くらいで隣のコペペ海岸へ。こちらも岸にトイレの完備された、海水浴向けの居心地のいいビーチです。ここでしばらく休憩し、思い思いに過ごすことに。ぼくと妻はさっそく三点セットをつけ、シュノーケリングを楽しみました。)
波打ち際はやや濁り(波の気泡)があるのですが、ほんの15~20mも沖へ出るとご覧の透明度。水深2~3mほどの海中に、シマハギがたくさん泳いでいました。写真には撮れませんでしたが、ほかにもヤマブキベラ、ヒメジの仲間と思われる魚など。
シマハギはなかなか逃げないので、思い切って寄ってみました。やっぱり、小笠原は魚影が濃いなぁ。この日はカヤックメインだったので短時間のシュノーケリングでしたが、滞在中にもう一度くらい、もう少し時間をかけて魚たちを見に行きたいなぁと思います。
小一時間くらいビーチで遊んだ後、少しずつ日も落ち始めたので再びカヤックを漕いで小港海岸へ戻ります。だいぶ晴れてきました!
帰りは、洞窟くぐりにもチャレンジ!けっこうギリギリの幅なんですが、頑張ってカヤックをコントロールしなんとかクリア。
夕陽の中をカヤッキング。水面が綺麗だなぁ。
元きたスタート地点まで戻ってカヤックを片付け、バンガローでシャワーを借りて着替えて、ツアー終了です。バンガローは宿泊施設にもなっているそうで、次は街中じゃなくてこういうところに泊まるのもいいなぁ。
帰り際には「よいお年を!」と言われました。そういえば大晦日だってこと、すっかり忘れていました。やっぱり小笠原は年末年始がいちばん観光客が多いそうで、ツアーガイドの仕事も年末年始がいちばん忙しいそうです。
山も海も楽しませていただいて、ありがとうございました!
※体力めいっぱい遊んで、さすがに疲れて、ホテルについてそのまま年越しギリギリまで爆睡しました。ちゃんとカウントダウンには目を覚まして花火を見ましたよ!
(翌日へ続く)